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Eテレ【地球ドラマチック】ベネチア〜華麗なる水の都の秘密〜 杭基礎の技術・ラグーン生態系・MOSE問題から読み解く“水上都市の真実”|2025年11月29日

地球ドラマチック
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ベネチアはなぜ“奇跡の水上都市”になったのか

海に囲まれた湿地という、人が暮らすには厳しい環境から誕生したベネチア。それでも人々はこの地を選び、千年以上も海と共に生き続けてきました。柔らかい地盤を克服する工夫、造船技術と建築技術の融合、ヨーロッパ屈指の商業都市への成長、そして今まさに迫る危機。この記事では、その成立の秘密から、現在抱える課題までをたどります。

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湿地から生まれた不思議な都市

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ベネチアの始まりは、アドリア海のラグーンに点在する小さな島々でした。ラグーンは、海水と淡水が混ざる浅い潟で、通常なら都市建設には不向きな環境です。

古代から中世にかけて北イタリア本土は異民族の侵入にさらされ、人々は安全な土地を求めていました。その結果、外敵が入り込みにくい湿地帯へ逃れ、島々の上に小さな集落を築き始めました。

当時のラグーンは、陸地でも海でもない独特の環境で、干潮と満潮で景色が大きく変わりました。島同士は不規則に離れ、地面は泥に覆われています。この“生きた海の上”に都市を作るのは大胆な挑戦でした。

しかし、この選択こそがのちに海上都市としての強みを生むきっかけになります。人々は湿地という制約を逆手に取り、防御に優れた“天然の城壁”としてラグーンを生かしました。これが、後のベネチア共和国の繁栄につながる土台となります。

軟弱地盤を支えるための独創的な建築技術

ラグーンの地盤は柔らかく、そのままでは建物は沈み込んでしまいます。そこで行われたのが杭(くい)を打ち込む工法です。

泥の層を突き抜けて固い地盤に到達するまで、無数の木製の杭を打ち込みます。水中は酸素が少なく、木材が腐りにくいため、何百年も安定して建物を支えることができます。家の土台となる部分には、何千本もの杭がびっしりと並び、島そのものの地盤を補強していきました。

杭の上には、軽量な煉瓦で作られた建物が立ち上がります。壁は薄く、窓やアーチを多く設けて風通しをよくし、上層階は木材を使った軽い構造に。重い石材は必要な部分だけに使用し、湿気に強いイストリア石が代表的な材料となりました。

こうした工夫のおかげで、軟弱な地盤でも沈みにくく、重厚な歴史的建物も長い年月の中で姿を保つことができました。

建築と造船技術が結びつき街の成長を支えた

ベネチアはもともと「海と共にある生活」が前提の都市です。人の移動や物流は船が中心となり、運河が道路の役割を果たします。

建築技術と造船技術が密接に結びついた理由もここにあります。舟を作る職人たちが持つ木材加工の技術は、そのまま杭の打ち込みや水辺の基礎工事に応用されました。

島を結ぶ橋は、潮位の変化や船の往来を考えた緻密な設計で、街の道路である運河は、潮の流れと水深を計算しながら整えられました。こうした調和の中で街は拡大し、船での交易が発展し、世界の商業都市へと成長していきます。

ルネサンス期には、ベネチアは東西交易を担う拠点となり、文化・芸術・政治の中心としてヨーロッパをリードする存在になりました。

深刻化する海面上昇と地盤沈下

ベネチアが抱える最大の問題のひとつが、地盤沈下と海面上昇が同時に進んでいることです。

数百年という長い時間の中で、街は少しずつ沈み、気候変動による海面上昇がそれを加速しています。ラグーンの水位は近年明らかに上がっており、これが都市の存続に直接影響するレベルに達しています。

高潮「アッカ・アルタ」の発生頻度が増え、街全体が浸水する被害が毎年のように起きています。2019年の大洪水では、歴史的建造物や店舗が大きなダメージを受け、ラグーンの脆弱性があらためて浮き彫りになりました。

建築物への塩害、基礎部分の劣化、住民への負担など、影響は日常生活にも広がっています。

巨大防潮ゲート『MOSE』とその課題

こうした危機に対抗するために作られたのが、防潮システム『MOSE』です。高潮が迫るとゲートが浮上し、アドリア海からの水を遮断する仕組みです。

しかし、この巨大プロジェクトには複数の課題があります。

・維持管理費が非常に高く、運用が重い負担となっている
・海面上昇が予測より早い場合、将来的に対応しきれない可能性
・ゲートを閉め続けるとラグーンの水の流れが滞り、生態系が悪化する懸念

街を守りながらラグーンの自然も保つという、非常に難しいバランスが求められています。

ラグーンの自然と都市が抱える問題

ベネチアのラグーンは、海水と淡水が混ざる独特の環境で、多様な生物が暮らす豊かな生態系です。しかし、運河の改修、船舶の増加、観光客の増加などにより環境負荷は年々大きくなっています。

水質の悪化、藻類の増殖、生物多様性の低下など、自然が持つ均衡は崩れつつあります。観光都市としての発展と自然保全の両立が、現代のベネチアに求められる重要なテーマです。

まとめ

ベネチアは、湿地という厳しい条件から始まり、杭基礎の工夫、軽量建築、造船技術との融合により、奇跡と呼ばれるほどの水上都市を作り上げました。しかし現在、地盤沈下・海面上昇・高潮・観光過多という多重の危機に直面しています。


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