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【NHKスペシャル】新ジャポニズム第4集「DESIGN 世界を魅惑する“和”の魔法」ランドセルと金継ぎに世界が熱視線|2025年3月30日放送

ドキュメント

新ジャポニズム第4集 DESIGN世界を魅惑する“和”の魔法|2025年3月30日放送まとめ

2025年3月30日(日)に放送された『NHKスペシャル 新ジャポニズム第4集 DESIGN世界を魅惑する“和”の魔法』では、日本のデザインがなぜ世界で注目されているのかを、具体的なエピソードを通して深く掘り下げていました。ランドセル、金継ぎ、折り紙、デニム、そして建築まで、日本人の暮らしに根ざした「手仕事」と「美意識」が、いま世界の人々を惹きつけています。

ハリウッドでも話題のランドセル、その魅力とは

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アメリカでは、あるハリウッド俳優がランドセルを愛用していた姿がSNSで拡散され、大きな注目を集めました。そこからランドセルの魅力が一気に広まり、現在はファッション感度の高い大人たちの間でブームになっています。

ランドセルのルーツは明治時代。軍隊の背のうをモデルに、子どもたちが両手を空けて安全に通学できるよう考えられて作られました。その後改良を重ね、現在では150以上のパーツから構成される精密な作りになっています。

  • 一つのランドセルを完成させるには200以上の工程が必要

  • 手作業でしかできない繊細な工程が多数ある

  • 使う革や金具も高品質なものが厳選されている

特に土屋鞄製造所のランドセルは、手作りの良さを感じられる代表的なブランドです。工房では、職人が1つ1つのランドセルに丁寧に向き合い、細かな調整を行いながら作業を進めています。縫い目の美しさ、形の精密さ、そして使い込むことで深まる革の風合い。どれも、大量生産では再現できない特別な魅力です。

ランドセルはもともと子どものためのものですが、こうした丁寧な手仕事や耐久性の高さ、美しいデザインが、大人の目にも新鮮に映り、世界で注目されるようになりました。海外の人たちは「日本人が子どものためにここまで細やかに作っていること」に感動し、文化への理解と尊敬の気持ちを込めてランドセルを選んでいるのです。

さらに、アメリカやヨーロッパでは、シンプルで機能的なデザインが流行していることも、ランドセル人気を後押ししています。中にはビジネスバッグとして使う人もいて、ノートパソコンや書類をきれいに収納できる便利さが喜ばれています。

ランドセルは、ただのバッグではなく、日本のものづくりの心を感じられる存在として、世界中に広がりつつあります。長く使えて、心も豊かにしてくれる──そんな日本の製品が、今改めて見直されているのです。

世界が認める日本の手仕事と、職人技に魅せられた盛岡さんの旅

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今回の番組では、世界的に有名な高級ブランドを束ねる企業グループが、日本各地の職人技を求めて活動する様子が取り上げられました。彼らが注目しているのは、日本に長く受け継がれてきた手作業の技術と、その背景にある美意識や哲学です。

日本での現地調査の責任者として選ばれたのが盛岡さん。彼はフランス人と日本人の両親のもとに生まれ、パリで育った経験を持ちます。西洋と東洋、両方の文化を理解する立場から、職人の技を世界へとつなげる架け橋のような存在として活動しています。

盛岡さんは、日本各地をめぐり、2年間で100か所以上の工房を訪問。そのなかでも特に心を打たれたのが、京都・京丹後にある「民谷螺鈿(たみやらでん)」の工房でした。

ここで紹介された技術が、「螺鈿織(らでんおり)」と呼ばれるものです。

  • 貝殻を一枚一枚手で削って模様を描き、和紙に貼り付ける

  • 完成した図柄入りの和紙を、絹糸と同じ細さに裁断する

  • 貝殻が割れないように、手作業で丁寧に織り上げていく

このような非常に繊細で根気のいる作業を経て生まれる螺鈿織は、見る角度や光の加減によって色が変わり、まるで光そのものを織り込んだかのような幻想的な美しさを放ちます。

