おおらか金継ぎ 器と人生を繕う
割れたり欠けたりした大切な器を、自らの手で繕い、美しくよみがえらせる「金継ぎ」。2025年5月2日放送の『おとな時間研究所』では、そんな心と器を癒す“おおらか金継ぎ”の世界が紹介されました。金継ぎに魅せられた人々の想いとともに、教室の様子や講師の人生にも焦点を当てながら、丁寧にその魅力を探っていきます。
都内で開かれる“おおらか金継ぎ”教室の様子
番組で紹介されたのは、都内各地で開かれている金継ぎ教室。講師は漆職人であり漫画家でもある堀道広さん。生徒の多くは女性で、それぞれが思い入れのある器を手に教室へと集まってきます。
割れてしまった湯のみ、欠けたお皿…手にする器にはどれも思い出が詰まっています。その器を丁寧に繕っていく工程には、焦らず、完璧を求めず、おおらかに向き合う時間があります。
堀さんは、漆を使って割れた部分をつなぎ、仕上げに金粉を施すという日本の伝統的な技法を、初心者でも取り組めるようにわかりやすく教えてくれます。生徒たちは「失敗してもいい」「きれいに直らなくても愛おしい」という堀さんの言葉に励まされながら、思い出の器をよみがえらせていました。
堀道広さんの“繕いの人生”と金継ぎとの出会い
番組では、講師である堀さん自身の人生にも迫りました。堀さんは元々、漫画家として活動していた人物。30代後半、生活の変化や将来への不安から、何か自分にできる新しい道を探し始めます。そこで出会ったのが“漆”の世界でした。
最初は金継ぎも独学で始めたという堀さん。失敗と試行錯誤を繰り返す中で、「この修復の作業は、自分自身の人生そのものだ」と感じるようになったそうです。
「自分の人生も、繕いながらやってきた」と語る堀さんの姿は、完璧でなくていい、むしろ不完全な部分があるからこそ愛せるという金継ぎの美学を体現しているように映りました。
また、堀さんは今でも漫画家としても活動中。教室での指導のかたわら、作品制作も続けているという“二刀流”の人生が紹介され、そのバランスをどう保っているのかも語られました。
金継ぎを通して変わる心のあり方
生徒たちは「器を直すつもりが、心が癒されていく時間になった」と語ります。壊れてしまった器を直すという行為は、目に見える修復でありながら、心の中の傷や忘れかけていた思い出をすくい上げるような時間にもなっています。
金継ぎには「不完全なままで良い」という哲学が込められており、その考え方に共感する人が増えている背景も紹介されました。完璧を求められる社会の中で、「壊れたからこそ、美しい」という価値観に触れることが、日々の暮らしや考え方にやさしい変化をもたらしているようです。
今、金継ぎが注目される理由
番組後半では、近年の金継ぎブームについても言及されました。金継ぎ教室やワークショップは全国的に増えており、本や動画でも学べる環境が整いつつあります。
その背景には、「エコ」「サステナブル」といった意識の高まりや、コロナ禍以降の“おうち時間の充実”へのニーズもあるといいます。
また、「壊れたら捨てる」ではなく、「壊れてもなお使い続ける」という金継ぎの思想が、物を大切にする暮らし方の再発見につながっているとも紹介されました。
まとめ:金継ぎは、器とともに“自分自身”を大切にする時間
今回の『おとな時間研究所』では、単なる修復技術としての金継ぎではなく、“自分の人生を見つめ直す心の作業”としての金継ぎが丁寧に描かれていました。
堀道広さんの生き方、生徒たちの想い、そして器に宿る物語が静かに交錯する教室の風景は、視聴者にやさしい感動を届けてくれました。
これから何かを始めたいと考えている方にとっても、「まずは割れた器ひとつから、自分だけの金継ぎ時間を始めてみませんか?」という問いかけが、そっと背中を押してくれる番組でした。
放送を見逃した方も、再放送や配信があればぜひチェックしてみてください。きっとあなたの心にも、おだやかな風が吹き込むはずです。
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