おとなりさんはなやんでる。「きょうだい児の子育て」
番組「おとなりさんはなやんでる。」は、毎回ひとつの子育てのテーマをじっくり取り上げる、トーク型の情報番組です。今回のテーマは、病気や障害のある兄弟姉妹をもつ子ども、きょうだい児の子育てです。
親は、病気や障害のある子のケアに時間も体力も持っていかれがちです。そのかたわらで、もう一人の子どもが静かに我慢していることがあります。この「見えにくい我慢」に光をあてるのが、この回の大きなねらいです。
司会はおなじみのお笑いコンビ・タカアンドトシ。そこに、専門家の視点をもつ滝島真優、そして“おうち役”としてナレーションで家の気配を演じる声優の佐久間レイが参加し、スタジオに集まった親や当事者の思いを、ていねいに受け止めていきます。
「子育ての悩み」と聞くと、つい“自分には関係ないかな”と思いがちですが、きょうだい児はどの家庭にも起こりうるテーマです。視聴者が自分ごととして想像しやすいように、番組はリアルな本音を引き出しながら、「隣の家の話」として描いていきます。
そもそも「きょうだい児」とは?言葉の意味と広がる注目
番組の中ではまず、「そもそもきょうだい児とは何か?」が整理されます。
きょうだい児とは、障害や難病、慢性的な病気をもつ兄弟姉妹がいる子どものことを指す言葉です。兄・弟・姉・妹のどの組み合わせにも当てはまるよう、漢字ではなく「きょうだい」とひらがなで表記するのが一般的です。
ここ数年で、きょうだい児という言葉はニュースや行政の資料にも登場するようになりました。療育や医療の現場では、病気のある子ども本人だけでなく、そのきょうだいもサポートが必要な存在だと認識されるようになっています。
背景には、一部のきょうだい児が、兄弟姉妹のケアを日常的に担うヤングケアラーでもある、という現実があります。近年の法改正では、家族の介護や世話を過度に担う子どもたちを支援することが、国や自治体の重要な課題と位置づけられています。
番組では、こうした社会の動きを押さえながら、「名前がつくことで、初めて『自分のしんどさ』を言葉にできた」というきょうだい児の声にも、そっと光を当てていきます。
病気や障害のある子のケアに追われる親の毎日と、もう一人の子ども
今回のテーマの出発点は、「病気や障害がある子のケアに手いっぱいで、きょうだい児に我慢をさせてしまう」という親の悩みです。
通院の付き添い、入退院の手続き、日々の服薬やリハビリのサポート。親の時間も気力も、どうしてもケアが必要な子どもに集中してしまいます。
その結果、「今日は上の子の参観日に行けなかった」「下の子にずっとつきっきりで、もう一人の子とゆっくり話す時間がない」といった罪悪感を抱える親も少なくありません。
一方できょうだい児は、「自分より、きょうだいのほうが大変だから」と、親の前で気持ちを押し込めてしまいがちです。ほめられたい、甘えたい気持ちを見せないようにする子もいます。
番組では、そんな“家の中の力関係”が、当事者の言葉で語られます。「親は一生懸命やっているのに、なぜこんなに苦しいのか」「きょうだいのことを大事に思っているのに、どうしてうまく伝わらないのか」。視聴者は、親ときょうだい児、それぞれの胸の内を行き来しながら、家族の複雑な感情を垣間見ることになります。
「本当は寂しかった」大人になって語られるきょうだい児の本音
番組内容紹介にもあるように、「本当は寂しかった」と大人になってから初めて本音を語ったきょうだい児のエピソードが取り上げられます。
子どものころは、「親に心配をかけたくない」「これ以上負担を増やしたくない」という気持ちから、寂しさや怒り、混乱を言葉にできなかった人たち。それが、社会人になったり自分が親になったりしたタイミングで、ようやく「当時の自分の気持ち」と向き合えるようになるケースがあります。
「病気のきょうだいを優先するのは当たり前だと思っていたけれど、本当は自分も抱きしめてほしかった」「ずっとがんばって“いい子”を演じてきた」という告白には、視聴者も思わず息をのんでしまいます。
こうした語りは、決して親を責めるためのものではありません。むしろ、「あのとき言えなかったけれど、本当はこう感じていた」という“答え合わせ”を通して、親子の関係を少し楽にするヒントが隠れています。番組は、この「大人になったきょうだい児」の声を、ていねいに拾い上げていきます。
親に迷惑をかけたくない…気持ちを飲み込んできたきょうだい児の心
