仕事も子どもも、どちらも守りたい夜に
このページでは『おとなりさんはなやんでる。 5人に1人が離職!? 不登校どうする仕事?(2026年1月22日放送)』の内容を分かりやすくまとめています。
朝、学校へ行けない子どもを前に、仕事の開始時刻が迫る。
「今日も休むしかないのか」と、誰にも言えない選択を胸の中で繰り返す親たちがいます。
不登校は、子どもだけの問題ではありません。家庭と仕事、どちらかを手放さなければならない状況が、静かに増え続けています。
この回では、不登校と仕事の両立に悩む親の本音、付き添い登校の現実、そして制度の壁まで、逃げ場のない問いに真正面から向き合います。
不登校の「いま」を数字でつかむ
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不登校は、もはや一部の家庭だけが抱える特別な出来事ではありません。
社会全体で向き合うべき、明確な構造問題の段階に入っています。
文部科学省の2024年度調査では、小中学校の不登校児童生徒数は合計353,970人と、過去最多を更新しました。
内訳は、小学校が137,704人、中学校が216,266人です。
この数字は、「増えている」という表現では足りません。すでに、どの学校、どの学年にも起き得る前提条件になっています。
増加が続くことで、最も強く揺さぶられているのが親の生活です。
「今日は呼び出されるかもしれない」「朝の一歩で一日が決まる」。
そんな緊張感が、毎日、仕事と家庭のあいだに張りつきます。
予定は立てられず、先の見通しも持てない。時間そのものが不安の正体になります。
ここを見誤ると、支援策は簡単に空回りします。
大事なのは、学校に行けるかどうかではありません。
家庭と仕事が同時に揺さぶられる構造そのものを、問題の中心に据えることです。
この視点を外した瞬間、現実とのズレが始まります。
不登校離職が起きる理由は「欠勤」ではなく「呼び出し」
この番組の核にあるのは、子どもの不登校によって、親の働き方そのものが静かに崩れていく問題です。
仕事を続ける意思があっても、それを許さない状況が、現実には積み重なっています。
実際に、「保護者の約5人に1人が離職せざるを得なかった」という調査結果は、ひとつではありません。
オンラインフリースクールを利用する家庭のアンケートでは、「約5人に1人が離職」という数字が示されています。
別の調査でも、「退職14.8%+休職6.0%」を合わせると、やはり約5人に1人が仕事の現場から離れていることが分かります。
これは偶然ではなく、同じ構造が各地で繰り返されている証拠です。
ここで決定的なのは、離職の直接原因が「長期の欠勤」ではない点です。
現場を追い詰めるのは、「朝の行き渋りへの対応」「学校からの突然の呼び出し」「別室登校への付き添い」「情緒が不安定な日の在宅見守り」といった、短時間で予測不能な対応の連続です。
一つ一つは小さく見えても、それが毎日積み重なることで、仕事は確実に回らなくなります。
職場から見れば、「いつ抜けるか分からない人」になりやすくなります。
本人の中には、「また迷惑をかけてしまった」という感覚だけが残り続けます。
その結果として起きるのが、不登校離職です。
それは親の覚悟や責任感の問題ではありません。
制度と職場の構造が、静かに、しかし確実に追い込んだ結末なのです。
付き添い登校の線引きは「家庭の根性」では決まりません
番組でも正面から問われるのが、「付き添い登校はどこまでやるべきなのか」という問題です。
ここを気合いや覚悟の話にしてしまった瞬間、現実は一気に破綻します。
付き添えるかどうかは、親の強さでは決まりません。設計の問題です。
線引きの要点は、はっきり三つあります。
一つ目は、付き添いを“延命措置”にしないことです。
付き添えば登校できる日が増えることはあります。しかし、その裏で親の仕事や生活が確実に削られていくなら、それは長期戦に耐えられる形ではありません。
家庭が先に壊れてしまえば、継続は不可能になります。
二つ目は、学校側に「家庭の負担を前提にした運用」を固定化させないことです。
担任だけで抱え込まず、学年主任、教育相談、養護教諭、管理職、校内の支援窓口など、複数の担当とつながる必要があります。
別室登校の形、登下校の動線、連絡の頻度、呼び出しの条件。
これらを調整せずに続ける付き添いは、必ず家庭を消耗させます。
三つ目は、子どもの状態に合わせて“目的”を切り替えることです。
ゴールは必ずしも「教室に入る」ではありません。
「学校に近づく」「別室で過ごす」「短時間だけ滞在する」「オンラインでつながる」。
目標を細かく刻み、状態に応じて変えることで、無理のない関わり方が見えてきます。
付き添い登校に限界を感じたとき、学校と連携して別室登校などの選択肢を探るという方向性は、多くの支援現場でも繰り返し示されています。
結局のところ、付き添い登校は「親がどこまで頑張れるか」で決まるものではありません。
家庭・学校・仕事が同時に回る設計にできるか。
その一点で、続けられるかどうかが決まります。
使える制度と、使えない制度がはっきり分かれます
番組の問いにある「介護休業は不登校の子には適用されないのか」という疑問は、多くの家庭がつまずくポイントです。
結論から言えば、ここには明確な線があります。
