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Eテレ【ザ・バックヤード】福島が挑む“レイン・エロージョン”の壁!水素社会とCO₂フリー燃料で未来を変える|2025年11月12日

ザ・バックヤード 知の迷宮の裏側探訪

未来を動かす福島の挑戦!“エネルギーの裏側”を探る旅

「電気って、スイッチを押せば当たり前に流れてくるもの」と思っていませんか?
でも実は、その電気をどう作り、どう貯め、どう未来につなぐか——その裏では、日本の研究者たちが日々知恵を絞っています。今回の『ザ・バックヤード 知の迷宮の裏側探訪』は、福島再生可能エネルギー研究所(FREA)を舞台に、日本のエネルギー自給率を上げるための最前線に迫りました。
この記事では、番組で紹介された三つの研究テーマ「風力ブレードの雨粒劣化対策」「余剰電力の水素蓄電」「CO₂を出さない新素材」を紹介します。

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雨の一滴が風車を壊す?日本の気候に挑む“風力ブレード”研究

福島県郡山市の丘陵地帯に立つ巨大な風車。そのブレード(羽根)は1本が数十メートルにもなり、まるで飛行機の翼のような存在です。
しかし、そのブレードを悩ませているのが「日本の雨」。
実は日本の雨粒は、海外の乾いた気候の国よりも大きく重い。風力発電は雨の中でも動き続けるため、長時間にわたって雨粒が高速で衝突し、ブレードの表面を削り取ってしまうのです。これが“レイン・エロージョン(雨滴衝突劣化)”と呼ばれる現象です。

福島再生可能エネルギー研究所(FREA)は、この課題を世界でも先進的な形で解析しています。
研究所には日本初の「回転式レイン・エロージョン試験装置」が導入され、人工的に“日本の雨”を再現。
多数のノズルから噴射される水滴をブレード素材に当て、秒速100メートルを超える衝撃で劣化の度合いを測定します。

研究員たちは、アルミ合金やFRP(繊維強化プラスチック)など複数の素材を比較し、塗装の種類や厚み、保護シートの効果まで細かく検証しています。さらに、CAE(数値解析)を活用して、雨粒の角度・速度・大きさが素材に与えるストレスを可視化。これにより、どの部分がどんな条件で弱くなるのかが数値で示せるようになりました。

目的は、ただ壊れにくい素材を作ることではありません。
「いつ」「どのように」劣化が始まり、「どの段階で修理が必要か」を事前に予測できる予知保全技術の確立も進めています。
この研究が進めば、風力発電のメンテナンスコストを大幅に下げ、日本の気候に合った耐久性の高い風車を国内で製造できるようになります。

地味に見える“雨粒との闘い”こそ、風力発電の安定稼働を左右するカギなのです。

電気を“水素”に変えて貯める!福島発の未来型蓄電システム

次に紹介されたのが、「余った電気をどう貯めるか」という課題です。
太陽光や風力は、天気や風の強さで発電量が大きく変動します。電気はそのままでは貯めにくく、使わない分は無駄になってしまうこともあります。
この問題を解決するために、FREAが注目したのが「水素エネルギー」です。

電気を使って水を分解し、水素を生成。
その水素を貯蔵し、必要な時に燃料電池で再び電気に変える——。
つまり、電気を“形を変えて貯める”仕組みなのです。

FREAでは「水素吸蔵合金」という素材を利用して、水素を安全かつ高密度に保存する研究を進めています。
実際の実験設備では、太陽光発電(8kW)+電気分解装置(0.6Nm³/h)+燃料電池(5kW)+リチウムイオン電池(10kWh)を組み合わせた小規模システムが稼働中です。
これにより、日中に発電して余った電力を夜間に再利用できるようになり、都市部でも災害時の非常電源として活躍が期待されています。

