学生も大学も限界!?なぜ?授業料の値上げ
大学の授業料が上がり続けています。NHK「クローズアップ現代」では、この深刻な問題に焦点を当てました。全国の大学にアンケートを実施した結果、約7割の大学が授業料の値上げを実施・検討中ということが判明しました。日本は少子化が進み、大学にとっても厳しい時代になっています。大学教育を持続させるために、今どんな変化が求められているのでしょうか。本記事では、番組の内容を詳しく紹介しながら、大学と学生が直面している問題を掘り下げていきます。
授業料はなぜ上がるのか?国立大学と私立大学の違い
大学の授業料はどのように変化してきたのでしょうか?私立大学の授業料は長年にわたり上昇し続けています。一方、国立大学の授業料は、国が定めた標準額に基づき、20年間据え置かれてきました。しかし、近年になって国立大学でも値上げの動きが出てきています。その理由として、東京大学をはじめとする国立大学が、財政難や国際競争力の向上のために値上げを決定したことが挙げられます。
・東京大学の授業料値上げ(今年4月から10万円アップ)
・光熱費や人件費の上昇
・国際競争に対応するための教育環境の整備
・国立大学の法人化(2004年)による大学の自立経営の必要性
この値上げの背景には、2004年の国立大学法人化があります。それまで国立大学の収入の約半分は国からの交付金で賄われていましたが、法人化によって大学は自主的な経営を求められるようになりました。その結果、国からの交付金が年々減少し、大学は独自に財源を確保する必要に迫られています。
学生への負担増―奨学金に頼る現実
授業料の値上げによる影響は、学生の生活に大きな負担を与えています。千葉大学4年生の山崎響生さんのケースを見てみましょう。
・山崎さんが入学する前年に授業料が10万円値上げ
・4年間の学費は親が負担
・生活費は仕送りなしで、家庭教師のアルバイトで工面
・不足分は奨学金を借りる(4年間で576万円の借金)
このように、奨学金に頼らざるを得ない学生が増えています。都市部の国立大学では授業料の値上げが進んでいますが、地方の国立大学は学費を据え置く傾向にあります。これは、地域によっては家計所得が低く、学びの機会を確保する必要があるためです。しかし、大学の財政状況が厳しくなることで、学生の学びに影響が出てしまっている現実もあります。
大学の財政難が研究にも影響―高知大学の現状
財政難の影響は、大学の研究活動にも及んでいます。高知大学では、研究室の設備が老朽化しても、新しい機材を購入する余裕がなく、実験に支障が出ている状況です。
・理工学部の研究室では遠心分離機が故障しているが、買い替えできない
・土佐あかうしの生態研究室では、排泄物を運び出す設備が故障し、修理まで学生が手作業で対応
大学側は、国や自治体の補助金、企業からの寄付を募っていますが、十分な資金を確保するのは容易ではありません。こうした状況が続けば、研究環境が悪化し、大学の魅力が低下することも懸念されています。
地方大学が生き残るための戦略―地域に求められる大学のあり方
地方の大学では、少子化による定員割れが深刻化しています。宮崎県の南九州大学では、学生数が1000人にまで減少し、年間2億円の赤字に直面しています。これを受け、大学は経営改革に乗り出しました。
・定員200人の短期大学部を廃止(経費2億2000万円削減)
・地域の課題解決に貢献できる人材の育成に注力
・後継者不足が深刻な農業分野で活躍する人材を育てる
・自治体と協力し、不登校の子どもたちの学習支援を実施
このように、地域のニーズに応じた教育を提供することで、地方大学の価値を高める取り組みが行われています。
令和の大学の新しい形―オンライン教育の可能性
従来の大学教育とは異なる、新たな学びの形も登場しています。今年4月、大手IT企業と公益財団法人が共同で「ZEN大学」を開学します。
・授業はオンラインで提供
・1万を超える授業動画を配信
・卒業時には学士号が取得可能
・年間授業料は38万円(国立大学より低価格)
このようなオンライン大学は、地理的な制約をなくし、誰でも学びの機会を得られることがメリットです。すでに全国から2000人以上の申し込みがあり、注目を集めています。
大学教育の未来―求められる改革とは?
今後、日本の大学はどのように変わっていくのでしょうか?小林浩さんは、これまでの「18歳が対面で学ぶ」大学教育から、より多様な学び方を取り入れる必要があると指摘します。
・社会人の学び直しの充実
・海外の学生をターゲットにしたマーケットの開拓
・オンライン教育の拡充
また、日本の高等教育への公的支出割合は38か国中、下から3番目という低さです。学費を家庭が負担する制度を維持するのか、それとも税制の見直しや寄付制度を充実させるのか、今後の議論が求められています。
大学は未来への投資です。少子化が進む今だからこそ、一人ひとりの知的能力を高め、日本全体の「知の総和」を上げることが重要になってきます。これからの大学教育がどう変化していくのか、引き続き注目していきましょう。
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