ペンギン王国 オウサマの帰還!
2025年6月29日(日)放送のNHK「ダーウィンが来た!」では、南米フエゴ島に戻ってきたオウサマペンギンの驚きの物語が紹介されます。100年ぶりに戻った“王様”と呼ばれるペンギンたちの姿に注目が集まっています。番組では、なぜオウサマペンギンが姿を消し、なぜ再び戻ってきたのか、そして今どんな困難があるのかを紹介します。
オウサマペンギンとは?
オウサマペンギンは、英語で「キングペンギン」と呼ばれるペンギンの仲間で、世界で2番目に大きな種類です。体の長さは約90センチから1メートルほど、体重は13キロから16キロほどにもなります。頭と首の部分は黒く、首の横から胸にかけて鮮やかなオレンジ色の模様が入っていて、とても目立つ美しい見た目をしています。このオレンジ色の模様が、まるで王冠をかぶっているように見えるため、「オウサマペンギン」という名前がつきました。
オウサマペンギンは、南極に近い寒い地域の島々に暮らしています。たとえば、サウスジョージア島やフォークランド諸島、フエゴ島などがその代表です。氷の上ではなく、草や石が広がる場所で生活しているのが特徴です。
体の形はとても流線型で、海の中をすいすいと泳ぐのにぴったりなつくりをしています。羽は硬くて幅が広く、まるでヒレのような役割を果たしています。そのため、海の中では秒速5〜6キロの速さで泳げると言われています。
食べ物は主に魚やイカですが、特に「ランタンフィッシュ」と呼ばれる小さな魚が好きです。ほかにも、必要に応じてクリル(小さなエビのような生き物)なども食べます。
驚くべきことに、オウサマペンギンは一度のダイビングで最大350メートルの深さまで潜ることができるのです。しかも、長いときは9分以上も海の中にいられるというすごい能力を持っています。これは、体の中にたくさんの酸素をためこむ仕組みや、寒さに耐えるための厚い脂肪と羽毛のおかげです。
さらに、海を長い間泳いでいても、自分の住むコロニー(集団の住処)に正確に戻ってこられる能力もあります。こうした能力のおかげで、オウサマペンギンは厳しい自然の中でも元気に生きていけるのです。
一度いなくなった理由
19世紀の後半、オウサマペンギンは人間によって大量に乱獲されてしまいました。当時、ペンギンの脂肪はとても貴重な資源とされ、灯りをともすためのオイルや機械の燃料として利用されたのです。そのため、たくさんのペンギンたちが次々と捕まえられ、姿を消していきました。
特に、南米のフエゴ島や南大西洋に浮かぶサウスジョージア島、フォークランド諸島といった島々では、オウサマペンギンの群れが広がっていましたが、乱獲によってほとんどいなくなってしまいました。
1867年ごろの記録では、フォークランド諸島ではわずか20ペアほどのペンギンしか確認されておらず、それ以降、20世紀のほとんどの期間で繁殖の記録はほとんど見つかっていません。同じころ、サウスジョージア島でもオウサマペンギンはほぼ絶滅したとされています。
このように、人間による乱獲が原因で、かつてたくさんいたオウサマペンギンは南米やその周辺の島々から一度いなくなってしまったのです。
100年ぶりの「王の帰還」
そしてついに、南米の最南端に位置するフエゴ島で、約100年ぶりにオウサマペンギンの姿が確認されました。以前は乱獲によって姿を消していたこの島に、再びペンギンたちが戻ってきたのです。フエゴ島だけでなく、近くのマゼラン海峡周辺でもペンギンの巣作りや繁殖の様子が観察されています。
これは非常に珍しい出来事で、南極圏以外の場所でオウサマペンギンが再び定着し、繁殖を始めることはほとんどなかったため、「王の帰還」と呼ばれて大きな話題になっています。
研究者たちは調査を進める中で、ペンギンたちがこの新しい環境に上手く適応していることを発見しました。例えば、今のフエゴ島では、以前より浅い場所でダイビングを行い、違った種類の魚を食べるようになっているのです。これは、環境の変化や周囲の生態系に合わせて、オウサマペンギンが生活のスタイルを変えている証拠です。
こうして、ペンギンたちは困難を乗り越えながら、再びフエゴ島で王国を築こうとしています。
