チリ サーモン養殖の秘密と日本との深い関係
日本の食卓でおなじみのサーモン。その多くが南米チリから届いていることを知っていますか?このページでは『世界で開け!ひみつのドアーズ(チリ・サーモン生産者に“ありがとう”)(2026年4月8日)』の内容を分かりやすくまとめています。なぜチリが輸入1位なのか、どうやっておいしい魚が育つのか、背景にある人と国のつながりまでやさしく解説します。
この記事でわかること
・チリのサーモン養殖が日本で広がった理由
・サーモンが2年かけて育つ仕組み
・おいしさを支える生産の工夫
・チリで養殖が始まった歴史と背景
・日本人とチリ人の知られざる関係
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チリのサーモン養殖が日本で人気の理由
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サーモンが日本で強く支持されているのは、味がおいしいからだけではありません。刺身、寿司、焼き物、ムニエル、丼など使い道が広く、子どもから大人まで食べやすいことが大きな理由です。日本の水産庁も、1990年代以降にノルウェーやチリの海面養殖による生食用サーモンが広く流通したことで、「サーモンを生で食べる」習慣が定着していったと説明しています。つまり、今の日本でサーモンが身近なのは、輸入と養殖の発達があったからです。
その中でもチリ産サーモンが目立つのは、日本向けに安定して届けられる力が強いからです。外務省の2024年版ODA白書では、日本で食べられているサーモンの約30%がチリからの輸入だとされています。さらに水産庁は、日本のサケ・マス類の輸入先で、チリが輸入額・輸入量ともに上位で、ノルウェーより上位にあると示しています。これが「チリのサーモンはなぜこんなに見かけるのか」という疑問の答えです。
もう一つ大きいのは、日本の食べ方に合いやすいことです。日本では切り身、刺身、寿司ネタなど、使いやすい形で売られる魚が選ばれやすく、サーモンはその条件にぴったり合います。水産庁も、流通や冷蔵技術の発達で、以前は手に入りにくかった地域でも全国的にサーモンが買いやすくなったとしています。人気の理由は、味だけでなく「買いやすい」「食べやすい」「失敗しにくい」がそろっていることです。
サーモン輸入1位 チリの生産体制とは
チリが強い理由は、海に魚が多い国だから、だけではありません。実はチリはもともと天然のサケがいる国ではありませんでした。そこに日本の技術協力が入り、卵のふ化、稚魚づくり、育成、人材育成まで少しずつ仕組みを作っていったことで、今の大産業に育っていきました。JICAの資料でも、チリが「サケの生息地ですらなかった」のに、世界有数の輸出大国へ成長したとまとめられています。
チリの生産体制が強いのは、川から海へ育てる流れを大きな産業として組み立てているからです。一般的なサーモン養殖では、まず淡水で卵から稚魚を育て、海へ移せる「スモルト」と呼ばれる段階まで成長させ、その後は海のいけすでさらに育てて出荷します。国際的な解説では、淡水で12〜18か月、海で12〜24か月育てる流れが示されていて、全部合わせるとかなり長い時間がかかります。番組概要の「2年がかり」は、こうした一般的な養殖サイクルとよく重なります。
さらにチリは、長い海岸線と、養殖に向いた入り江や湾が多いことでも有利です。FAOは、チリの養殖産業が大きく発展してきた背景として、自然条件の良さと輸出産業としての成長を挙げています。つまりチリは、「魚を育てる技術」だけでなく、「育てやすい海」と「大量に出荷できる仕組み」の両方を持つ国なのです。
2年かけて育てるサーモン養殖の裏側
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サーモン養殖が注目される一番の理由は、スーパーで見える切り身の向こうに、ものすごく長い育成の時間があるからです。魚はすぐ大きくなるように見えても、食卓に届くまでには、卵の管理、えさ、水温、病気対策、海への移動、成長管理など、たくさんの段階があります。1回うまくいかなければ、それまでの長い時間が無駄になることもあります。だから生産者にとっては、毎日の小さな管理がとても大切です。
ここで大事なのは、サーモン養殖が「魚を増やすだけの仕事」ではないことです。水温や病気、海の状態、えさの管理などが全部つながっていて、どれか一つが崩れると全体に影響します。世界銀行系の報告では、チリのサーモン産業は2007年に**ISA(伝染性サケ貧血)**の大きな危機を経験し、その後、衛生管理や生産の考え方を見直す必要がありました。これは、成長した産業でも油断できないことを示しています。
