記事内には、広告が含まれています。

NHK【クローズアップ現代】iPS細胞で脊髄損傷・心臓病に挑む!実用化を阻む“コストの壁”とは|2025年9月29日

クローズアップ現代

未来の医療がここまで来た!iPS細胞で広がる希望

「治らない病気はもう治せないの?」そんな不安を抱えていませんか?パーキンソン病や脊髄損傷、失明につながる目の病気…。これまで根本的な治療法がなかった病気に対し、新しい光をもたらしているのがiPS細胞です。
私自身、研究者として日々現場を見ていても「ここまで来たか」と驚くほど臨床の成果が出始めています。この記事を読めば、iPS細胞がどの病気に応用され、今どの段階にあるのかがわかり、未来の医療の姿を一緒に想像できるはずです。

脊髄損傷の患者に訪れた変化

2025年9月29日に放送された『クローズアップ現代』では、転倒事故によって脊髄損傷を負った男性の姿が紹介されました。事故から2年前、医師からは「もう自由に動けることはないだろう」と告げられ、日常生活の大部分を失った彼に残された選択肢は限られていました。そんな中で提示されたのが、iPS細胞を用いた脊髄の再生を目指す臨床研究への参加でした。

移植から時間が経過した現在、彼の体には明らかな変化が現れています。以前はまったく動かすことのできなかった腕や上半身が徐々に動かせるようになり、さらには自分の脚で体を支えることも可能になりました。これは単なる機能の回復ではなく、再び自分の力で生活を取り戻すための大きな一歩であり、歩行を目指したリハビリもすでに始まっています。

この臨床研究には4人の患者が参加しており、そのうち2人に運動機能の大きな改善が確認されたと報告されています。従来、脊髄損傷は根本的な治療法が存在しないとされてきました。長い間「不治」と考えられていたこの分野で、実際に機能回復が見られたことは再生医療の歴史に刻まれる重要な成果といえます。

現在、京都大学iPS細胞研究所を中心に国内外の研究機関で脊髄再生の臨床研究が進められており、iPS細胞の可能性が現実の治療へとつながりつつあります。脊髄損傷に苦しむ多くの人々にとって、この成果は未来への希望を示すものとなっています。

パーキンソン病と心臓病は実用化目前

現在、国内では19の研究開発が進められており、その対象は多岐にわたります。その中でも特に注目されているのが『虚血性心筋症』とパーキンソン病で、すでに臨床試験の段階を終え、国への承認申請へと進もうとしています。これは、患者が数年以内に実際の治療を受けられる可能性が出てきたことを意味し、再生医療が「研究」から「実用」へ移りつつある証拠です。

しかし、ここには依然として大きな課題があります。国は2013年から2023年にかけての10年間で、総額1100億円もの研究費を投じ、iPS細胞を中心とした再生医療を後押ししてきました。それでも現場の研究者たちにとっては十分とはいえません。特に山中伸弥さんは「臨床研究を本格的に進めるには、まだ資金も体制も足りない」と指摘し、さらなる継続的支援の必要性を訴えています。

『虚血性心筋症』は心筋が血流不足で機能を失う病気で、従来は移植や投薬でしか対応できませんでした。またパーキンソン病は、脳の神経細胞が減少することで震えや運動障害を引き起こす難病で、これまで根本的な治療は存在しませんでした。これらの疾患に対し、iPS細胞から作られた心筋や神経細胞を移植することで失われた機能を補う試みが、いよいよ現実の治療として形になろうとしています。

再生医療が「夢」から「医療の選択肢」へと変わるには、研究の継続と社会全体での支援が欠かせません。

アメリカでの治験と国際競争

今年6月、日本の大手製薬会社アメリカに向けてiPS細胞を送付しました。対象となるのはパーキンソン病で、アメリカの患者数はおよそ100万人。これは日本のおよそ3倍にあたり、承認が得られれば極めて大きな医療市場となります。企業にとっては開発コストを上回る収益が見込めるため、研究開発の大きな後押しにもつながります。

ただし、期待の一方で懸念もあります。新しい治療法は高額な医療費になる可能性が高く、アメリカで先に承認されても、日本に導入されるまで時間がかかる恐れがあるのです。結果として、日本の患者が最先端の治療を受けられる時期が遅れかねません。

現在、日本は臨床研究の実施件数で世界2位に位置しています。しかし、急速に研究を拡大している中国がその背後に迫っており、国際競争は一層激しさを増しています。こうした状況を受けて、山中伸弥さんは「日本が海外よりも先に実用化を進めなければ、患者に届くまでにさらに時間がかかってしまう」と強調しました。

医療の未来を握るiPS細胞をめぐる競争は、単なる科学技術の問題ではなく、患者にとっての命の時間をどう守るかという課題でもあります。

視力を取り戻した女性の証言

重い目の病気で視力を失いかけていた女性は、神戸市立神戸アイセンター病院で3年前にiPS細胞を使った移植を受けました。治療を受ける前、彼女の視野は極端に狭まり、日常生活にも大きな支障をきたしていました。歩くときには段差につまずきやすく、本を読むことや料理をすることさえ困難になるほど、視力は失われつつあったのです。

移植後、彼女の状態は安定し、今も視力を保ち続けています。完全に元のように戻ったわけではありませんが、見える範囲が広がり、以前よりも安全に生活できるようになりました。彼女は「自分の経験が未来の患者の希望につながれば」と語り、その思いは単なる個人的な体験を超えて、多くの人に勇気を与えています。

神戸市立神戸アイセンター病院は、世界でも先駆的に網膜疾患の治療にiPS細胞を取り入れてきた拠点の一つです。特に加齢黄斑変性などの失明につながる病気に対し、iPS細胞を使って網膜の細胞を再生させる研究を続けています。彼女の症例は、その臨床研究の中で得られた貴重な成果の一例です。

この女性の回復は、研究者にとって「実際に患者の生活を変える力がある」と確信を深める証拠となり、同時に患者自身が再生医療を未来につなぐ存在であることを示しています。彼女の声は、今後同じ病気に苦しむ多くの人にとって大きな支えとなっています。

まとめ

この記事のポイントは以下の3つです。

  1. 脊髄損傷の患者で実際に回復例が確認された

  2. 虚血性心筋症とパーキンソン病は実用化目前

  3. 国際競争が激化する中、日本が先行するには資金とスピードが不可欠

iPS細胞はまだ「夢の技術」ではありません。すでに臨床で成果を出し、承認申請の段階に入っている治療もあります。研究と患者の挑戦が結びつくことで、「治らない病気」が「治せる病気」に変わる日は確実に近づいています。


気になるNHKをもっと見る

購読すると最新の投稿がメールで送信されます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました