NHK【クローズアップ現代】最低賃金1000円超でも埋まらない地方女性の低賃金の壁とその背景｜2025年9月24日★

最賃1000円超だけど…どうする地方の女性低賃金

2025年、日本の最低賃金は全国平均で時給1121円となり、初めて「時給1000円超え」を果たしました。政府やメディアでは一つの区切りとして注目されましたが、地方の女性たちからは「これで生活が楽になるとは思えない」という声が広がっています。なぜなら、都市部との格差、男女間の賃金差、さらには働き方の制約など、根深い要因が依然として残っているからです。最低賃金が上がったにもかかわらず「もう地方では暮らせない」と訴える現実。番組はその背景に迫ります。

地方経済の構造と賃金水準の壁

大都市圏にはIT、金融、製造の中枢など高付加価値産業が集中し、高収益を背景に賃金を引き上げる余力があります。一方、地方では小売業、飲食、介護、農林水産業といった低収益の産業が雇用の多くを占め、事業所も小規模です。たとえば東京都の最低賃金は全国最高水準ですが、地方では200円以上の開きが残ります。最低賃金が1000円を超えても、それは“下限”の改善にすぎず、地域全体の平均給与や上限給与を引き上げる力は限定的なのです。

非正規雇用に偏る女性の働き方

地方では女性の就労の多くがパートやアルバイトといった非正規雇用に集中しています。非正規は契約期間が短く、昇給や賞与、退職金の対象外になるケースが多いのが現状です。最低賃金の引き上げで時間給が改善しても、キャリア形成や福利厚生の格差が続く限り「低賃金のまま生活は苦しい」という状況は変わりません。さらに地方では正社員の募集が少なく、女性が非正規を選ばざるを得ないという環境的要因も存在します。

性別役割分担とキャリアの断絶

日本全体に共通する課題ですが、とりわけ地方では「女性は家庭を優先」「パートで十分」という価値観が根強く残ります。育児や介護を担う割合が女性に偏っており、フルタイムで働き続けることが難しい現状があります。その結果、20代で一度キャリアを積んでも、出産・子育て期に退職して非正規に戻る「L字カーブ」が賃金格差を固定化します。番組内でも「意見を言うと珍獣扱いされる」と語る声が紹介される予定で、社会全体の意識の遅れも問題を深刻化させています。

教育・スキル格差と都市への人材流出

高収入につながる専門的な職種には、スキルや資格が欠かせません。しかし地方では職業訓練やリカレント教育の機会が限られており、賃金を上げるためのキャリアパスを描きにくいのが現実です。その結果、「スキルを身につけるためには都市へ行くしかない」と考える若い女性が都市部に流出。地方には低賃金の職に就く女性が多く残り、平均賃金がさらに押し下げられるという負の連鎖が生じています。

最低賃金制度の限界

最低賃金は全国一律に「下限」を設定する仕組みであり、地域間・性別間の賃金格差を直接解消する制度ではありません。加えて「同一労働・同一賃金」の原則が十分に徹底されておらず、非正規と正規の間で大きな待遇差が続いています。最低賃金を引き上げても、その土台となる制度や意識が変わらなければ、格差是正は進まないのです。

今後の政策と対応の方向性

この問題を解決するには、最低賃金引き上げと並行して総合的な政策が必要です。考えられる方向性は次の通りです。

• 地域格差の縮小策：地方で賃上げできるよう、助成金・交付金・税制優遇で企業を支援

• 非正規雇用の待遇改善：賞与、有給休暇、社会保険の適用拡大や短時間正社員制度の普及

• 家庭負担の軽減：保育や介護サービスを充実させ、男性の育休取得を促進することで女性の就業継続を後押し

• 教育・スキルアップ機会の拡充：デジタルスキルや専門職研修を地方に広げ、女性が高賃金職に就けるルートを整備

• 賃金制度の透明化：企業に昇給基準や男女別賃金データの公開を義務づけ、不合理な格差を是正

• 地方の暮らしの魅力向上：住宅費や子育て環境を改善し、「都市に出ないと生きづらい」という状況を変える

• 意識改革と教育：ジェンダーバイアスをなくし、女性が意見を言い、キャリアを追求することが当たり前の社会風土をつくる

まとめ

この記事の要点は次の3つです。

1. 地方女性の低賃金は、産業構造・非正規雇用・役割分担・教育格差といった複合要因によって固定化している。

2. 最低賃金引き上げは改善の一歩にすぎず、待遇改善や家庭負担軽減、スキル機会拡充など幅広い施策が不可欠。

3. 賃金だけでなく生活環境や意識改革を含め、地方に女性がとどまり、活躍できる社会をつくることが求められる。

最低賃金1000円時代の幕開けは、格差是正のスタートラインにすぎません。地方の女性たちが「もう地方では暮らせない」と言わなくて済む未来を実現するには、社会全体の構造転換と意識変革が必要です。番組放送後には、各地で進む取り組みや具体的な事例を追記して紹介します。