不登校であること自体が、そのまま制度の対象になるわけではありません。
まず現実として、不登校という状態だけで、介護休業が自動的に使えることはありません。
この点を知らずに期待すると、制度の壁にぶつかり、強い失望を感じることになります。
一方で、厚生労働省ははっきりと別の基準を示しています。
不登校児童生徒が、育児・介護休業法における「常時介護を必要とする状態」に該当する場合には、介護休業・休暇制度等が利用可能と明記しています。
つまり分かれ道は、「不登校かどうか」ではありません。
「常時介護を必要とする状態に当たるかどうか」です。
この一点で、使えるか、使えないかが決まります。
ここが制度上、最も高く、そして見えにくい壁です。
そして、実務の現場でより使われやすいのが、子の看護等休暇です。
制度の見直しにより、対象となる子の年齢が「小学校3年生修了前まで」へ広がることや、取得できる事由が追加されることが整理されています。
この変更は、不登校を抱える家庭にとって、現実的な選択肢を増やす動きです。
ただし、ここでも万能ではありません。
「不登校での見守り」そのものが、どの取得事由に該当するのかは、ケースごとに判断されます。
制度名を知っているだけでは足りません。
「何を理由として申請するのか」「自分の会社の就業規則や労使協定で、除外条件がないか」。
ここまで踏み込んで初めて、制度は使えるものになります。
この制度の言葉への翻訳ができるかどうかで、結果は大きく変わります。
そして、その翻訳ができた家庭から、不登校離職の確率は、確実に下がっていきます。
両立の現実解は「職場交渉」と「学校側の支援設計」です
両立支援は、気持ちの強さや覚悟の問題として語った瞬間に行き詰まります。
これは精神論ではなく、完全に手順と設計の問題です。
現実に機能する解決策は、はっきり二本立てで考える必要があります。
まず、職場側で起きるべき変化です。
前提に置くべきなのは、「急な中抜けは必ず起きる」という事実です。
そのうえで、業務を分割し、誰が代わっても回る代替手順を先に作ります。
出社前に家庭が崩れる可能性がある場合は、始業の形を曖昧にせず、時差勤務・在宅勤務・半休などを“例外対応”ではなく固定枠として確保します。
さらに重要なのが、「事情を説明し続ける地獄」を終わらせることです。
報告先を上司一人と人事などに一本化するだけで、心理的負担は大きく下がります。
次に、学校側で起きるべき変化です。
連絡の頻度と条件を明確にし、「何が起きたら呼ぶのか」「まず誰が対応するのか」を事前に決めておく必要があります。
すべてが親への即時連絡になる構造は、家庭を確実に疲弊させます。
また、「別室」「保健室」「校内の支援拠点」など、教室以外の居場所を設計することは不可欠です。
教室に戻ることだけを前提にすると、選択肢が一気に狭まります。
実際に、「学校からの情報提供がなかった」「支援の説明が足りなかった」という声が多く上がっていることも、調査で指摘されています。
さらに国の方針としても、「学校復帰だけを唯一のゴールにしない」「多様な学びの場を確保する」という不登校対策が整理されています。
この流れは、家庭と仕事を同時に守るための重要な後ろ盾になります。
結局、両立の勝負どころは明確です。
「家庭がすべてをかぶる形」を一度壊し、職場と学校に仕事を分散できるかどうか。
そこを動かせた家庭から、現実は確実に変わり始めます。
キャリアを手放した痛みは、放置すると長引きます
番組の最後に突きつけられる「バリキャリの道を捨てた悔しさをどう消化するのか」という問いは、きれいごとでは済みません。
ここは断言できます。悔しさは、見ないふりをすると消えるどころか、時間をかけて深く残ります。
無理に前向きになろうとするほど、心の奥で膨らみ続けます。
現実に効くのは、「意味づけ」ではありません。
必要なのは、回復の手順です。
感情を整理する前に、人生を戻せる構造を先に作る。そこからしか、立て直しは始まりません。
回復の手順として特に力を持つのは、三つあります。
一つ目は、喪失を数字と事実で言語化することです。
手放した役割、収入、評価、成長の機会。
「なんとなく失った」ままにせず、棚卸しすることで、悔しさは形を持ち始めます。
二つ目は、代替のキャリア線を“仮”でいいから引くことです。
今すぐ走れなくても構いません。
学び直し、資格、実績の残し方を小さく再開し、「いつでも戻れる道」を残しておくだけで、心の圧力は大きく下がります。
三つ目は、家庭内の役割を固定しないことです。
見守り担当を一人に決め打ちした瞬間、燃え尽きへのカウントダウンが始まります。
役割は流動的にし、交代できる余地を残します。
不登校は、子どもだけの問題ではありません。
親の人生設計そのものに、正面から衝突します。
だからこそ感情の処理は、「前向きになる」ではなく、「戻れる構造を作る」で決着します。
この回が強く刺さるのは、仕事と家庭の同時崩壊を、甘さなく描いているテーマだからです。
【Dearにっぽん】もういちど、学校〜玖珠町立くす若草小中学校〜不登校経験者が安心して学べる新しい公教育モデルとは?|2025年2月9日放送
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