開運!神秘のちから ふしぎな招き猫
招き猫の歴史をたどると、日本人がどんなふうに“福”を求め、どんな願いを託してきたのかが見えてきます。猫が神格化され、縁起物として確かな存在感を持つようになるまでには、いくつもの文化的な積み重ねがありました。
NHK【超体感!新春開運 伊勢 お参り旅】歴史と絶景を巡る伊勢本街道の魅力|2024年1月1日放送内容
招き猫はどこから来たのか?形が生まれた理由
招き猫の由来にはいくつかの説がありますが、どれも共通して“猫が特別な存在として見られてきた”という背景があります。猫は人のそばで暮らしているのに、完全には従わず、ふらっと姿を消したり、気まぐれに戻ってきたりします。この“つかめない距離感”が、昔の人たちにはとても不思議に映り、どこか人ならざる力を持つ動物と感じられていました。
暗い場所でも目が光り、静かに歩く姿は、夜の世界と現実の世界を行き来しているように見え、そこに神秘性が重ねられていきました。
さらに、招き猫の象徴となる「片手を上げた姿」には、はっきりと意味が結びついています。猫が前足を少し上げて“ちょいちょい”と動かすしぐさは、昔から「人を呼ぶ」「福を引き寄せる」姿として受け取られてきました。その仕草がそのまま形として定着し、置物になったときに、猫の自然な動きが縁起の象徴としてわかりやすく表現されたのです。
そして、座った姿で穏やかに片手を上げる形には、家や店に良いことが入ってくるようにという願いが重ねられました。猫のもつ神秘性、自由さ、そして小さな仕草の愛らしさがひとつに結びついた結果が、現在の招き猫の姿であり、多くの人に長く愛される理由にもつながっています。
猫が神さまと結びつくまでの道のり
猫が“神格化”されていった背景には、昔の暮らしと深くつながる役割がありました。とくに大きかったのが養蚕との関わりです。蚕を育てる家では、ネズミが繭や幼虫を荒らしてしまうことが深刻な問題で、一度被害が出れば家計に直接響くほど重要な作業でした。そんな場面で頼りにされたのが猫でした。
猫は夜でもよく目が利き、静かに動けるため、ネズミを見つけると素早く追い払ってくれます。しかも、いつもそばにいるわけではないのに、必要なときにだけ姿を現すような不思議さもありました。この“気配の薄さ”と“決定的な働き”の組み合わせは、当時の人には強く印象に残るものだったはずです。
こうした日々の暮らしの中で、人々は猫を「命と生業を守ってくれる存在」として受け取るようになりました。猫がいなければ繭が守れず、収入にも影響することから、その存在はまるで見えない力に支えられているかのように感じられたのです。
さらに、猫は自由気ままな性質を持ちながら、人間の生活を助ける働きもしてくれます。その独特の距離感と頼りがいのある行動が重なり、次第に“現実と神秘の境目に立つ生き物”のように見られ、やがて「守ってくれるもの」「家を災いから遠ざける力を持つもの」という信じ方へと広がっていきました。
こうして猫は、ただ可愛い動物ではなく、生活を支える心強い存在として敬われ、自然と神さまに近いイメージへと結びついていったのです。
養蚕と猫の絆が招き猫につながっていく
養蚕をしていた家では、猫の存在が暮らしを大きく支えていました。蚕を育てる作業は一年の収入に直結する大切な仕事で、繭を食べてしまうネズミはまさに大敵でした。そんな中で、猫が家にいるだけで被害が減り、収穫が安定したという話は各地に残っています。猫の気配があることでネズミが近づかなくなることもあり、その効果は人々の生活にしっかり根づいていました。
そうした体験が積み重なるほどに、人々の間で「猫が家を守ってくれる」「猫がいれば仕事が順調に進む」という考えが強まり、猫への信頼が自然と広がっていきました。猫の行動ひとつひとつが、家を陰から支えてくれるように感じられたのです。
この“暮らしを守る存在”という実感が、のちに招き猫という形へとつながっていきます。ネズミを退治して災いを遠ざけ、家の収入を守ってきた猫の姿は、いつしか「家内安全」や「商売繁盛」といった願いを受け止める象徴へと変わっていきました。
現代の招き猫が手を上げて福を招く姿の背景には、こうした昔の人々の記憶と感謝があります。実際の暮らしの中で役に立った猫への思いが、そのまま縁起物としてかたちを持つようになったのです。
