信長・信玄に並ぶ“もう一人の天下人”朝倉義景の真実とは?
戦国時代と聞くと、多くの人がまず思い浮かべるのは織田信長や武田信玄といった名将たちでしょう。でも実は、彼らと並ぶほどの影響力を持ちながら、歴史の表舞台から姿を消した武将がいました。その名は、朝倉義景。福井の一乗谷を拠点に、文化と経済、そして先進的な都市づくりを進めた男です。この記事では、NHK『歴史探偵』(2025年10月29日放送)で描かれた朝倉義景の知られざる姿を、わかりやすくまとめます。彼の一乗谷はどんな町だったのか、なぜ信長に敗れたのか──あなたもきっと、「もう一つの戦国の都」に驚くはずです。
一乗谷に花開いた“ミラクルシティー”の正体
番組でまず注目されたのが、一乗谷朝倉氏遺跡です。ここは当時、全国屈指の城下町でした。各家に井戸や便所が整い、まるで近代都市のようなインフラが完備されていたのです。さらに、発掘調査で青磁や獅子をかたどった目貫などが多数出土。高度な技術を持つ職人が多く住み、経済力も非常に高かったことが分かっています。
そして、一乗谷の繁栄を支えたのは港の存在でした。北側を流れる足羽川のほとりには港跡があり、中国との貿易で栄えた三国湊とつながっていたことが判明。物資は北の北海道・上ノ国町まで届き、朝倉氏の焼き物が見つかるほど広い経済圏を形成していたのです。北海道の海産物が京都へ向かうルートの途中に、一乗谷があったと考えられています。
人を育て、文化を愛した“戦国の知将”
朝倉義景は単なる武将ではなく、教育と文化を重んじる知将でもありました。彼は有能な人材を外に流出させない法を作りながら、将来有望な者は積極的に留学させるという柔軟な方針をとっていました。さらに、島津義久との書簡のやり取りからは、琉球貿易を構想していた可能性も浮上。視野の広さは、戦国大名の中でも群を抜いていました。
しかし一方で、義景の家は元々“家格”が高くなかったため、都の貴族たちからは軽んじられる面もあったのです。彼はそれを補うため、文化の力で自らの地位を高めようとしました。
華やかな饗宴が示す“文化国家”の夢
一乗谷の遺跡からは、宴会で使われたかわらけが大量に出土しています。これは、一度使ったら捨てる器で、それが多いということは、盛大な宴が頻繁に開かれていた証拠です。諏訪館跡庭園や御殿では、都の貴族や文化人を招き、曲水の宴や犬追物などの行事を開催。まるで“もう一つの京”を目指すように、朝倉義景は一乗谷を文化の都へと育てていきました。
特に印象的なのは、将軍・足利義昭をもてなした宴。義景は17種類もの料理を振る舞い、中庭に設けた舞台では能が披露されました。その名声は高まり、多聞院日記には「天下人に近い」として、織田信長・武田信玄と並んで朝倉義景の名が記されています。
信長に挑んだ“知と技”の戦い
義景は浅井長政・武田信玄と連携し、織田信長に対抗する包囲網を築きます。その中で注目されたのが、滋賀県長浜市にある大嶽城跡。出入り口に複雑な形の土塁を築き、敵の侵入を遅らせる“防御の知恵”が凝縮されていました。
城郭考古学者の千田嘉博氏によれば、「この時期にこれほど見事な枡形を土塁と組み合わせた例は全国でも屈指」とのこと。義景は築城技術にも優れ、近江の武将たちと連携しながら、信長に立ち向かう準備を整えていたのです。
栄華の果てに待っていた悲劇
しかし、運命の歯車は無情に回ります。浅井長政を救うために出兵を決断した義景に対し、家臣たちは「兵が疲弊している」と反対。それでも義景は出陣を強行しますが、結果は敗北。退却を余儀なくされ、重臣たちにも見放されてしまいました。最期、義景は自ら命を絶ち、朝倉氏は滅亡。一乗谷は信長軍によって焼き払われ、栄華の都は跡形もなく消えたのです。
そして現代へ──掘り起こされる“戦国の理想都市”
1970年代に始まった発掘調査で、一乗谷の存在は再び脚光を浴びます。河合敦氏は番組の中で、「朝倉氏の街づくりは日本の中世考古学の原点」と語りました。現在も調査が続く一乗谷朝倉氏遺跡博物館では、出土した品々や模型展示を通して、当時の人々の生活を感じることができます。まさに、現代に蘇った“戦国の奇跡の都”です。
まとめ:もう一つの戦国、もう一人の天下人
この記事のポイントは以下の3つです。
・朝倉義景は文化と経済を融合させた戦国大名だった。
・一乗谷は生活インフラが整った“戦国のミラクルシティー”。
・信長に敗れて滅んだが、その先進性は現代にも通じる。
朝倉義景の物語は、ただの敗者の記録ではありません。彼が築いた一乗谷は、人々の暮らしと文化を何よりも大切にした“もう一つの理想の国”。私たちが今、街づくりや共生を考える上でも、多くのヒントが詰まっています。
今も福井県福井市の一乗谷を訪れれば、かつて天下を夢見た義景の息吹が感じられるはずです。
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