発達障害「急に声を出す・動作を繰り返す トゥレット症」|2025年3月26日放送まとめ
2025年3月26日(水)放送のNHK「きょうの健康」では、発達障害のひとつである「トゥレット症」について特集されました。番組では、チックと呼ばれる動きや声が自分の意志と関係なく繰り返されるこの症状について、詳しい説明や、実際に行っている工夫、周囲の理解を得るためのポイントなどが紹介されました。子どもから大人まで幅広い世代が関係するトゥレット症について、正しい知識と向き合い方を学ぶ機会になりました。
トゥレット症とは何か?
トゥレット症(またはトゥレット症候群)は、運動チックと音声チックが両方1年以上続く神経系の病気です。チックとは、自分の意思とは関係なく、ある動きや声を何度もくり返してしまう症状のことです。症状は突然始まり、多くの場合、7歳前後の子どもに現れることが多いとされています。
以下のような特徴があります。
-
運動チック:まばたき、首を振る、肩をすくめる、跳びはねる、顔をしかめるなど
-
音声チック:咳払い、鼻をすする、「うっ」などの声、不適切な言葉を発する(汚言症)など
チックは一時的に止めることができる場合もありますが、我慢すると強い不快感や疲れを感じることもあります。そのため、無理に止めようとせず、適切な対処を学ぶことが大切です。
原因は脳の中の神経伝達物質
トゥレット症の原因は完全にはわかっていませんが、脳の神経伝達物質(特にドーパミン)のバランスの乱れが関係していると考えられています。ドーパミンは体の動きを調整する働きをもっており、これがうまく調整されないと、体が勝手に動いたり声が出たりするのです。
また、遺伝的な要素も関係しているとされ、家族に同じような症状がある人がいるケースもあります。ストレスや緊張、不安、疲れなどがきっかけでチックが悪化することもあります。
行動療法による改善の工夫
番組で紹介されたのは、「行動療法(ハビット・リバーサル)」と呼ばれる治療法です。この方法では、チックが出そうな前ぶれ(前駆感)に気づき、チックと逆の動きをする習慣を身につけていくことで、症状のコントロールを目指します。
行動療法は以下の3つのステップで行われます。
-
アウェアネストレーニング:チックが出る直前の体の感覚に気づけるようにする練習です。たとえば、「手がむずむずする」「のどがイガイガする」など、自分なりのサインに注意します。
-
拮抗反応トレーニング:チックの代わりにする動作を覚えて実践します。たとえば、手をバタバタさせるチックが出そうなときに、手を組んで深呼吸をするなど、チックと両立できない動きをすることで、自然とチックが出にくくなっていきます。
-
ソーシャルサポート:家族や学校の先生など、周囲の人がその練習や努力を見守り、励ましながら続けられるよう支えることも大事です。
このような訓練を毎日少しずつ積み重ねることで、チックの回数や強さを少しずつ減らしていくことができます。
薬を使う場合もある
行動療法で十分に改善しない場合や、日常生活に大きな影響がある場合は、薬による治療が検討されることもあります。よく使われるのは、ドーパミンの働きを調整する薬や、気持ちを落ち着ける薬です。
ただし薬には副作用もあるため、医師とよく相談して使うかどうかを決めることが大切です。薬だけに頼るのではなく、行動療法や周囲のサポートとあわせて使うことが基本です。
周囲の理解が支えになる
トゥレット症のある人にとって、家族や学校、職場など周囲の人の理解や配慮がとても大切です。症状は本人の努力では完全に止められるものではなく、「わざとやっている」「注意すれば止まる」という誤解をされると、本人はとてもつらく感じます。
理解を深めるためには、以下のような配慮が役立ちます。
-
チックが出ても無理に止めさせたり叱ったりしない
-
本人が安心して過ごせるよう、静かに過ごせる場所や時間をつくる
-
学校のテストや発表などで緊張する場面では、別室で対応するなどの工夫をする
こうした工夫によって、本人が自分らしく生活できるようになります。一番の支えは、「そのままでも大丈夫」と思える安心感です。
トゥレット症とともに生きる
トゥレット症は一生続くとは限りません。思春期を過ぎて症状が軽くなる人も多く、うまく付き合っていくことで日常生活に支障がなくなることもあります。
大切なのは、症状を否定せず、できることを少しずつ積み重ねていくことです。行動療法や環境の工夫、薬、そして周囲のサポート。それぞれが合わさって、本人の生活をよりよくしていく力になります。
「きょうの健康」では、実際に取り組んでいる人の工夫が紹介されており、正しい理解と優しさがあれば、どんな困難も乗り越えられるというメッセージが伝わってきました。
放送の内容と異なる場合があります。
コメント