美ら海水族館の巨大水槽に隠された挑戦とは?
沖縄県本部町にある太字沖縄美ら海水族館は、年間340万人以上が訪れる人気施設です。ここを象徴するのが、ジンベエザメが悠々と泳ぐ巨大パノラマ水槽『黒潮の海』です。水槽の前に立つと、本物の海の中に入り込んだような迫力があり、まさに海のダイナミズムを体で感じられます。この体験を作るために、多くの研究者や建築家、技術者たちが想像を超える挑戦を積み重ねてきました。この記事では、その裏側にあった努力や技術、そしてなぜ美ら海水族館が特別なのかをわかりやすく整理していきます。
NHK【午後LIVEニュースーン】地域観光を変えるローカル水族館の秘密〜深海魚・ゼロ距離体験・アート水族館〜(2025年8月28日)
巨大水槽「黒潮の海」を作るために必要だった技術と工夫
太字沖縄美ら海水族館は2002年に開館し、建物面積はおよそ19,000㎡、水槽の総水量はなんと10,000m³以上に及びます。その中でも『黒潮の海』は水量約7,500m³で、世界でも屈指の大規模水槽です。
この巨大水槽を支えるのが、幅22.5m・高さ8.2m・厚さ60cmという巨大アクリルパネルです。これほどのサイズのアクリルは、香川県にあるアクリル加工メーカーが担当し、精密な温度管理のもとで何枚ものアクリルを接着して一枚の巨大パネルに仕上げました。
製造後の課題は、沖縄までの運搬と設置です。アクリルは非常に重く、しかも衝撃に弱いため、輸送や現場での仮置き作業には細心の注意が必要でした。現場ではパネルをわずか数ミリ単位で調整しながら組み立て、防水処理に数か月をかけて完成させたといわれています。
建築設計を担当した太字国建のチームは、巨大水槽の重さ・水圧・台風や地震への強さなど、多くの条件をクリアしなければなりませんでした。沖縄の敷地特性を活かし、建物全体を地形に沿わせて配置し、外から見たときに環境と調和するよう屋根の高さにも配慮。これにより、海を望む景観を守りながら、大規模な施設を成立させました。
ジンベエザメの“謎”に挑む40年の研究
美ら海水族館がジンベエザメに向き合った歴史は約40年前に始まります。当時、ジンベエザメは生態がほとんど解明されておらず、飼育は“夢物語”といわれていました。水の量、餌の種類、泳ぐスピード、遊泳行動、光への反応など、あらゆる部分が手探り状態。
それでも職員たちは、海で出会った個体を観察し、血液検査や体調モニタリングを行い、衛星タグによる回遊ルートの追跡を続けてきました。研究を重ねるうちに「ジンベエザメは噴き上げるように立って餌を食べる」という特性が分かり、その行動を再現できる水槽の形状・水深・水流の検討に繋がっていきました。
実際に水槽では、巨大な体をゆっくり縦にして餌を吸い込む姿を見ることができます。この“立ち食いシーン”は、美ら海水族館ならではの体験であり、ジンベエザメの自然な行動を来館者に伝える大きな魅力です。
さらに、飼育中の個体の健康管理も欠かせません。水温管理、給餌時間の調整、ストレス反応の確認など、長期飼育には細かい配慮が必要です。2021年には、メス個体を海上の囲いへ移して健康状態を見守るなど、研究と実践の両面から取り組んできました。このような地道な努力の積み重ねにより、世界でも珍しい“複数のジンベエザメを長期間飼育できる水族館”として高い評価を得ています。
巨大水槽で生きる生き物たちを守る環境づくり
『黒潮の海』にはジンベエザメだけでなく、ナンヨウマンタや大型の回遊魚、サメ類まで多種多様な魚が泳いでいます。これだけ多くの生き物を同じ空間で飼育するには、環境のバランスづくりが欠かせません。
水槽の水深や幅は、魚が持つ本来の動きやスピードを再現するために細かく調整されています。水中の流れも人工的に作られており、魚が泳ぎ続けられるよう適度な水流をキープ。光の当て方や日周期も管理し、海の明るさを忠実に再現しています。
こうした環境づくりにより、来館者はガラス越しとは思えない自然な光景を目にすることができます。魚が自由に泳ぎ、時に交差し、まるで海の中を切り取ったような空間が完成しています。
巨大プロジェクトを支えた人々の想い
美ら海水族館の挑戦には数え切れないほどの専門家が携わりました。巨大アクリルを製造した香川のメーカー、施設を設計した太字国建、水槽の配管や循環設備を担当した技術者、そして40年以上ジンベエザメと向き合ってきた飼育スタッフたち。
誰一人欠けても、現在の『黒潮の海』は実現しなかったといえるほど、それぞれの専門性と情熱が結集しています。巨大水槽を前にしたときに感じる“海の迫力”は、多くの人が積み上げた努力の結晶なのです。
まとめ
太字沖縄美ら海水族館の『黒潮の海』は、建築技術・アクリル加工技術・飼育研究・環境設計が融合した、日本でも世界でも類を見ないプロジェクトです。ジンベエザメが立って餌を食べる姿、マンタが優雅に舞う姿、光が揺れる水中の景色は、すべて研究と挑戦の積み重ねが生んだ成果です。
この記事は放送前に書かれた内容であり、番組放送後に新しい情報が明らかになれば、改めて加筆・書き直しを行います。
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