認知症は「防げる時代」に入り始めている
このページでは『知的探求フロンティア タモリ・山中伸弥の!? 認知症 克服のカギ(2026年1月10日放送)』の内容を分かりやすくまとめています。
番組が伝えていたのは、「認知症は年を取ったら仕方ない病気」ではなく、研究と予防によって向き合い方が変わりつつあるという事実です。感染症、遺伝子、最先端研究、そして日々の暮らし。これらがどうつながっているのかを知ることで、認知症を見る目が大きく変わります。
感染症が認知症リスクを高めるという新しい視点
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番組で最初に示されたのは、感染症と認知症の意外な関係でした。
新型コロナウイルスに感染した人の血液を調べると、アルツハイマー病の進行と関係する指標が、感染前よりも進んでいたという研究結果が紹介されました。これは一部の人で、2〜4年分進んでいるように見えるケースもあったとされています。
また、新型コロナウイルスだけでなく、肺炎やインフルエンザなど、重い感染症を経験した高齢者では、その後に認知症を発症する割合が高くなる傾向も示されました。
理由として考えられているのが、ウイルスや細菌による強い炎症反応です。体を守る免疫反応が、結果として脳や血管に負担をかけ、長期的に影響を残す可能性があると説明されていました。
ここで番組が強調していたのは、感染=即アルツハイマー病ではない、という点です。
感染症はあくまでリスクを高める要因の一つであり、ワクチン接種や早期治療によって防げる部分が多いことも同時に示されました。感染症対策は、命を守るだけでなく、将来の脳を守る行動でもあるという視点が提示されていました。
アルツハイマー病は脳の中で何が起きているのか
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アルツハイマー病について、番組では脳の中で起きている変化が時系列で整理されていました。
中心となるのが、アミロイドβとタウという二つの物質です。
アミロイドβは、症状が出る20年以上前から少しずつ脳にたまり始めます。この段階では、本人も周囲も異変に気づきません。
一方、タウは発症の直前から急速に広がり、神経細胞を壊していくことが分かってきました。番組では、タウが確認されてからわずか1年ほどで脳全体に広がるケースもあると紹介され、進行の速さが印象づけられていました。
近年は、アミロイドβを減らすことを目的とした薬も登場しています。ただし、初期段階に限って効果が期待できることや、すべての人に同じように効くわけではないという現実も説明されました。
そのため番組では、「治す薬」だけでなく、発症前からの予防と早期発見が重要なカギになると繰り返し語られていました。
家族性アルツハイマー病が教えてくれた予防のヒント
番組の中盤では、家族性アルツハイマー病と向き合う家族の歩みと研究が紹介されました。
家族性アルツハイマー病は、全体の約1%と少数ですが、特定の遺伝子によってほぼ確実に発症することが知られています。その特徴は、発症年齢が予測できる点です。
この特性を生かし、研究者たちは発症のはるか前から脳の状態を調べ続けてきました。
その結果、アミロイドβがどの順番で広がり、どの時点でタウが急増するのかが明らかになってきました。番組では、発症時にはすでにアミロイドβが脳全体に広がっていることも示されていました。
こうした研究の積み重ねによって、「症状が出てから治療する」のではなく、発症前に手を打つ臨床試験が現実的な選択肢になりつつあります。
家族にとっては重い現実である一方で、未来の予防医療を切り開く大きな手がかりになっていることが、静かに伝えられていました。
遺伝子APOEは不幸の印ではなかった
番組の大きな転換点となったのが、APOE遺伝子の話です。
APOEにはe2、e3、e4の型があり、特にe4を持つ人はアルツハイマー病になりやすいことが知られています。
しかし番組では、「なぜこの遺伝子が人類から消えずに残ってきたのか」という視点が提示されました。
南米ボリビアの研究では、APOE e4を持つ人は、若い頃の認知機能が高い傾向があり、女性では出産後の回復が早いことも分かってきました。結果として、子どもの数が多くなるケースも報告されています。
つまりAPOE e4は、長寿社会になる以前の人類にとっては、生き延びるために有利な遺伝子だった可能性があるということです。
番組は、遺伝子を「良い・悪い」で切り分けるのではなく、時代や環境によって意味が変わる存在として捉える視点を示していました。
認知症リスクを45%下げると言われる予防の考え方
番組後半で示されたのが、認知症リスクを45%減らせる可能性という数字です。
これは、教育機会の不足、難聴、喫煙、高血圧、糖尿病、運動不足、社会的孤立など、修正可能な14の危険因子を減らした場合の推計です。
福岡県の久山町研究では、長年にわたる調査の中で、高齢者の認知症割合が2012年以降、実際に減少していることが示されました。
背景として挙げられたのが、生活習慣の改善と医療の進歩です。特に、高血圧や糖尿病の治療が進んだことが大きいとされました。
さらに番組では、難聴対策や人とのつながりも重要な要素として紹介されました。補聴器の使用によって脳への刺激が保たれること、犬の散歩をきっかけに会話が増え、孤立感が減ることなど、日常の中でできる行動が具体的に示されました。
認知症予防は、特別なことではなく、暮らしの積み重ねであるというメッセージが伝えられていました。
認知症とどう生きるかという問い
番組の終盤では、「克服」だけでなく、認知症とどう向き合うかという問いが投げかけられました。
認知症になると、できないことは増えていきますが、楽しめることがすべて失われるわけではありません。社会がそれを支えることの大切さが語られました。
また、山中伸弥さんは、医療が進歩する中で「病気をすべてなくすことが本当に幸せなのか」と悩むことがあると述べています。
長生きできる時代だからこそ、認知症という課題が生まれたという視点は、番組全体を通して静かに響いていました。
認知症は、恐れるだけの存在ではなく、理解し、備え、支え合う中で向き合っていくものへと変わりつつある。番組は、その現在地を映し出していました。
まとめ
『認知症 克服のカギ』が伝えていたのは、希望と現実の両方です。
感染症対策や生活習慣の改善でリスクは下げられる。遺伝子があっても未来は一つではない。そして、認知症になっても人生が終わるわけではない。
認知症は、恐れるだけの病気から、理解し、備え、支え合う対象へと変わり始めています。
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