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NHK【仲代達矢 命と向き合う】能登演劇堂の借景ステージと無名塾稽古場の実態 “平和を訴え続けたい”言葉の重み|2025年11月16日

ドキュメント

仲代達矢が示した“命と芸術”の向き合い方が胸に迫る理由

仲代達矢という名前を聞いた瞬間に、多くの人が思い浮かべるのは、圧倒的な存在感を放つ俳優の姿です。しかし2025年11月16日に放送されたBS1スペシャル アンコール「仲代達矢 命と向き合う」は、そのさらに奥にある“生き方”と“演劇への覚悟”を深く見せてくれました。
この記事では、仲代さんが命と向き合いながら続ける演劇の現場、無名塾での稽古、亡き妻への想い、そして石川県の能登演劇堂へ向かう旅まで、すべてのエピソードを丁寧にまとめます。読み終える頃には、仲代さんの言葉と一つ一つの行動が、読者にも確かな力として残るはずです。

無名塾の稽古場に流れる“静かな緊張感”

番組は、東京・世田谷区にある仲代達矢の自宅と、それに併設された無名塾の稽古場から始まります。

この稽古場は、仲代さんが演劇人生のほとんどを過ごしてきた“生活の場”でもあり、若い劇団員たちが演劇を学ぶ“学校”のようでもあります。

劇団員たちが集まると、舞台『肝っ玉おっ母と子供たち』の台本読みが始まります。
姿勢や声の強さ、言葉への向き合い方など、仲代さんの視線は細部まで届き、劇団員にとっては緊張と学びが同時に押し寄せる時間です。

読み合わせ中、仲代さんが劇団員に語りかける言葉は、長い経験からくる具体的で重みのあるアドバイスばかり。
若者たちも真剣な表情でそれを受け止め、言葉や動きを修正していきます。

その一連の流れは、演劇の基礎から本質まで、すべてが稽古場に詰まっているように感じられます。

稽古を終えた後には、仲代さんと劇団員たちが一緒に食事の席を囲みます。
ここでは稽古中のピリッとした空気とは違い、リラックスした表情が見られ、“家族”と呼びたくなるような穏やかさが漂っていました。

亡き妻・仲代恭子への深い愛情と、言葉に宿る重さ

番組の中でも特に胸を打つのは、仲代さんが亡き妻 仲代恭子について語る場面でした。

仲代さんは、恭子さんについて
「女房であると同時に同志、それから戦友」
と静かに言葉を紡ぎます。

この一言には、6つの文字以上の重みがあります。“同志”という言葉には、演劇という険しい世界を共に歩んだ深い絆が、“戦友”という言葉には、生きるために、芸術を続けるために、2人で戦い続けてきた時間が込められているようでした。

無名塾の若い劇団員たちとともに妻の墓を訪れる場面では、仲代さんの姿勢は変わることなく、ただ静かに手を合わせて祈っていました。
その背中が、何よりも多くを語っていたように感じます。

舞台『肝っ玉おっ母と子供たち』に込められた想い

番組では、仲代さんが55歳のときに出演した名作舞台『肝っ玉おっ母と子供たち』の映像が紹介されます。

戦争と貧困に揺れる時代の中で、必死に家族を守ろうとする“おっ母”の姿は、多くの観客の胸に残ってきました。
同時に、仲代さん自身が経験した東京大空襲の記憶や、戦後の激しく変わる社会の中でどう生きてきたかという語りが、この舞台の物語と重なり合い、より深い意味を帯びています。

そして今回、無名塾ではこの舞台の再演に向けた稽古が続けられています。
稽古の途中、仲代さんが脚をつる場面があり、体の衰えと向き合いながらも作品に挑む姿勢には、思わず息をのむような迫力がありました。

鍼治療を受けながらも、仲代さんは再び稽古場へ戻り、舞台に向き合い続けます。
さらには無人の稽古場に一人で立ち続け、台詞を反復する姿もあり、“舞台人としての生き方”そのものがそこにありました。

仲代達矢の原点『人間の條件』『どん底』の映像が語るもの

番組では、仲代達矢が過去に出演した映画『人間の條件』、そして無名塾での名舞台『どん底』も紹介されます。

これらの作品には、仲代達矢という俳優の“核”とも言えるテーマが通底しています。
人間の尊厳、戦争の悲惨さ、人の弱さと強さ。
そのすべてを演じてきた仲代さんだからこそ、現在の“命と向き合う”姿勢にも揺るがない深みがあるのだと伝わってきます。

能登との絆――能登演劇堂を訪ねる旅

10月、仲代達矢は石川県の能登演劇堂を訪れました。
ここは仲代さんが監修し、長年大切にしてきた劇場です。

劇場の扉を開くと、能登の自然が舞台の背景となって一体化する“借景”の美しさが広がり、仲代さんにとっては“心のふるさと”と呼べる場所です。

番組では、1994年に妻の恭子さんと訪れたイギリスのミナックシアターの映像も紹介され、2人の海外での穏やかな時間が、能登演劇堂の発想につながっていたことが静かに語られました。

仲代さんは
「能登は私にとって偉大なるふるさとだ」
と語り、地域への深い敬意と愛情を示していました。

劇団員の成長、観客の反応、そして仲代達矢の“言葉”

舞台『肝っ玉おっ母と子供たち』に出演する進藤健太郎さんが、先輩役者からアドバイスを受ける場面も映し出され、無名塾の継承の力がはっきり見てとれました。

そして迎えた公演初日。
劇場には多くの観客が集まり、終演後には観客たちが作品への感動を言葉にしていました。
仲代さんはそのアンケートを1枚1枚読み、作品が観客にどう届いたかを丁寧に確かめていきます。

番組のラストで、仲代さんは静かに「平和を訴え続けて死んでいきたい」と語りました。
その言葉は演劇を超えた“生き方”の宣言でもあり、深い静けさの中で強烈な力を持って響きました。

まとめ

BS1スペシャル「仲代達矢 命と向き合う」は、人間の生き方そのものを見つめ直させるドキュメンタリーでした。

・ 無名塾の稽古場での厳しく温かい指導
・ 妻 仲代恭子への尽きない愛情
・ 『肝っ玉おっ母と子供たち』『人間の條件』『どん底』など仲代さんの歩み
・ 年齢や体調の変化を隠さず、いまも舞台に立ち続ける姿
能登演劇堂という特別な場所との再会
・ そして「平和を訴え続けたい」という力強いメッセージ

仲代さんの言葉、しぐさ、歩み方までが深い意味を持ち、一つの人生がそのまま芸術として響いてくる内容でした。
演劇や映画が好きな人はもちろん、人生の歩き方に迷う人にも届く力を持った、非常に濃密な1時間だったと感じます。

番組を見た方にも、これから見る方にも、少しでもこの余韻が伝われば幸いです。


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