女学生が卒業式に袴をはくのはなぜ?
卒業式シーズンになると、華やかな袴姿の女学生が多く見られます。今ではすっかり卒業式の定番となっていますが、そもそもなぜ女学生が袴をはくようになったのでしょうか?実は、この文化の背景には明治時代からの歴史と、ある出来事が関係しています。また、日本全国に袴姿が広まる大きなきっかけとなったのは、意外な人物でした。その秘密を詳しく見ていきます。
女学生の制服として広まった袴の歴史
もともと、日本の女性は着物を着るのが一般的でした。しかし、着物は裾が長く、歩きにくい上に動きづらいため、学校で学ぶ女性にとっては不便な点が多くありました。そこで、明治時代の女子教育が広まり始めた頃、女性が学業に集中できるようにするための新しい服装が考えられました。その中心人物となったのが、女性教育の先駆者として知られる「下田歌子」です。彼女は、日本の女子教育を発展させるために、実用的で動きやすい服装として「行灯袴(あんどんばかま)」を考案しました。
行灯袴の特徴
- 着物と違い、足元が動かしやすい
- スカートのような形をしており、活動しやすい
- 上半身は着物のままでも着用できるため、伝統的な雰囲気を残しつつ動きやすさを実現
この行灯袴は、当時の女学生たちの間で制服として採用され、女子教育の普及とともに全国へ広まりました。特に、女子高等師範学校(現在のお茶の水女子大学)などの学校では、学問に励む女性の象徴として袴が定着していきました。
一度消えた袴文化が復活した理由
明治時代に広まった袴文化ですが、その後の時代の流れとともに衰退していきました。特に戦後になると、洋装が一般的になり、日常的に袴を着る女性は少なくなりました。しかし、昭和の終わりから平成にかけて、袴は再び注目を集めるようになります。その大きなきっかけとなったのが、1987年に公開された映画「はいからさんが通る」でした。
映画「はいからさんが通る」の影響
出典:東映ビデオ株式会社『はいからさんが通る』商品ページ(https://www.toei-video.co.jp/catalog/dutd02248/)
- 主演の南野陽子さんが袴姿で登場し、多くの女性の憧れとなった
- 映画の影響で「袴=おしゃれで知的な女性の象徴」として再評価された
- これをきっかけに、大学の卒業式で袴を着る女性が増えた
この映画が公開されると、若い女性の間で「卒業式に袴を着たい!」という声が増え、次第に全国の大学や専門学校の卒業式で袴姿の学生が増えていきました。もともと日本の伝統的な服装だった袴が、映画の影響で「卒業式にふさわしいフォーマルな装い」として現代に蘇ったのです。
現在の卒業式での袴文化
現在では、大学・専門学校の卒業式で袴を着ることが一般的になっています。特に、和装の伝統を重んじる学校では、卒業式に袴を着ることが当たり前のようになってきました。また、袴はレンタルサービスが充実しているため、手軽に借りられるようになり、より多くの学生が卒業式で袴を着るようになっています。
袴が卒業式に定着した理由
- 伝統的な日本の服装でありながら、フォーマルな場に適している
- 和装に慣れていない人でも比較的着やすい
- 華やかで記念に残る服装として人気が高い
特に、写真撮影をする際に着物やドレスよりも「袴のほうが卒業式らしくて素敵!」と感じる人が多いことも、定着の理由のひとつといえます。
まとめ
もともと女学生の動きやすさを考えて生まれた袴は、時代の流れとともに一度は衰退しました。しかし、映画「はいからさんが通る」の影響によって再び脚光を浴び、現在では卒業式の定番スタイルとして広く浸透しています。伝統と現代文化が融合したこの袴文化は、これからも日本の卒業式の風景を彩る大切なものとして受け継がれていくでしょう。
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