アマゾンの森が消えたら日本の暮らしも変わる理由
2025年11月17日放送のクローズアップ現代では、南米アマゾンで今まさに進んでいる森林消失の実態が紹介されました。取材班はブラジル政府機関の森林破壊調査に同行し、日本のJICAや宇宙航空研究開発機構(JAXA)の協力によるレーダー衛星の観測結果をもとに現地へ向かいました。市街地から200kmほど離れた原生林で異常が見つかり、ドローンで確認すると約400ヘクタールが違法に伐採されていました。
ブラジル政府は取り締まりを強化していますが、経済問題や世界的な大豆需要の高まりが背景にあるため、根絶には至っていない現状が明らかになりました。地元の農家組合は「世界の需要の代償としてアマゾンの森が失われている」と話し、問題の根深さを示していました。
【NHKスペシャル】イゾラド アマゾン最深部で“未知の人々”が再び!最新映像|未接触部族と金採掘汚染が示す「文明の限界」|2025年11月16日
大豆需要がアマゾンを追い詰める現実
アマゾンの森が伐採される大きな理由の一つが、世界的な大豆需要の高まりです。中国・欧州・日本を含む世界中が大豆を求めており、その需要に応えるべく農地開発が広がっています。
地元の農家組合の関係者は「世界の需要を満たす陰で、アマゾンの森が切り倒され続けている」と取材班に語りました。農家にとっては生活のために必要な行為であり、それが彼らの悩みでもあります。
さらに、伐採された土地では牧畜が行われるケースも多く、森林破壊→牧場化→農地化という流れが加速し続けています。環境問題と経済問題が複雑に絡み合い、単純な構図ではとらえきれない深刻さがありました。
アマゾン北部でも始まった“新たな消失”
これまで特にアマゾン東部〜南部で進んでいた森林消失。しかし番組では、近年はアマゾン北部でも被害が広がっていることが明らかになりました。
番組が注目したのはジャウー国立公園。世界最大級の規模を誇る国立公園で、かつては濃い緑が一面に広がる地域でした。ところが2年前、突然の大規模な森林火災が発生。火災後、植物の種子を運ぶ動物たちは姿を消し、自然に任せた再生は非常に難しい状態になっています。
アマゾン研究の第一人者であるカルロス・ノブレ氏は、火災による喪失は単なる減少ではなく「森が元に戻れなくなる臨界点へ近づく危険な兆候」だと警鐘を鳴らしていました。
スタジオ解説:アマゾンの“本当の役割”
スタジオには、森林研究の専門家である伊藤昭彦さんが出演。アマゾンの原生林の重要性を次のように説明しました。
・アマゾンは、人の手を入れずとも高い生物多様性を維持できる
・植林された森とは異なり、二酸化炭素の吸収・調整能力が極めて高い
・雨を作り出す力があり、南米〜世界の気象システムに強く関わっている
つまりアマゾンは“自然の巨大な空調機”として機能しており、これが失われれば世界中で気象の乱れが起こり、日本の気候や農業にも影響が及びます。
大豆モラトリアム撤廃問題が揺らす国際市場
環境対策として始まった自主規制『大豆モラトリアム』。主要商社が「2008年以降の森林破壊を行った農地で作られた大豆は買わない」と決めた取り組みです。
ところが2025年4月、ブラジル連邦議会で大豆生産者団体がこの規制の撤廃を求め、議論を巻き起こしました。大豆生産者側は「規制が厳しすぎて生産が追いつかない」と主張しています。
しかし先週開幕した第30回気候変動枠組条約締約国会議(COP30)では、森林破壊がアマゾン地域にもたらす損失が10億ドル以上という新たな研究結果が出され、世界は「開発の加速」に警鐘を鳴らしました。
違法伐採の大豆が“日本の食卓”にまざっている可能性
番組では、農業と環境問題に詳しい夫馬賢治さんが、大豆の流通の複雑さを指摘しました。
・合法と違法の大豆が途中で混ざり区別が難しい
・そのため違法伐採由来の大豆が日本にも届きうる
・消費者が知らないまま関わってしまう構造がある
これは私たちが普段使う“しょうゆ”“味噌”“豆腐”の原料にもつながる問題で、自国の食文化の裏側にもアマゾンが関係していることを示す内容でした。
日本企業が取り組む“森を守るチョコレート作り”
番組では9月、日本の大手食品メーカーがアマゾン東部のカカオ農家を訪れた様子も紹介されました。
カカオ農園の拡大も森林破壊の一因とされていますが、企業は生産者の収益性を高めるために“カカオの殻の再利用技術”を提供。廃棄されがちな殻を活用することで、生産量を増やさずに利益を確保し、森を守りながら暮らせる環境を作ろうとしています。
これは企業のサステナブル戦略として注目される動きで、日本企業の国際的な貢献姿勢が見える事例でした。
エンディング:アマゾン問題は“自分の生活の問題”でもある
番組の最後には、アマゾンの森が消失し続けると、以下のような影響が日本にも返ってくるとまとめられていました。
・異常気象の増加
・食料価格の不安定化
・生態系の乱れによる連鎖的影響
・国際紛争や経済ショックの可能性
つまり「地球の裏側の話」ではなく、“私たちの明日の暮らし”につながる問題だということです。森の消失が進行するスピードは想像以上に早く、対策も待ったなしの段階に入りつつあります。
まとめ
・日本の衛星が捉えた400ヘクタールの違法伐採
・大豆需要がアマゾン破壊を加速させる現実
・北部エリアでも深刻化している森林火災と生態系の崩壊
・スタジオで語られたアマゾンの“地球規模の役割”
・大豆モラトリアム撤廃議論が国際市場にも影響
・違法伐採由来の大豆が日本へ流通する可能性
・日本企業が現地のカカオ農家を支援する新しい取り組み
アマゾンの問題は、未来の日本の気候・食・経済にも深くつながっています。番組はその“見えないつながり”を丁寧に示し、今何が起きているのかを知ることの大切さを強く伝えていました。
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