盛岡さんは、こうした日本独自の技術を世界の他の職人技と組み合わせ、新しい製品を生み出す可能性に強い関心を寄せています。単に伝統を守るのではなく、伝統と未来をつなげるものづくりをめざし、現代のグローバルな市場に向けた提案を進めているのです。

このエピソードからも、日本の伝統技術がいかに世界から注目されているか、そしてそれを支える職人たちの丁寧な手仕事がどれほど大きな価値を持っているかが伝わってきます。日本の美と技を世界へ発信する動きは、今後ますます広がっていきそうです。

岡山・井原市が育んだ世界に誇るデニムのものづくり

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番組で紹介された岡山県井原市は、日本のデニム生産の中心地として知られています。この地域では、江戸時代から織物づくりが盛んに行われてきました。理由のひとつは、山から流れる清らかな水に恵まれていたこと。この水は、糸を染める際に欠かせない存在であり、自然の恵みが織物文化の土台を支えてきたのです。

このような歴史ある土地で、いまも変わらず丁寧な手仕事によるデニム生産を続けているのが「クロキ」というメーカーです。盛岡さんも頻繁に足を運び、現場での作業を見守っていました。

クロキの工場では、「シャトル織機」と呼ばれる日本製の旧式の織り機が現役で使われています。この織機は、糸をセットするところからすべて職人の手作業で行われます。

  • 手で糸を通すことで、生地の張りや風合いを細かく調整できる

  • 大量生産には向かないが、1枚1枚の品質にこだわることができる

  • 独特のムラ感や、履き込むごとに味わいが出る生地が生まれる

こうしたこだわりの製法が、世界のファッション関係者から高い評価を受けています。2023年には、盛岡さんが所属する企業グループとクロキがパートナーシップ協定を結び、共同で新しい製品づくりを始めるという大きな一歩も紹介されました。

今、世界のラグジュアリーブランドが求めているのは、単なる「素材」ではなく、背景にストーリーや文化のあるものづくりです。井原市のデニムはまさにその代表例であり、土地の風土・歴史・職人の技が詰まった製品として世界の注目を集めています。

日本の地方に残るこうした手仕事は、見えにくいけれど確かな価値を持っています。そしてそれが、今まさにグローバルな舞台で再評価されていることを、このエピソードは力強く伝えていました。

折り紙から広がる最先端デザインの可能性

折り紙は古くから親しまれてきた日本の伝統的な遊びですが、今では最先端の科学技術やファッションデザインに応用されるほどの存在になっています。番組では、その驚くべき進化と広がりが紹介されました。

まず紹介されたのは、アメリカ・スタンフォード大学の研究者が折り紙の構造を探査機の設計に活用している例です。宇宙空間では、大きな構造物を小さく折りたたんで運び、必要なときに広げる必要があります。そこで注目されたのが、折り紙の持つ「折りたたみ」と「展開」の技術。限られた空間の中で最大限の機能を引き出す方法として、折り紙の原理が大きな役割を果たしているのです。

また、2023年にイタリア・ミラノで開かれた国際的なデザイン展では、折り紙に着想を得た日本のファッションが大きな注目を浴びました。この服は、従来のように体型ごとにサイズを分けるのではなく、一つの形でどんな体型の人でも着られるよう工夫された構造が特徴です。生地の切り方やたたみ方に、折り紙の構造が活かされています。

この服を生み出したのは、日本のデザイナー宮前さん。宮前さんは、デザインの基礎として新しく入ってきた若手メンバーに対し、最初の2年間は折り紙を学ばせるという方針をとっています。理由は、折り紙の中にこそ、形を理解し、発想を広げるヒントが詰まっているから。複雑なものをシンプルに形にする力、そして手を使って考える感覚が、折り紙を通して自然に身についていくのです。

