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NHK【クローズアップ現代】日本の“発酵食品”が世界でブーム その陰で危機が|麹が変えるニューヨーク料理界と地方蔵元の挑戦|2025年10月29日★

クローズアップ現代

世界が注目!“日本の発酵”ブームの今と、その裏にある危機とは

みそ、しょうゆ、納豆――。毎日の食卓に当たり前のように並ぶ日本の発酵食品が、いま世界のトップシェフや健康志向の人々の間でブームになっています。
ニューヨークやロンドンのレストランでは、伝統的な調味料を使った“新和食”のメニューが次々と生まれ、料理雑誌では「麹(こうじ)は発酵界のスター」と特集されるほど。
一方で、日本国内では、これらを支えてきた小さな蔵元や地域の職人たちが高齢化や後継者不足に苦しみ、失われかけた味が数多くあります。
今回のクローズアップ現代「日本の発酵食品が世界でブーム その陰で危機が」(2025年10月29日放送)では、ブームの舞台裏にある“光と影”を追います。この記事では、放送前の段階で見えている流れを整理しつつ、放送後に新情報を追記する形で、発酵文化の未来を考えます。

発酵がもたらす“うま味革命”と健康効果の科学

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世界の食トレンドは、ここ数年で「高タンパク・低脂質・腸内環境を整える食」へと大きくシフトしています。そこで注目を浴びているのが、日本の発酵食品です。
例えば、麹(こうじ)は米や麦に生えるカビ(麹菌)の働きで、デンプンやタンパク質を分解し、甘みとうま味を生み出します。麹菌が作る酵素によって、素材本来の味が最大限に引き出されるため、「塩こうじ」「甘酒」「発酵バター」など新しいレシピが世界各地で誕生しています。
アメリカでは「Koji Fermentation」という言葉が食品トレンドのキーワードに。シェフたちは肉を麹でマリネして柔らかくしたり、野菜を発酵させて自然な甘みを出したりと、創作料理に活用しています。ニューヨークの一流レストランでは、和食だけでなくフレンチのソースやイタリアンのパスタにまで麹を応用する例も出ています。

また、健康面でも“発酵”は注目の的です。
納豆に含まれる『ナットウキナーゼ』は血栓予防に役立つ可能性があり、海外ではサプリメント化されるほどの人気。みそやしょうゆに含まれる乳酸菌やアミノ酸は、腸内環境の改善に貢献するとされ、“美味しく健康になれる”食として受け入れられています。
さらに、発酵は「保存技術」としてもサステナブル。冷蔵設備が不要な発酵技術は、エネルギー消費を抑える手法として、気候変動対策の文脈でも評価されています。

“文化”としての発酵 ユネスコが後押しした和食の魅力

日本の発酵文化が海外から注目される背景には、「食を通じた文化理解」の広がりがあります。
2013年、和食がユネスコ無形文化遺産に登録されたことを機に、世界は「日本の食文化の深さ」に目を向けました。そこには単なる料理の技術ではなく、自然と共生し、菌や微生物と共に生きてきた知恵が息づいています。
たとえば、みそやしょうゆの蔵には、何十年、何百年も生き続ける菌が住みついています。蔵の木桶や壁の微生物が発酵の質を決めるため、同じレシピでも他の場所では再現できません。まさに「その土地にしかない味」なのです。
こうした文化的背景に惹かれた欧米の料理人や研究者たちが、日本各地の発酵蔵を訪れ、“菌と共に生きる文化”を学ぶツアーが増えています。特に若い世代のシェフが「発酵をアートとして表現する」動きも見られ、発酵が“科学・芸術・文化”の融合領域として再評価されつつあります。

