あなたの口座が乗っ取られる!?パスワード流出の実態
2025年1月以降、日本国内の証券口座が乗っ取られる被害が急増しています。NHKの『クローズアップ現代』では、5月20日(火)に放送予定の回で、この深刻な問題を特集します。短時間の放送ながら、3000億円を超える不正取引の背景や、世界から日本が狙われている現状、そしてAIの悪用が関与している可能性まで、徹底的に掘り下げて伝える内容が期待されています。
放送後、詳しい内容が分かり次第、最新の情報を更新します。
被害はなぜ起きたのか?
今回の被害は、証券口座が悪意のある第三者によって乗っ取られ、資産が操作されたという非常に深刻な事案です。多くの利用者が気づかないうちに、証券口座にアクセスされ、自分の持ち株が勝手に売られてしまうというケースが相次いで報告されています。
たとえば、
・持っていた国内株式が知らない間にすべて売却されていた
・代わりに、聞いたこともない外国企業の株が大量に購入されていた
といった異常な動きが確認されました。
こうした取引がなぜ行われたのかを調べると、犯人側が価格の操作を目的として取引を仕掛けていた可能性が浮かび上がってきます。自分たちで株を大量に買い付け、株価を一気に吊り上げることで、その差益を得ようとする狙いがあるとみられています。
このような犯行は、一人や一組織だけで行われているわけではありません。報道などによると、複数の役割を分担した犯罪グループが組織的に動いているとされています。具体的には以下のような分業体制が確認されています。
・情報を盗み出す担当(フィッシングやマルウェアの送信)
・偽造の本人確認書類を使って証券口座を新規開設する担当
・不正に入手した情報でログインし、実際に取引を行う担当
これらのグループは、互いに役割を分けながら高度に連携して動いていると考えられており、非常に計画的かつ効率的に被害を広げているのが特徴です。
さらに問題を複雑にしているのが、犯行の拠点が海外にある可能性が高いという点です。日本国内の法律や捜査体制だけでは対応が難しく、国際的な捜査協力や情報連携が不可欠な状況にあります。
今回の事件を通してわかったのは、パスワード一つが突破口となり、資産全体が危険にさらされる現実です。利用者一人ひとりが意識を高めるとともに、金融機関や政府も抜本的な対応を進める必要があります。
世界から日本が狙われている
この問題は日本だけに限ったものではなく、世界各国でサイバー攻撃の被害が広がっているのが現状です。しかし、その中でも日本は特に狙われやすい国のひとつとされており、その背景にはいくつかの理由があります。
まず、日本国内ではパスワードの管理意識が比較的低く、同じパスワードを複数のサービスで使い回している人が多いという現実があります。たとえば、ネットショッピングやSNS、メール、証券口座などに同じIDとパスワードを使っていると、どこか一つが漏れただけで芋づる式に他のサービスまで不正アクセスされてしまう危険があります。
さらに、多要素認証(2段階認証)を導入していない利用者が非常に多いというのも問題です。ワンタイムパスワードやSMS認証などの追加認証がない状態では、パスワードさえわかれば誰でもログインできてしまうため、攻撃者にとっては非常に好都合です。
こうしたセキュリティの甘さを狙って、「リスト型攻撃」という手法が使われています。これは、過去に別のサービスから流出したIDやパスワードのリストを使い、他のサイトでログインを試みる攻撃です。たとえば、5年前に流出したネット通販の情報を使って、現在使っている証券口座にログインされてしまうケースなどが実際に発生しています。
・同じパスワードを使い回している
・2段階認証を設定していない
・パスワード変更を長期間していない
・ログイン履歴を確認していない
こうした状況が重なっていると、サイバー攻撃者にとっては「入りやすい」ターゲットになってしまいます。特に今回のような金融関連の被害では、一度の侵入で多額の資産が動かされてしまう恐れがあり、攻撃者にとっても高いリターンを見込めるため、狙われやすいのです。
今後は、日本全体としてのセキュリティ意識の底上げと、制度・システム面での強化が急務となります。個人レベルでも、複雑なパスワードの使用や定期的な変更、2段階認証の導入など、小さな対策を積み重ねることが、被害を防ぐ第一歩になります。
AIが生む新たな脅威
今回の番組では、生成AIの悪用によって広がる新たなサイバー犯罪の危険性にも焦点が当てられる予定です。近年のAI技術の進歩は目覚ましく、日常生活やビジネスのさまざまな場面で活用が進んでいますが、それと同時に、犯罪への悪用例も急速に増加しています。