折り紙の魅力は、単なる形の面白さだけではありません。

  • 一枚の紙から多様な形を生み出せる創造力

  • 折り方にルールがありながらも、自由な発想ができる柔軟性

  • 手を動かすことで自然に身につく空間認識力や観察力

こうした要素が、いまや宇宙開発、建築、工業デザイン、そしてファッションの世界で求められており、日本で育まれてきた折り紙の力が未来の技術を支える礎になろうとしています。

日本の「遊び」から生まれた知恵が、いま世界を動かす力へと進化している姿に、伝統の中にある革新性を改めて感じさせられるエピソードでした。

自然と調和する建築に宿る“和”の思想

番組では、建築の世界にも日本独自の美意識が息づいていることが紹介されました。なかでも注目されたのが、中国・山東省に建てられた「水の美術館」という建築物です。この美術館は、湖の水面とほぼ同じ高さに設計されており、まるで建物が水と一体化しているような印象を与えます。水が建物の内部にまで流れ込むその構造は、人工物でありながら自然と溶け合うような美しさを生み出していました。

この斬新でありながら静かなデザインを手がけたのは、建築家・石上さんです。石上さんは、建築を通して人間の活動と自然との“ちょうどよい関係”を生み出すことを大切にしており、それが空間の心地よさや豊かさにつながると考えています。

彼の設計思想の背景には、日本の伝統的な家づくりがあります。たとえば、障子を開けると庭とつながるように設計された古い日本家屋では、外と中の境界があいまいで、自然の変化を感じながら暮らすことができる構造になっています。四季の移ろい、風の流れ、光と影――こうした自然の要素を生活の中に取り込むという考え方が、現代建築の中でも息づいているのです。

  • 人工物を自然の一部として調和させる

  • 人間と自然が無理なく共存できる空間をつくる

  • 視覚だけでなく、感覚として自然を感じられる工夫

これらはすべて、日本の“和”の哲学に根ざした設計の在り方といえます。水の美術館を訪れた人々は、建築がただ機能的なものではなく、自然と対話する場所として存在していることを感じ取るはずです。

世界では、都市化や人口集中が進む中で、自然との距離がどんどん広がってきています。そんな中、自然と人の間に“心地よい距離感”を生み出す日本の建築の知恵は、今あらためて注目される存在となっています。

石上さんの建築は、単に建てることが目的ではなく、人の暮らしと自然環境との間に新たな関係性を築くことを目指しています。これはまさに、日本の「和」の心を現代に生かした建築のかたちといえるでしょう。

無名の職人たちが紡ぐ民藝の力と、美しさを取り戻す金継ぎの哲学

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日本のデザインを支えてきたのは、華やかなブランドや有名なデザイナーだけではありません。地方の暮らしの中で無名の職人たちが日々の生活に寄り添いながら生み出してきた「民藝(みんげい)」の品々も、その魅力を世界へと広げています。

番組で紹介されたのは、大分県日田市で作られている小鹿田焼(おんたやき)です。この焼き物は、もともと農作業の合間に家族で作られていた生活道具が始まりでした。使いやすさを第一に考えたその形は、派手さはありませんが、使う人のことを思いやった工夫が細部にまで込められています。

  • 色合いは素朴で、装飾も控えめ

  • ろくろの回転を使った「飛び鉋(とびかんな)」の模様が特徴的

  • 家庭ごとに手法が少しずつ異なり、個性がにじみ出る

こうした器は、日々の食卓で自然と手になじみ、心を落ち着かせてくれます。いまでは海外からの注文も多く、世界の人々にもその“温かさ”が届いているのです。

そして、壊れてしまった器に新たな命を吹き込む技術として注目されているのが、金継ぎです。漆で欠けた部分を接着し、その継ぎ目に金をあしらうこの技法は、単なる修復を超えた新たな美の創造として、世界中で人気が広がっています。

