アマゾンが“消えてしまうかもしれない”未来とは?COP30で問われる本当の危機
ブラジル・ベレンで開かれるCOP30では、アマゾン熱帯雨林の行方が大きな焦点になります。地球最大級の森が『アマゾン・ダイバック』という転換点に近づいているという警告は、私たちの生活にも直接つながる問題です。この記事では、なぜ森が危険にさらされているのか、どこまで進んでいるのか、そして守るための取り組みとして注目される『アグロフォレストリー』や国際枠組み『TFFF』について、今わかっている情報をまとめます。まだ放送前なので、番組で語られる具体的な内容は放送後に書き直しを行います。
NHK【イゾラド“大集団”出現】アマゾンの未接触部族が10年ぶりに姿を現した理由とは?森林破壊・気候変動がもたらす影響と現地ルポ|2025年2月24日
アマゾンが“限界点”に近づいている理由
アマゾンでは、気候科学者のカルロス・ノブレが長年警鐘を鳴らしてきました。気温が産業革命前よりも『2℃』上がり、森林伐採が『17%から20%』を超えると、森全体が元に戻らないほど弱ってしまう可能性があるという指摘です。数値で見ると小さく思えるかもしれませんが、この違いが巨大な生態系を一気に変えてしまう境界だとされています。
森が伐採されて薄くなると木々の蒸散が弱まり、雨が減って乾燥が進みます。乾燥が進むことで火災が起きやすくなり、森はさらに弱ります。こうした連鎖が続くと「湿った森」から「乾いたサバンナ」へ形が変わり、元の熱帯雨林には戻れなくなるとされています。これこそが『アマゾン・ダイバック』と呼ばれる現象です。
世界の気候にも影響が広がる可能性
アマゾンの崩壊はブラジルだけの問題ではありません。森が吸収していた膨大な量の二酸化炭素が空気中に残り、逆に森がCO₂を出す立場になる恐れがあります。南米だけでなく、遠く離れた地域の雨の降り方や風の流れにも影響が出る可能性があります。さらに、アマゾンにしかいない生きものが一気に姿を失い、生物多様性の損失も深刻です。
こうした現実が、ノブレ氏の「世界の気候が激変しうる」という警告の背景にあります。2025年のCOP30でこの議題が表に出てくる理由がよく分かります。
森を守りながら生活も成り立つアグロフォレストリー
アマゾンを守るために注目されているのが『アグロフォレストリー』という方法です。これは、森をまるごと農地に変えてしまうのではなく、果樹や豆などの作物と森林を組み合わせて育てる土地の使い方です。
一次林を守りつつ、森の構造を残しながら収穫できるため、伐採による破壊を減らす効果が期待されています。木々の下で作物を育てることで、土壌の水分、森の水循環、生きものの生息環境も維持できます。先住民族や地元の人々が中心になって取り組むケースも増えており、森と生活を両立させる現実的な方法として注目されています。
とはいえ課題もあります。導入にお金がかかること、作物によっては収益が安定しないこと、管理が難しいことなどがあり、すべての地域ですぐに導入できるわけではありません。農地として完全に開発してしまうケースもあり、森林保全として正しく運用されるかが鍵になります。
国際枠組み『TFFF』とは何か
COP30で大きく取り上げられそうなのが『Tropical Forests Forever Facility(TFFF)』です。森を守った国や地域が“報酬”を受け取れる仕組みを作ろうという国際的な枠組みで、ブラジル政府が主導しています。
TFFFの特徴は、
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森林保全や再生に成功した分だけ支払いが行われる
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国の資金だけでなく、民間投資も組み合わせる
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支援の一部は必ず先住民族や地域の住民へ届ける
といった点です。
一時的な補助金ではなく「守り続けたほど利益が出る」仕組みとして注目されています。熱帯雨林を投資対象として価値づけることで、これまでにない規模のお金を集められる可能性もあります。ただし、民間投資が入ることで利益優先の動きになり、本来守るべき森が二の次になる危険もあり、運用には細心の注意が必要です。
現場で行われている取り組みと、その壁
アマゾンでは衛星監視で伐採や火災を追跡したり、先住民族が森の保護に参加したりと、多くの取り組みが進んでいます。劣化した土地での植林やアグロフォレストリーへの転換も広がっています。
しかし課題は多く、土地の権利があいまいな地域があること、伝統的な牧畜などとの競合、気候変動による乾燥化の加速など、問題は複雑です。アマゾンがすでに「危険な段階」に入っているという研究もあり、時間との戦いになりつつあります。
まとめ
アマゾンが抱える危機は、単なる自然破壊ではなく、地球の未来そのものにつながる問題です。『アマゾン・ダイバック』の可能性は現実味を帯びており、気候変動と森林伐採が重なることで、数年〜数十年の単位で大きな変化が起きる可能性があります。
アグロフォレストリーやTFFFといった取り組みは希望であり、森を守りながら地域の暮らしを支える新しい道筋となるかもしれません。COP30で何が語られ、どんな行動が世界に求められるのか、注目が集まります。
このテーマは放送後にさらに詳しく更新します。
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