多くのきょうだい児に共通していると言われるのが、「親に迷惑をかけたくない」という思いです。
病気や障害のあるきょうだいがいる家庭では、親がいつも忙しそうに見えます。子どもはその空気を敏感に読み取り、「自分のわがままを言ってはいけない」「自分は元気だから大丈夫」と、自分の気持ちを後回しにしがちです。
その結果、「自分の感情より、家族の都合を優先するクセ」がついたり、「本音を飲み込むのが当たり前」と感じてしまうこともあります。中には、大人になってから人間関係で生きづらさを感じる人もいると指摘されています。
番組では、こうした心の動きを、専門家の解説を交えながら、誰にでもわかる言葉でひもといていきます。「あのときの自分は、ちゃんとがんばっていたんだ」と、かつての自分をいたわる視点も示されるのが印象的です。
孤独なケアと子育ての日々 相談できない親の胸の内
今回の主役はきょうだい児ですが、その影には、孤独なケアと子育ての狭間で揺れる親の存在があります。
重い病気や障害をもつ子どもを育てる親の多くは、「自分がしっかりしないと」「弱音を吐いたら崩れてしまう」と、ぎりぎりのところで踏ん張っています。「きょうだい児にも申し訳ない」と思いながら、日々を回すだけで精一杯という声も少なくありません。
番組では、そんな親たちの胸の内も率直に語られます。
「きょうだい児のことも大切に思っているのに、どうしても手が回らない」
「周りに同じ状況の人がいなくて、相談の仕方すらわからない」
こうした告白に対して、スタジオの専門家は、「完璧な親でなくていい」「できていることに目を向けてほしい」とやさしく応じます。視聴者の中にも、ほっと肩の力が抜ける人がいるはずです。
きょうだい児への向き合い方 今日からできる小さな一歩
番組の後半では、「じゃあ、具体的にどう向き合えばいいのか?」という実践的なヒントが紹介されます。そこが、単なる共感番組ではなく“子育てトーク番組”であるゆえんです。
たとえば、
・毎日は無理でも、週に一度だけはきょうだい児と一対一で話す時間をつくる
・「がんばってくれてありがとう」と、家の中での役割を言葉にしてねぎらう
・「寂しい」「嫌だ」という感情を出してもいいと、あらためて伝える
といった、今日からできる“声かけ”や“時間の工夫”です。
また、親自身が「全部自分で抱え込まない」と決めることも大切だと語られます。学校や福祉の窓口、地域の相談機関など、「話を聞いてくれる大人」の数を増やすことで、きょうだい児も親も少しずつ楽になっていきます。
家族だけで抱え込まないために 支援団体やコミュニティの存在
日本各地には、きょうだい児やその家族を支える団体やコミュニティが生まれています。たとえば、慢性疾患や障害のある人のきょうだいを支援する「きょうだい支援を広める会」や、「日本きょうだい福祉協会」、地域の「きょうだいの会」などです。
こうした場では、同じ立場の人どうしが集まり、「自分だけじゃなかった」と感じられることが何よりの支えになります。親にとっても、「わが家だけの問題じゃない」と知ることは、罪悪感を少し手放すきっかけになります。
番組は、具体的な団体名だけでなく、「支援の場とつながること自体が、すでに一歩になっている」というメッセージも届けます。視聴者は、画面を通して、家族の外側にある“ゆるやかなセーフティーネット”の存在を感じ取ることができます。
となりの家にもいるかもしれない「きょうだい児」へのまなざしを変える一夜
ラストに向けて、番組は視聴者に静かに問いかけます。
「もしかしたら、あなたのクラスメイトにも、職場の同僚にも、きょうだい児がいるかもしれない」と。
きょうだい児の物語は、特別な家庭の話ではありません。
・保育園や学校で、なぜか妙に“大人っぽい”子
・自分のことを後回しにして、いつも周りを気にしている子
・家庭の事情をうまく説明できず、ひとりで抱え込んでいる大人
そんな人たちの背景には、この番組で描かれたような歴史が潜んでいるかもしれません。
「おとなりさんはなやんでる。『きょうだい児の子育て』」は、家族の中で見えにくくなりがちな存在にスポットライトを当て、「誰かの寂しさに気づく想像力」をそっと育ててくれる回です。
Eテレ【おとなりさんはなやんでる。】5人に1人が離職!?不登校どうする仕事?|不登校離職・親の仕事両立・付き添い登校どこまで・呼び出し問題・介護休業は使える?|2026年1月22日
気になるNHKをもっと見る
購読すると最新の投稿がメールで送信されます。


コメント