時代を越えて続く招き猫のパワー
現代の招き猫は、昔ながらの陶器だけでなく、木製、ガラス、樹脂、さらには雑貨やアクセサリーのデザインとしても広がり、日常のさまざまな場面で親しまれています。右手を上げた猫は金運を、左手を上げた猫は人を呼ぶとされ、色によっても願いが変わります。白は幸福、黒は厄除け、金は繁栄、赤は健康といったように、自分の願いやお店の雰囲気に合わせて選ばれるのが特徴です。
これほど多くの種類が生まれ、長く愛され続けている背景には、「猫が現実の暮らしを支えてきた歴史」と「どこか神秘的な存在として見られてきた文化」の両方が息づいています。かつて猫がネズミを退治して繭や作物を守ってくれた記憶は、人々にとって確かな安心感となり、それが“福を招く”というイメージと自然に結びつきました。
同時に、猫が持つ気まぐれさや静かな佇まい、暗闇でも目が光る姿は、人の想像力をかき立てる要素でもありました。現実に役立つ存在でありながら、不思議さをまとった動物として見られたことが、縁起物としての価値をさらに高めていったのです。
こうした流れをたどると、今私たちが目にする招き猫が、単なるインテリアではないことがよく分かります。長い時間の中で、人々の願いや祈り、生活の知恵が重なって形作られた象徴であり、時代を越えて福を招く存在として磨かれ続けてきた力がそこに宿っています。
まとめ
招き猫は、猫の不思議な性質と生活を支えてきた実際の役割が結びつき、縁起物として形を持つようになったものです。気まぐれに見えて頼りがいがあり、離れているようでそばにいてくれる。その特性が、長い時間をかけて人々の祈りと結びつきました。今回の放送では、こうした由来や日本人の心の奥にある“縁起を担ぐ感覚”がどうつながっていくのかが描かれます。
右手・左手・色の違いによる“意味の違い”

ここからは、私からの提案です。招き猫には、手の向きや色ごとにちがう願いが込められています。形や色の違いを知ると、自分に合った一体をより選びやすくなります。ここでは、それぞれの特徴をもう少し深く掘り下げてまとめます。
右手を上げた招き猫の意味
右手を上げた招き猫は、金運や財運を呼び寄せるとされています。昔から商売をしているお店では右手の招き猫をよく見かけ、金運を育てたいときの定番として選ばれてきました。特に、金色や黄色の体色と組み合わせることで「豊かさを呼ぶ象徴」として飾られることも多いです。右手が高く上がっているほど遠くの運を引き寄せると考えられ、より大きなチャンスを求める場や、新しく事業を始めた場所でよく使われています。
左手を上げた招き猫の意味
左手を上げた招き猫は、人を呼び寄せる力があるとされています。お客さん、友人、良縁など、人とのつながりが広がるよう願うときにぴったりです。特に飲食店やサービス業では左手の招き猫がよく置かれ、入り口の近くに飾られることが多いです。左手の高さにも意味があり、高く上げているものは遠くのご縁まで呼び寄せるとされ、低い手のものは身近な人間関係を育てると言われています。
両手を上げた招き猫の意味
両手を上げている招き猫は、金運と人を同時に招くとされています。幅広い運をまとめて呼び込むと考えられ、家の玄関や職場の共有スペースに飾られることがあります。ただし人によっては「お手上げ」の形に見えることもあり、場所に合わせて選ばれることが多いです。それでも、多方面の運を一気に呼び込みたい場面では根強い人気があります。
色ごとに違う意味
招き猫の体の色にもそれぞれ願いが込められています。白は開運招福を表し、さまざまな幸せを呼ぶ基本の色として広く使われています。金や黄色は金運アップの象徴で、財布や貯金箱のそばに置く人も多く、豊かさを願うときの定番です。黒は魔除けや厄除けとして扱われ、家の中の安全や不運を遠ざけたいときに選ばれます。赤は健康運を支える色とされ、病気やケガを遠ざける祈りを込めて飾られてきました。ピンクは恋愛運や良縁に関係し、人との関係を深めたいときにぴったりの色です。
それぞれの手や色の意味を知ることで、招き猫はただ飾るだけのものではなく、願いに寄り添う存在として感じられます。形や色を組み合わせることで、自分の生活に合った一体を選ぶ楽しさも広がっていきます。
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