中でも特に問題視されているのが、ディープフェイク技術を使った詐欺です。これは、AIが生成した精巧な音声や映像を用いて、企業の担当者や幹部になりすまし、取引や送金を指示するといった手口です。外見も声も本人そっくりに再現されるため、疑う余地がなく、騙されてしまうケースも多発しています。
また、自然な文章を生成できるAIが、詐欺メールの質を格段に高めていることも問題です。これまでは「いかにも怪しい」文面で見抜けたフィッシングメールも、最近では読みやすく丁寧で、文法的にも自然な内容が増えています。その結果、リンクを開いてしまう人が増え、被害も広がっているのです。
さらに、マルウェア(不正プログラム)やウイルスも、AIの力で誰でも作れてしまう時代になっています。専門的な知識や技術がなくても、AIに命令すればコードを自動で生成してくれるため、これまで攻撃に加わることが難しかった層にも、“犯罪の手段”が広がっているというのが現実です。
たとえば、
・取引先を装った本物そっくりの声で「請求書を確認してください」と指示してくる電話
・丁寧な日本語で書かれた、宅配業者や銀行を装うフィッシングメール
・SNS経由で届く不自然さのないメッセージの中に埋め込まれたウイルスリンク
このように、AIによって詐欺や攻撃の「質」が上がっていることが、被害の拡大につながっています。
AIの進化は社会に多くの恩恵をもたらしますが、その一方で、誰もが悪用できる「危険なツール」になり得るという認識を持つことが重要です。セキュリティ対策はもちろん、AIリテラシーそのものを高めていくことも、これからの時代に必要な自己防衛の力となります。
今すぐできるセキュリティ対策
こうした深刻な被害を未然に防ぐためには、個人の意識と日常的な対策がとても重要です。難しいことをしなくても、今日から実践できるセキュリティ対策がいくつかあります。
まず、最も基本かつ効果的なのが「多要素認証(2段階認証)」の設定です。ワンタイムパスワードやSMSによる確認コードを使えば、たとえパスワードが漏れても不正ログインを防げる可能性が高まります。これを設定していないと、パスワードがバレた瞬間に口座が危険にさらされることになります。
また、パスワードは「複雑に・長く・使い回さない」ことが基本です。英数字を組み合わせ、可能であれば記号も含めて設定するようにしましょう。同じパスワードを他のサービスで使っていると、一箇所の情報漏洩がすべてに波及してしまいます。
次に重要なのが、怪しいメールやSMSに注意することです。特に「アカウントの確認が必要です」「ログインエラーが発生しました」などと不安を煽るメッセージには要注意です。リンクをむやみにクリックせず、公式アプリやブックマークした正規のページからアクセスするようにしましょう。
さらに、口座の取引履歴を定期的にチェックする習慣も大切です。自分の資産が意図しない形で動いていないか、見覚えのない取引がないかを定期的に確認すれば、異変にすぐ気づくことができます。
・2段階認証を設定する
・複雑で使い回さないパスワードを作る
・怪しいリンクは絶対に開かない
・公式サイトはブックマークからアクセスする
・月1回は取引履歴を確認する
・不審な通知があれば即連絡する
また、日本証券業協会と主要証券会社10社は、被害を受けた顧客に対する補償方針を示しています。ただし補償の内容や条件は証券会社によって異なるため、自分の口座を持っている会社の対応をあらかじめ確認しておくことも重要です。
セキュリティ対策は“やっておいてよかった”ものです。資産を守るために、まずは一歩ずつ、今日から始められることから実践していきましょう。
放送に期待される内容
今回の『クローズアップ現代』では、明治大学の湯淺墾道教授をゲストに迎え、専門的な視点からパスワードの流出やAIの悪用について分析される予定です。また、キャスターの桑子真帆さんが実際の事例や被害者の証言をもとに、視聴者に分かりやすく伝えていく構成となっています。
日本のパスワードがなぜ狙われるのか、その背後にあるグローバルな犯罪構造や、新しいテクノロジーの落とし穴を知ることで、私たち一人ひとりが取るべき対策も見えてきます。
放送日時:2025年5月20日(火)19:30〜19:57(NHK総合)
放送後、詳しい内容が分かり次第、最新の情報を更新します。
この番組をきっかけに、自分の資産を守る意識を高めておきましょう。
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