「電源革命!?“エネルギーハーベスティング”技術最前線」
スマホやセンサーは充電するのが当たり前。そんな常識が、いま静かに変わり始めています。今回のサイエンスZEROが取り上げるのは、音や電波、そして人の体の中にある小さなエネルギーを集めて電気に変える『エネルギーハーベスティング』。これまで見向きもされなかった微弱なエネルギーが、近未来の電源として動き出しています。この回では、電池や充電に頼らない新しい電源の姿と、最前線で進む研究開発が具体例とともに紹介されます。
電源の常識をくつがえす『エネルギーハーベスティング』とは
エネルギーハーベスティングとは、身の回りの環境に常に存在しているごくわずかなエネルギーを「収穫」して電気に変える技術です。太陽光や熱、音、振動、電波など、これまで発電には向かないとされてきたエネルギーが対象になります。大量の電力を一気に生み出すのではなく、少しずつ集めてセンサーや小型デバイスを動かすのが特徴です。電池交換や充電がいらなくなることで、設置場所や使い方の自由度が大きく広がります。
歌声も電気になる 音や振動を使う超薄型発電素子
番組では、音や声の振動から電気を生み出す超薄型の発電素子が登場します。歌声や街中の騒音といった音は空気の振動ですが、その揺れを材料に伝えることで電気を取り出します。鍵となるのが、力が加わると電圧が生まれる性質を持つ圧電材料です。これを薄い膜状にし、振動を効率よく受け止める構造にすることで、非常に小さなエネルギーでも発電が可能になります。電池交換が難しい場所に置かれるセンサーなどでの活用が期待されています。
最も小さな磁石は電子 スピントロニクスの挑戦
発電の考え方を根本から変える技術として紹介されるのが『スピントロニクス』です。電子は電気の粒であると同時に、磁石のような性質を持っています。この「スピン」と呼ばれる性質を利用することで、従来とは異なる方法でエネルギーを取り出す研究が進んでいます。無線通信などで飛び交う微弱な電波が電子のスピンを揺らし、その変化を電圧として取り出す仕組みです。発電に必要なエネルギーが極めて小さいため、IoT時代の自立型電源として注目されています。
涙から発電する 体内エネルギーと医療デバイス
今回の放送で特に印象的なのが、涙を使って発電するコンタクトレンズ型デバイスです。涙に含まれる成分を利用して電気を生み出し、その電力で血糖値を測るセンサーを動かす研究が進められています。発電とセンシングを一体化することで、外部電源や充電が不要になります。体の中に自然にあるエネルギーを使うため、医療分野では患者の負担を減らす技術として期待されています。
充電しない暮らしへ エネルギーハーベスティングが開く未来
エネルギーハーベスティングは、すぐに家庭用電源の主役になる技術ではありません。しかし、センサーやウェアラブル機器、医療デバイスの世界では確実に変化を起こします。電池交換がいらなくなることで、見えない場所や体の中でも機器が長く動き続けます。街中や体内にあふれる小さなエネルギーを活用する電源革命は、すでに始まっています。
まとめ
サイエンスZERO「電源革命!?“エネルギーハーベスティング”技術最前線」では、音、電波、体内エネルギーといった身近で見過ごされてきた力が、未来の電源になる可能性を具体的に描いています。電池や充電に縛られない世界は、私たちの暮らし方そのものを変えていくかもしれません。電源の常識が動き出していることを感じさせる30分になりそうです。
Eテレ【サイエンスZERO】運行システムに変革を!“鉄道技術”最前線II|CBTCで遅延半減×自律運転×新交通システム×給電進化|2025年12月14日
なぜ「電池交換が面倒な場所」ほどエネルギーハーベスティングが必要なのか

ここでは、電池交換が難しい場所ほどエネルギーハーベスティングが重要になる理由について、現場で実際に起きている課題を踏まえながら紹介します。普段あまり意識されない場所だからこそ、この技術の価値がはっきりと見えてきます。
高所・地下・インフラ現場では電池交換そのものが大仕事
電池を使う機器は、電池が切れれば必ず交換が必要になります。しかしセンサーや監視装置が、高い鉄塔の上、地下トンネル、橋の裏側、山奥のインフラ設備などに設置されている場合、電池交換のためだけに人が現場へ行くこと自体が大きな負担になります。安全確保のための装備や作業員の手配、天候待ちが必要になることもあり、短時間の作業でも多くの時間と費用がかかります。場所によっては、立ち入るだけで特別な許可が必要なケースもあります。
センサーが増えるほど管理の手間とコストが膨らむ
インフラ監視や防災、環境観測では、多数のセンサーを同時に使うことが当たり前になっています。この場合、センサーの数だけ電池管理の手間が増えていくことになります。いつ、どの場所の電池が切れるのかを把握し、計画的に交換作業を行う必要がありますが、実際には見落としや遅れが発生しやすくなります。電池切れによるデータ欠損や監視停止は、安全や運用面で大きなリスクになります。
設置したら長く動き続ける電源が求められている
こうした現場で求められているのは、設置後はほとんど人の手をかけずに長期間動き続ける電源です。エネルギーハーベスティングは、周囲に常に存在する音、振動、電波、温度差といった微弱なエネルギーを使って電気を生み出します。そのため、電池交換や電源配線に頼らず、機器が自立して動作し続けることが可能になります。結果として、メンテナンス回数が減り、作業負担やコストを大幅に抑えることができます。
このように、電池交換が面倒で大変な場所であるほど、エネルギーハーベスティングの価値は高くなります。人が頻繁に行けない場所だからこそ、「電池を替えなくていい電源」が強く求められており、この技術が現場で注目されているのです。
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