秋田・湯沢「根っこが美味!三関せり」の魅力とは
寒さが厳しくなる季節、温かい鍋料理が恋しくなりますよね。そんな冬の食卓に欠かせない秋田の味覚といえば「三関せり」。特に“根っこまで食べられる”ことで知られ、今や全国から注目を集めています。あなたは、せりの根を食べたことがありますか?シャキシャキとした歯ごたえと、土の香りがふわっと広がる独特の風味は、一度食べると忘れられません。この記事では、秋田県湯沢市・三関地区で育まれる伝統野菜「三関せり」の魅力を、栽培環境から食べ方まで詳しく紹介します。
雪国が育てた伝統野菜「三関せり」とは
三関せりは、秋田県湯沢市三関地区で栽培される伝統野菜です。江戸時代にはすでにこの地域でせりの栽培が行われていたといわれ、約300年の歴史を持ちます。寒冷地特有の環境と清らかな湧き水によって、他の地域では真似できない味と香りを生み出しているのです。
この地区は、鳥海山や神室山などの山々から伏流水が流れ出す扇状地に位置しています。湧き水の温度は一年を通して約10℃。冬でも凍らないため、せりを水中で育てる「水耕栽培」に近い形で生育できます。この冷たく澄んだ水が、せりの根をまっすぐに伸ばし、白く美しい姿をつくり出します。
根っこが主役!香り・歯ごたえ・甘みの三拍子
三関せりの最大の特徴は、根・茎・葉のすべてを食べられること。特に根は、15〜20cmほどの長さで、真っ白でつややか。食感はシャキッとしており、噛むほどにほんのりとした甘みが口いっぱいに広がります。
寒冷地で育つため、植物自身が凍らないように糖分を蓄えるのです。これが「根の甘み」の正体。さらに、根の繊維は非常に細かく、土の香りと爽やかな苦みが絶妙なバランスを生み出しています。
地元では「茎も葉もいらねがら、根っこだけ売ってくれ」というほど根の人気が高く、根だけを天ぷらにする贅沢な食べ方もあるほど。まさに“根まで主役”の野菜です。
栽培の現場:雪と水が作る奇跡の味
三関地区のせり畑を訪れると、そこには一面に広がる水田のような光景が見られます。冬でも雪をかき分けると、透明な水の中にせりが青々と育っています。
農家は、雪が降る中でも腰まで水に浸かりながら手作業で収穫します。寒さで指先がかじかむ中でも、根を傷つけないように1株ずつ丁寧に引き抜く。この繊細な作業が、白くまっすぐな根を保つ秘訣です。
さらに、収穫後は根の泥を丁寧に落とし、冷たい清水で洗って出荷します。この工程に手を抜くと、せりの香りが濁るため、どの農家も細心の注意を払っています。まさに「雪国の職人技」で育つ野菜と言えるでしょう。
地元の人が愛する伝統の味
湯沢市や横手市では、冬の定番鍋「きりたんぽ鍋」に欠かせない存在が三関せりです。
比内地鶏のだしにせりを加えると、だしがまろやかになり、香りが一気に立ち上がります。根をさっと湯通しすることで、シャキッとした歯ごたえと甘みが際立ちます。
地元の人々は、「せりの根が入らないきりたんぽ鍋は、どこか物足りない」と言うほど。鍋の主役として愛され続けています。
三関せりのおすすめの食べ方
三関せりは調理方法によって、香り・食感・甘みの変化を楽しめる食材です。ここでは地元でも人気の食べ方を紹介します。
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きりたんぽ鍋
比内地鶏のだしとせりの香りが絶妙。煮すぎず、最後に加えるのがコツ。 -
せりしゃぶ
根も茎もさっとお湯にくぐらせるだけ。ポン酢でシンプルに食べると甘みが際立ちます。 -
根っこの天ぷら
衣は薄めにして、塩を少しふるだけ。シャキシャキとした歯ごたえと香ばしさがやみつきに。 -
お浸し・ナムル風和え物
ゆでて水気を切り、ごま油やだし醤油で和える。香りをダイレクトに感じられる一品。 -
せりご飯・かき揚げ
炊きたてご飯に刻んだせりを混ぜるだけで香り高い混ぜご飯に。根も細かく刻んで使うのがコツ。
旬と購入ポイント
三関せりの旬は、10月中旬〜3月頃。雪深くなるほど味が濃くなるため、特に12〜2月が美味しさのピークです。
購入の際は、
・根が長く白い
・泥が丁寧に落とされている
・葉がしっかりしていて鮮やか
この3点をチェックしてください。
湯沢市では、「道の駅おがち」「ゆざわグランドホテル売店」などで販売されています。また、手づくりの老舗・佐田商店などではオンライン販売も行われています。数量限定のため、毎年冬になると予約で完売する人気ぶりです。
食卓に伝統の恵みを
この記事のポイントをまとめると次の3つです。
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三関せりは、秋田県湯沢市で江戸時代から続く伝統野菜。
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冷たい伏流水と雪の力で育ち、根まで食べられる希少なせり。
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鍋・天ぷら・しゃぶしゃぶなど、冬の食卓を彩る万能野菜。
香り、歯ざわり、そして根の白さ。すべてが雪国の自然と人の手の結晶です。
一口食べれば、秋田の冬の澄んだ空気が感じられるような味わい。もし寒い夜に体を温めたくなったら、ぜひ一度、根まで味わう三関せりを試してみてください。きっとあなたの鍋の概念が変わるはずです。
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