それでも危機が迫る 消えゆく地域の味

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世界が絶賛する発酵文化の一方で、日本国内では静かに“発酵の空洞化”が進んでいます。
その最大の原因は、後継者不足と効率化の波
戦後の大量生産時代に、時間と手間のかかる木桶熟成から、短期間で作れるステンレスタンク熟成へと転換が進みました。その結果、木桶を使うしょうゆ蔵は全国でわずか1%以下。桶職人も十数人しか残っていません。
また、発酵食品の命である「原料」も危機にあります。国産大豆や地元小麦の生産が減少し、地域ごとの個性が失われつつあります。例えば、雪国の寒仕込みみそや、九州の甘口しょうゆなど、“気候と土地が育てた味”が消えていく現実があります。
さらに、発酵を担う微生物の多様性の減少も問題です。殺菌・衛生管理の行き過ぎにより、蔵の菌が絶滅するケースもあり、「昔の味が出ない」と蔵元たちは嘆いています。

東京農業大学の内野昌孝教授はこう指摘します。
「日本の発酵文化は、効率化の中で“時間をかける価値”を見失いかけている。けれど発酵は待つこと、育てることにこそ意味があるんです」
発酵は“早くて便利”ではなく、“ゆっくりと豊かに”育つもの。まさに現代社会が失いかけた価値観を教えてくれる存在でもあります。

希望の光 伝統を守るしょうゆ蔵の挑戦

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そんな厳しい中でも、“奇跡の復活”を遂げた蔵があります。
岐阜県の山川醸造(Yamakawa Brewery)は、70年以上前から木桶仕込みの『たまりしょうゆ』を作り続けています。100年以上使い込んだ桶で、2年以上発酵・熟成を行い、深い色ととろみ、濃厚な香りを生み出します。観光客向けに蔵見学や味比べ体験も開催し、若い世代に「発酵の楽しさ」を伝えています。
一方、福岡県のカネヨシ醤油(Kaneyoshi Soy Sauce)は、30年以上途絶えていた木桶製法を2022年に再導入しました。100~150年生の吉野杉を使った木桶を再現し、地域の井戸水と天然菌で醸すしょうゆは、まさに“生きた文化財”。年間わずか1600本という希少な生産量ながら、口コミで全国から注文が殺到しています。
さらに奈良県の丸十醤油(Maruto Shoyu)は、戦後に閉鎖した蔵を18代目が再開。帳簿に残された配合比や発酵温度を復元し、併設のレストランで蔵出ししょうゆを使ったコース料理を提供しています。ここでは「泊まって味わう発酵文化体験」ができ、国内外の観光客が訪れるようになりました。
これらの蔵に共通しているのは、「守るだけでなく進化させる」という姿勢。伝統を“古いもの”ではなく、“未来につながる技術”として再定義している点です。

未来へつなぐ“発酵の知恵”

発酵食品を守るために必要なのは、ただ昔の方法を続けることではありません。
まず、発酵の背景にあるストーリーを伝えること。誰が、どんな土地で、どんな菌と共に作っているのか。その物語がブランドの価値になります。
次に、体験と教育の融合です。蔵見学、発酵ワークショップ、発酵フェスなど、実際に「香り・音・手ざわり」で菌を感じる場が、若い世代の関心を高めています。最近では、小学校で味噌づくりを授業に取り入れる地域もあります。
また、スモールバッチ+高付加価値戦略も有効です。大量生産では出せない“手作りの味”が、海外市場で「希少で贅沢な逸品」として評価されています。少量でも、長く愛されるブランドを作ることが、発酵文化を未来へつなぐ力になるのです。

まとめ:菌が教えてくれる、未来の生き方

この記事のポイントは以下の3つです。
・『麹』『みそ』『しょうゆ』『納豆』など、日本の発酵食品は世界で健康・美食・文化の三方向から注目されている。
・一方で、国内の地域蔵では後継者不足・原料難・木桶製法の衰退などが進み、“味の多様性”が危機に瀕している。
・伝統を守りながら革新する蔵の挑戦が、日本の発酵文化を未来へつなぐ希望となっている。

2025年10月29日放送のクローズアップ現代では、このブームの舞台裏を現場から掘り下げ、専門家の視点で“どう守り、どう進化させるか”を探ります。
放送後には、番組内で紹介された蔵元の名前や具体的な取り組み、ゲストのコメントを追記して、より深く更新します。
“発酵”とは、時間と共に変化し、育ち、命を繋ぐ営み。菌と人との共生が生み出したこの奇跡を、私たちはどう受け継ぐのか――その答えを、番組とともに考えていきましょう。


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