巨大噴火が“日本人らしさ”を生んだという仮説
謙虚さ、協調性、自然を敬う心。私たちが当たり前のように持っている「日本人らしさ」は、いつ、どこで育まれたのでしょうか。番組がたどり着いたのは、約7300年前、縄文時代に起きた地球最大級の超巨大噴火でした。
一瞬で暮らしを奪う圧倒的な自然の力。その中で人々は、祈り、助け合い、生き延びる道を選び続けてきました。破壊と再生をくり返す列島の歴史が、私たちの心の奥深くに何を刻み込んだのか。壮大な時間軸で、日本人の原点に迫ります。
日本人らしさをめぐる出発点
番組は「日本人らしさ」を、性格や国民性として固定的に語るのではなく、自然災害を前提として生きてきた歴史の積み重ねとして整理していました。日本列島は、地震や火山噴火が集中する変動帯に位置し、先史時代から人々は、災害を避けることができない環境で暮らしてきました。その中で培われたのが、自然に逆らうのではなく受け入れる姿勢や、個よりも集団を優先する行動様式です。
謙虚さや協調性、そして「無常観」と呼ばれる価値観は、安定した環境の中で生まれたものではなく、失われることを前提に再び立ち上がる経験の中から形づくられてきた可能性が示されました。
鬼界カルデラの海底調査で見えた「地球最大級の噴火」
番組の大きな柱となったのが、鹿児島沖に位置する鬼界カルデラの最新研究です。神戸大学と海洋研究開発機構による海底調査では、カルデラ内部に直径20kmを超える大規模なくぼみと、その中央に直径約10km・高さ約450mの巨大溶岩ドームが存在することが明らかになりました。
マグマの噴出量は約180立方キロメートルと推定され、これは近代の歴史噴火と比較しても桁違いの規模です。番組では、この噴火が過去1万年で地球最大級であった可能性が示され、従来の陸上データだけでは把握しきれなかった噴火像が、海底調査によって更新されつつある現状が紹介されました。
火山灰が残した痕跡と縄文社会の変化
超巨大噴火の影響を示す直接的な証拠として取り上げられたのが、福井県の水月湖に残る年縞(ねんこう)です。湖底に年単位で積み重なる堆積物の中から、鬼界カルデラ噴火に由来する鬼界アカホヤ火山灰が確認されました。この火山灰は、日本列島の広範囲に降り積もっており、九州から関東、東北にまで影響が及んでいたことが示されています。
番組では、噴火後の縄文遺跡で石器の出土量が大きく変化している点や、花粉分析から見える植生の急激な変動にも触れ、噴火が生業や気候に長期的な影響を与えた可能性を示しました。こうした環境の不安定化の中で、人々の行動が祈りや儀礼へと傾いていった流れが、考古学的に読み解かれていました。
日本人男性に多いD-M55と「集団で生きる力」
番組後半では、現代日本人にも残る特徴として、D-M55というY染色体の系統が取り上げられました。この系統は日本人男性に特有とされ、縄文時代の人骨からも確認されています。研究では、D-M55を持つ人が、人とのつながりを持ちやすい傾向を示す可能性が報告されています。
ここで強調されたのは、遺伝子が性格を決めるという単純な話ではなく、災害が多い環境で集団を維持しやすい特徴が生存に寄与してきたという視点です。番組は、巨大災害と共同体の形成を同じ文脈で捉え、日本人の協調性を説明する材料として遺伝学の知見を位置づけていました。
弥生の巨大津波と古墳という防災の目印
縄文時代だけでなく、弥生時代にも列島は巨大災害に見舞われていました。番組で紹介されたのが、仙台平野に残る約2000年前の巨大津波の痕跡です。沓形遺跡では、水田跡の上に津波による砂層が重なっていることが確認され、津波の遡上距離は当時の海岸線から約4km以上と推定されています。
さらに注目されたのが、津波の到達点付近に築かれた古墳の位置です。番組では、古墳が単なる墓ではなく、災害の記憶をとどめるランドマーク的な役割を果たしていた可能性が示されました。災害を忘れない工夫が、景観や土地利用の中に組み込まれていたことが具体例として紹介されています。
未来の巨大噴火にどう備えるか
鬼界カルデラは過去の遺構ではなく、現在も活動の兆候が注視されています。海底調査では、地下2〜7km付近に大量のマグマだまりが存在する可能性が示され、研究チームは光ファイバーを使った24時間体制の観測を続けています。
番組では、巨大噴火を完全に防ぐことはできなくても、兆候を早期に捉えることで備える時間を確保することの重要性が示されました。年縞や津波堆積物から過去を読み解き、現在の観測で未来に備える。その積み重ねこそが、災害列島で生き続けてきた日本人の知恵であるという流れで、番組は締めくくられていました。
まとめ
巨大噴火や大地震、津波といった災害は、日本列島に暮らす人々の歴史と切り離せない出来事でした。番組は、鬼界カルデラの超巨大噴火や弥生時代の津波、遺伝子研究や考古学の成果を通して、日本人らしさが自然災害と共に形づくられてきた可能性を示しました。祈りや協調、記憶を残す工夫は、過酷な環境を生き抜くための知恵でもありました。過去を知り、現在を観測し、未来に備える。その姿勢こそが、日本列島で生き続けてきた人々の選択だったことが浮かび上がります。
NHK 【知的探求フロンティア】AIはどこまで人間に近づける?タモリ×山中伸弥がAmeca・AGI・偉人AIから読み解く“知能の正体”|2025年7月12日放送
気になるNHKをもっと見る
購読すると最新の投稿がメールで送信されます。


コメント