番組で紹介されたエピソードでは、新型コロナウイルスで夫を亡くした女性が、息子から金継ぎの器を贈られた話が語られました。「壊れても継ぎ直せば美しくなる」という言葉に、女性は深く心を打たれたそうです。この器は、夫を亡くした悲しみを包み込み、再び前を向く力を与えてくれる存在になりました。

  • 金継ぎは、過去の傷を隠さず、あえて見せる技法

  • 「不完全なものにこそ価値がある」という侘び寂びの考え方が背景にある

  • 修復した器は唯一無二のアート作品に生まれ変わる

金継ぎは今、フランスやアメリカを中心に心のケアの一環としても取り入れられており、多くの人がその癒しの力に惹かれています。欠けたものに手を加えて、美しさを引き出すという考え方は、現代社会に生きる私たちにとって、物だけでなく人の心にも通じる優しさとして響いているのです。

無名の職人が残してきた日常の器と、それを修復する金継ぎ。どちらも、壊れたら終わりではなく、手をかければもっと豊かになるという希望の象徴です。そこにこそ、日本の“和”の精神が脈々と息づいています。

伝統を未来へつなぐ若者たちの挑戦

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番組のラストでは、日本の“和”の力を未来へつなごうとする若者たちの活動が紹介されました。そのひとつが、沖縄・喜如嘉(きじょか)の集落で守られている「芭蕉布(ばしょうふ)」の技術です。

芭蕉布は、かつて沖縄の人々が日常的に身につけていた織物で、その素材となるのが糸芭蕉という植物です。芭蕉布づくりは、自然との共生を大切にする文化そのもので、すべての工程が手作業で行われます。

  • 糸芭蕉の繊維を指で裂いて、太さを均一にする

  • 短い繊維を結び合わせて長い糸にするという根気のいる作業

  • 織る際には繊維の特徴を見極めながら織り方を変える繊細な技術

この技術を完全に習得している職人は、現在全国でも40人ほどしかいないといわれており、将来にわたって守っていくには支援が不可欠です。そこで、日本の手仕事を世界へ発信する活動を行う盛岡さんが、現地を訪れ、伝統技術の保存と発展を支援するプロジェクトに取り組んでいます。

また、日本の伝統が生きているのは工芸の世界だけではありません。東京大学のオリガミラボでは、日本・中国・韓国などアジアの若者たちが集い、折り紙の原理を活かした先端技術の研究を進めています。

折り紙には、一枚の紙から立体をつくる構造的な工夫が詰まっており、それがロボット工学や建築、医療機器などの設計に応用されています。たとえば、小さくたためて必要なときに展開する人工器官や、宇宙空間で展開できるパネルなど、まさに未来のものづくりのヒントが、折り紙の中にあるのです。

  • 折り紙の原理が形状記憶素材や工学構造の開発に貢献

  • 異なる国の学生たちが伝統文化をもとに共に研究する場が生まれている

  • アジアから世界へ、伝統と最先端の融合を発信している

日本の伝統は、過去を守るためのものではなく、新たな価値を生み出す種にもなり得ます。芭蕉布も、折り紙も、手間と工夫の積み重ねから生まれる技術です。そしてその根底には、「良いものを長く使い、丁寧に暮らす」という日本人の思想が流れています。

若い世代がこうした文化を学び、未来につなげていく姿は、まさに“和”の力が持つ希望を象徴していました。伝統は止まるものではなく、挑戦の中で息づいていく――そのことを実感させられる、力強い締めくくりでした。

まとめ

この回の『NHKスペシャル 新ジャポニズム第4集』では、日本の“和のデザイン”がどれほど深く世界に影響を与えているかが丁寧に描かれていました。手仕事に込められた思い自然との共存壊れたものへの新しい価値の見出し方。それぞれの物語に、日本らしい優しさと強さがありました。これからも、こうした日本の文化が、世界の中で生きた形で受け継がれていくことが期待されます。

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