つまり「2年かけて育てる」という言葉には、時間の長さだけでなく、失敗できない重さがあります。毎日きちんと育て続けること、病気を広げないこと、出荷まで品質を守ること。その積み重ねがあるから、日本の店頭で当たり前のようにサーモンを買えるのです。私たちが見ているのは一切れの魚でも、その後ろには長い時間とたくさんの仕事があります。
おいしいサーモンを育てる秘密
おいしいサーモンは、ただ大きく育てればよいわけではありません。大切なのは、健康に育ち、身の色や脂ののり、食感が安定していることです。そのためには、えさの質、育つ環境、密度管理、病気対策、出荷までの流れが大切になります。サーモンは食べるものや育つ環境の影響を受けやすいので、味を安定させるには、養殖の現場で細かい管理が必要です。
また、日本で人気が高い理由には、生で食べやすい流通が広がったこともあります。水産庁は、日本で「サーモン」という言葉と生食が定着した背景に、ノルウェーやチリの海面養殖サーモンの流通拡大があったとしています。これは味だけでなく、品質管理や流通の精度が上がったからこそできた変化です。おいしさは、海だけで決まるのではなく、育て方と届け方の両方で決まります。
ただし、ここはきれいごとだけでは終わりません。サーモン養殖は世界中で広がっていますが、環境への負荷や病気の広がりへの心配もずっと議論されています。FAOやOECDなども、チリの養殖業には今後も内部・外部の課題があると指摘しています。だから本当に大切なのは、「たくさん作ること」だけでなく、おいしさと持続可能性の両立です。安定して食べ続けられる未来を考えるなら、この視点は外せません。
チリで養殖が始まった背景と歴史
「なぜチリでサーモン養殖だったのか」は、とても気になるところです。答えは一つではありませんが、大きく言うと、自然条件と国際協力が重なったからです。チリ南部は冷たい海や入り組んだ海岸があり、サーモンの養殖に向いた場所が多くありました。そこへ日本の技術と人材育成の協力が加わり、新しい産業として育っていきました。
外務省のODA白書では、日本は1969年ごろから約20年にわたりチリへ養殖技術の移転を行い、その結果、チリは世界有数のサーモン輸出国になったと紹介しています。JICAのプロジェクトヒストリーでは、その始まりに、日本の水産技術者とチリ人研修員の出会いがあったとされています。つまりこの産業は、最初から巨大ビジネスとして始まったのではなく、人と人のつながりが土台になって大きくなったのです。
ここがこのテーマの深いところです。私たちはふつう、輸入食品を「どこか遠くの国で作られたもの」と考えがちです。でもチリのサーモンは、日本にとってただの輸入品ではありません。日本が育成にかかわった産業の成果でもあります。だから「なぜ日本人にとって身近なのか」という問いには、食の好みだけでなく、長い歴史のつながりも入ってきます。
日本人とチリ人の知られざる物語
このテーマが人の心を動かすのは、数字や産業の話だけでは終わらないからです。JICAの資料では、チリのサケ産業の始まりに、日本側の技術者とチリ側の研修員の出会いがあり、それが後の大きな発展につながったとされています。大きな産業は、最初から大きかったわけではなく、小さな協力の積み重ねで生まれます。そこに人間らしさがあります。
この話が注目されるのは、今の時代にぴったりの意味があるからです。世界では国どうしの対立や分断の話が目立ちやすいですが、チリのサーモンの歴史を見ると、国をまたいだ協力が暮らしを支える形になることがわかります。日本の食卓に並ぶ一切れのサーモンの向こうに、遠い国の海、育てる人の努力、そして昔の技術交流がつながっている。そう考えると、食べ物の見え方が少し変わります。
そしてもう一つ大切なのは、「ありがとう」という感情が、ただの感動で終わらないことです。チリのサーモン生産者に感謝するというのは、目に見えない仕事を見ようとすることでもあります。食べ物は店に最初から並んでいるのではなく、誰かが長い時間をかけて育て、守り、運んでくれている。その背景を知ることは、食べ物を大事にすることにもつながります。だからこのテーマは、サーモンの話であると同時に、私たちの食卓を支える人を知る話でもあるのです。
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