驚きの能力と新たな問題
オウサマペンギンは、ただ泳ぐだけではなく、驚くべき能力をたくさん持っています。まず、水の中でもはっきりと物が見えるように、目には透明なまぶた(瞬膜)があります。このおかげで、泳ぎながら獲物をしっかりと見つけることができます。
さらに、寒い地域で生活するために、体は分厚い羽毛と脂肪の層で覆われています。この構造があることで、冷たい海や氷のような場所でも体温を保ち、元気に動き回ることができるのです。また、深く潜ったときに酸素が少なくても耐えられるよう、特別な体の仕組みを持っています。
オウサマペンギンは、数か月間ものあいだ広い海を泳ぎ回ったあとでも、自分のコロニー(仲間たちが集まる場所)に正確に戻ることができます。この優れた方向感覚も、彼らの生き残る力のひとつです。
しかし、フエゴ島に戻ってきたペンギンたちには、新しい問題が立ちはだかっています。1950年代に人が持ち込んだチリチョラギツネが島に定着し、ペンギンの卵やヒナが襲われるようになりました。この外来のキツネは、もともとこの島にいなかった生き物ですが、人間の影響で住みついてしまい、ペンギンたちにとって大きな脅威となっています。
また、観光客がペンギンに近づきすぎることで、ペンギンたちがストレスを感じたり、子育てがうまくいかなくなることもあります。フエゴ島は観光地としても人気があるため、この問題も無視できません。
さらに、地球温暖化の影響で海の温度が上がり、ペンギンの主な食べ物である魚が減っているという報告もあります。魚が遠くへ移動したり数が減ることで、ペンギンたちはエサ探しに苦労し、生き延びるための環境がますます厳しくなっているのです。
懸命に生きるオウサマペンギンたち
オウサマペンギンは、新しい環境に合わせて上手に生活のスタイルを変えています。フエゴ島では、以前より浅い場所でダイビングをしたり、食べる魚の種類を工夫したりしながら、限られた資源の中で懸命に生きています。必要に応じて餌場を広げ、より安全で効率的にエサを探せる場所を見つけ出しています。
一方で、チリチョラギツネによる被害は今も続いています。キツネは卵やヒナを狙うため、オウサマペンギンの子育てには大きな脅威となっています。そこで、地元の人たちはペンギンを守るためにさまざまな工夫をしています。巣のまわりに柵を設置したり、夜間にパトロールを行ったりして、キツネの被害を減らす努力を続けています。
さらに、観光による影響を少なくするために、観光客がペンギンに近づきすぎないようルールが作られています。見学用の通路を整備したり、ペンギンのいる場所への立ち入りを制限することで、ペンギンたちが安心して暮らせる環境を保っています。
こうした取り組みのおかげで、フエゴ島のオウサマペンギンのコロニーは少しずつ数を増やし、ヒナの生存率も上がってきています。ペンギンたちは厳しい自然とさまざまな困難の中でもたくましく生き、再びこの地に王国を築こうとしています。
その姿は、私たちに自然と動物の強さ、そして環境を守ることの大切さを改めて教えてくれます。「ダーウィンが来た!」では、ペンギンの知られざる魅力や、彼らと共に生きる人々、研究者たちの努力も紹介される予定です。ペンギン好きな人はもちろん、家族みんなで楽しめる内容になりそうです。
【参考ソース】
https://www.seaworld.org/animals/all-about/penguins/king-penguin/
https://animalia.bio/king-penguin
https://www.rief-jp.org/
https://en.wikipedia.org/wiki/King_penguin
https://datazone.birdlife.org/
https://pew.org/
https://visitsealife.com/
https://stlzoo.org/
https://nationalgeographic.com/
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