都内のオフィスビルの一部では、実際にこの技術を応用したシステムが導入され、太陽光発電と水素を組み合わせた「自立型電源ビル」として運用されています。
電気を電気のまま貯めるのではなく、「水素」という別の形に変えて再利用する——この考え方は、次世代のエネルギーマネジメントの基本になりつつあります。

さらに、福島県では「地産地消型水素社会」を掲げ、再エネでつくった水素を地域の交通・工場・家庭で活用する取り組みも進行中です。
この流れは、CO₂を出さない地域エネルギー循環の実現に向けた大きな一歩となっています。

石炭にさよなら?CO₂を出さない“夢の燃料”の研究

そして、番組後半で登場したのが「CO₂を出さない燃料」。
化石燃料の代わりに地球に優しいエネルギーを使うことは、今や世界共通の目標です。
FREAでは、この分野でも重要な役割を担っています。

研究のキーワードは「水素キャリア」。
水素は理想的なクリーンエネルギーですが、常温・常圧では体積が大きく、扱いが難しいという欠点があります。
そこでFREAは、有機ハイドライドや水素吸蔵合金といった「水素を“運べる形”にする技術」に取り組んでいます。
こうした素材を使えば、水素を液体のように扱え、長距離輸送や貯蔵が容易になります。

また、近年注目されているアンモニア燃焼技術にも光が当てられました。
アンモニアは燃焼してもCO₂を排出せず、すでに国内の火力発電所で混焼実験が始まっています。
この技術が実用化すれば、石炭やLNG(液化天然ガス)を燃やさなくても発電が可能になり、電力産業全体の構造を変える可能性を秘めています。

福島の研究者たちは、これらの技術を単独ではなく、「風力・太陽光で発電 → 水素やアンモニアで貯蔵 → 必要な時に発電」といった循環型のシステムとして構築しようとしています。
この仕組みが確立すれば、日本のエネルギー自給率は大きく向上し、災害時にも強い“分散型エネルギー社会”の実現に近づくでしょう。

まとめ:未来のエネルギーは“地道な研究”から生まれる

今回の『ザ・バックヤード 知の迷宮の裏側探訪』で描かれたのは、目立たないけれど日本の未来を支える人々の努力でした。

この記事のポイントを整理します。

・日本の雨に負けないブレードを生む「レイン・エロージョン試験」
・余剰電力を水素として貯蔵・再利用する「水素蓄電技術」
・CO₂を出さない新素材(アンモニア・水素キャリア)の開発

これらの研究は、地球温暖化やエネルギー危機に直面する私たちにとって、希望の光でもあります。
福島再生可能エネルギー研究所の挑戦は、震災復興から生まれた“知の再生”であり、未来の日本が自らエネルギーを生み出すための大きな一歩なのです。

番組の内容と異なる場合があります。

参考・出典リンク

福島県公式ウェブサイト|福島再生可能エネルギー研究所(FREA)レイン・エロージョン試験関連資料
https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/696785.pdf

東北エネルギー懇談会|FREA 風力ブレード耐久試験の取材レポート
https://www.t-enecon.com/2025/03/post-4392/

産業技術総合研究所(AIST)|福島再生可能エネルギー研究所 テキストブック2025
https://unit.aist.go.jp/frea/pdf/aist_frea_textbook_202505.pdf

東京都環境公社|水素エネルギーを利用したエネルギーマネジメント実証報告書
https://www.tokyokankyo.jp/kankyoken/wp-content/uploads/sites/3/2020/01/f4c609f44edff56801d1af817a7e7934.pdf

福島県公式ウェブサイト|水電解評価技術の標準化に向けた研究報告
https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/656411.pdf

経済産業省|水素・アンモニア燃焼技術に関する小委員会資料
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shoene_shinene/suiso_seisaku/pdf/20230104_1.pdf

経済産業省|グリーンイノベーション戦略会議 資料:CO₂フリー燃料技術の方向性
https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/green_innovation/pdf/004_01_s04.pdf


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