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Eテレ【美の壺】スペシャル「民藝(みんげい)」 木喰仏に宿る民藝の心と南部鉄瓶400年の職人技、Marty Grossが追った日本の手仕事|2025年11月15日

美の壺

心にひそむ「手しごとのぬくもり」を思い出すときってありませんか?

日々の暮らしの中で、つい機械で作られた便利なものを手に取ってしまいがちですが、「誰かの手が確かに動いて生まれたもの」に触れた瞬間、ふっと心が温かくなることがあります。
そんな経験、ありませんか?

私自身も、忙しい毎日の中で“手で作られたもの”の力強さに救われることがよくあります。完璧ではないのに美しい。素朴なのに、しっかり心をつかんでくる。そんな魅力が『民藝』にはたっぷりと詰まっています。

この記事では、柳宗悦らが見いだした『民藝』の美しさから、やちむん南部鉄瓶、さらには海を越えて英国へ広がった手しごとの力、そしてカナダの映像作家が半世紀追い続けた“日本の手仕事”まで、番組に登場するエピソードを分かりやすく紹介します。

Eテレ【美の壺】沖縄やちむんの魅力全解剖|古陶から人間国宝・現代作家まで|2025年8月10日放送

名もなき職人が生んだ“暮らしの美しさ”こそが『民藝』

『民藝』は柳宗悦が1920年代に提唱した「民衆的工藝(みんしゅうてきこうげい)」の考え方がもとになっています。

結論から言うと、『民藝』のいちばんの魅力は「名もなき職人が、誰かの日常のために作った道具に美を認める」ことにあります。

その背景には
『用に即した美』
『素材を生かす素朴さ』
『長く使うほど味わいが出る道具』
などの考え方があります。豪華さではなく、使われることで完成していく美しさこそが民藝の核心です。

例えば、昔から使われてきた器や道具には、派手ではないけれど落ち着いた佇まいがあります。それは、誰かが毎日の生活のために手を動かして作った道具だからこそ生まれた美しさ。
柳宗悦はこれを「雑器の美」と呼び、工業製品とは違う温度を持った道具に深い価値を見いだしました。

名を残すための作品ではなく、あくまで生活のため。そんな姿勢が、現代の暮らしにも静かに響いてきます。

「木喰仏」が語る、無名の手しごとの深さ

民藝を語るうえで欠かせない存在が、「木喰仏」です。

木喰上人(行道)は全国を歩きながら、千体を超えるといわれる仏像を彫った人物。
その仏像は、どれも柔らかく微笑んでいて、見ているだけで心がほぐれるような雰囲気をまとっています。だから「微笑仏」とも呼ばれます。

この素朴で力強い表情は、格式ばった仏像とはまったく違う魅力があります。

柳宗悦河井寛次郎濱田庄司ら民藝を代表する人物たちは、この“形式に縛られない美”に深く心を打たれました。
彼らは実際に現地へ足を運び、山梨などで仏像を調査し、その存在を世に広めました。

そして彼らが木喰仏から気づいたこと――
それは「名を求めず、ただ信仰と手だけで彫ったからこそ宿る美」があるということ。

この価値観は、民藝運動全体を支える大切な柱となりました。

沖縄の「やちむん」には土と風の記憶が宿る

沖縄には「やちむん」という焼き物があります。これは沖縄方言で“焼き物”を意味し、土地の風土と人々の暮らしから生まれた工藝です。

やちむんの魅力をまとめると、

・厚みのある力強い形
・どっしりとした土の質感
・伸びやかな絵付け
・日用品としての使いやすさ

まさに『民藝』の精神そのものです。

戦後の混乱期を乗り越えるために窯を移転したり、共同窯を作ったりといった歴史もあり、今も多くのつくり手が伝統を守りながら新しい器を生み出しています。

沖縄の海、土、光――
その土地そのものが器に映り込んでいるような存在で、暮らしに取り入れると静かに寄り添ってくれる道具です。

英国へ渡った民藝の魂 ― 『バーナード・リーチ』という架け橋

民藝は日本だけの文化ではありません。海を越えて英国で大きく広がりました。

その中心にいたのが英国の陶芸家、バーナード・リーチ
リーチは日本に滞在した際に陶芸や工藝に魅せられ、後にイギリス・セント・アイヴスに「The Leach Pottery」を開きます。ここには日本の濱田庄司も参加していました。

ふたりは東洋と西洋の技と思想を融合し、現代のスタジオ・ポタリーの基礎をつくりました。

そして民藝の理念
『名もなき職人の器こそ美しい』
という考え方を、ヨーロッパへ広げるきっかけをつくったのです。

民藝が世界的なクラフト文化に影響を与えた背景には、こうした国境を越えた交流があります。

カナダ人映画監督が半世紀追い続けた、日本の“手仕事”

日本の手仕事に人生を捧げた人物が、カナダの映画作家 Marty Gross です。

彼は1930年代からの日本各地の手しごとや工藝の映像を収集し、修復し、アーカイブとして残す活動を続けています。

特に有名なのが、1939年の映像『Ryukyu no Mingei』。
沖縄の工藝を記録した貴重なフィルムで、昔の手しごとがどんな風に行われていたのか、今では見られない技が映像に残されています。

この活動のおかげで、日本の工藝文化が海外の視点でも丁寧に記録され、今の時代にも伝わるようになりました。

400年受け継がれてきた南部鉄瓶 ― 火と土と技の結晶

岩手県・盛岡で受け継がれてきた南部鉄瓶は、民藝を象徴する存在のひとつです。

400年近く続くその技は、

・砂鉄を使った和銑(わすず)
・錆びにくくするための焼き入れ
・美しい形を生み出す鋳型技術

といった専門的で高度な工程の積み重ねから成り立っています。

江戸時代、茶の湯文化の広がりとともに発展し、日常使いの湯沸かしとして全国に広まりました。

現代でも伝統技術を守りながら、新しいデザインや海外向けの商品を生み出し続けています。

そして南部鉄瓶の中にあるのは、単なる“道具”ではなく
『暮らしを長く支えるために考えられた形の美しさ』
なのです。

今日から「手しごとの美」を暮らしにひとつ

ここまで番組の内容をすべて丁寧にまとめてきました。
最後にポイントをもう一度整理します。

・『民藝』は名もなき職人の手しごとに宿る美しさを見つける思想
・「木喰仏」は素朴で親しみ深い造形が民藝の価値観と響き合う存在
・沖縄の『やちむん』には風土と暮らしの記憶が息づいている
・英国のバーナード・リーチが民藝を世界に広げた重要人物
・カナダの映画作家 Marty Gross が手工藝を半世紀追い続けた
・岩手の『南部鉄瓶』は400年受け継がれた暮らしの美の結晶

こうして見てみると、民藝はただの“工藝”ではなく、
「人の暮らしと心をつなぐ文化」そのものだと感じます。

あなたの生活の中にも、手しごとの温かさをひとつ取り入れてみませんか。
きっと、毎日がすこしだけ柔らかく変わっていくはずです。

※番組の内容と異なる場合があります。


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