手書きはなぜ、いま見直されているのか
このページでは『クローズアップ現代(2026年1月7日放送)』の内容を分かりやすくまとめています。
スマホやタブレットが当たり前になった今、「最近、手書きしていますか?」という問いは、単なる懐かしさでは終わりません。番組が追ったのは、手書きが人の『思考力』『記憶力』『人間らしさ』にどう関わっているのかという最前線の研究と現場の変化です。デジタル全盛の時代に、なぜ世界が再び紙とペンに目を向け始めているのか。その理由を、教育・脳科学・暮らしの視点から深く掘り下げていきます。
世界で進む「手書き回帰」という動き
番組の冒頭で紹介されたのは、スウェーデン・ストックホルムの教育現場です。政府は「読み書きを学ぶために最良の環境は、本・紙・鉛筆である」という考えを打ち出しました。背景には、急速なデジタル化と同時期に起きた学力低下への強い危機感があります。
取材されたマーゲルングス基礎学校では、情報端末を完全にやめるのではなく、使う場面を限定し、手で書く時間を大幅に増やしていました。デジタルは便利ですが、考える土台を育てる段階では、手書きの役割が欠かせないという判断です。
同じ流れはアメリカでも起きています。ロサンゼルス郡の教育方針では、読解力向上との関係が注目され、現在では全米の約半数の州で、手書きが必要になる『筆記体』の授業が義務化されています。デジタル先進国ほど、「書く」という基本動作の重要性を再評価している現実が浮かび上がります。
手書きが脳を動かす「マルチモーダル」の力
スタジオには、糸井重里さんと大塚貞男さんが招かれました。ここで語られたのが、手書きが脳に与える影響です。
手書きでは、指先や手の動きという運動、紙の感触や筆圧の触覚、文字の形や配置の視覚、ペンを走らせる音の聴覚、そして書くテンポや間の時間感覚が同時に働きます。これら複数の感覚を脳がまとめて処理する仕組みを『マルチモーダル』と呼びます。
この同時処理こそが、脳を活性化させ、理解や記憶を深める鍵になります。キーボード入力では省かれがちな感覚情報が、手書きでは自然に積み重なり、考える力そのものを刺激しているのです。
デジタル化が進む学校で起きている変化
日本の教育現場でも、手書きの時間は年々減っています。取材された葛飾区立東金町小学校では、学習用の生成AIや端末を活用する一方で、手書きの時間を確保しづらくなっていました。
そこでこの学校では、去年から週1回、意識的に「手書きの授業」を新設しました。便利な道具を使うからこそ、基礎となる書く力を別枠で育てるという発想です。
一方、街の書道教室では変化が起きています。高田馬場の教室では、生徒数が10年前の約2.5倍に増えました。背景にあるのは、「文字がうまく書けないのでは」という親の不安です。デジタル化が進むほど、逆に『書ける力』の価値が家庭の中で高まっている現実が見えてきます。
MRIが示した「紙に手書き」の記憶力
番組では、記憶と手書きの関係を科学的に検証しました。「スマホを指で入力」「タブレットにペンで入力」「手帳に手書き」という3つの方法で情報を記録し、その後の脳活動をMRIで分析したのです。
研究を行った東京大学のチームは、記憶を思い出す場面で「手帳に手書き」した場合が、最も有利であることを突き止めました。理由は、思い出すための『手がかり』が多いからです。
どこに書いたか、どんな字だったか、書いたときの力加減や余白。こうした情報が記憶と結びつき、思い出す際の道しるべになります。デジタルメモが整理しやすい一方で、紙の手書きには、記憶を呼び戻すための立体的な情報が残るのです。
ジャーナリングが生む「考える余白」
番組後半では、大人たちの新しい習慣として『ジャーナリング』が紹介されました。仕事帰りの会社員たちが、紙とペンだけを手に、黙々と文字を綴ります。目的は文章を整えることではなく、心に浮かんだ考えや感情を、そのまま書き出すことです。
ここで大切なのが、手書きならではの『遅さ』です。タイピングより時間がかかるからこそ、言葉を選び、考える余白が生まれます。その余白が、思考を整理し、自分自身を理解する時間へと変わっていきます。
実際に続けてきた人の中には、気持ちの整理が進み、日々の選択が楽になったと感じる人もいました。手書きは、情報を残す手段であると同時に、自分と向き合うための道具でもあります。
デジタル時代に「手書き」が持つ意味
番組の締めくくりで、「手書きの意味」を問われた大塚貞男さんは『人間らしさ』、糸井重里さんは『わたしの声』と答えました。
効率や速さが求められる時代だからこそ、あえて時間をかけて書く行為には価値があります。手書きは、考える力を育て、記憶を深め、自分自身の声を確かめる行為です。
デジタルと対立するものではなく、補い合う存在として、これからの学びや暮らしの中で、紙とペンは静かに役割を取り戻しています。
まとめ
『クローズアップ現代 最近、手書きしてますか?』は、手書きが単なる作業ではなく、考える力や覚える力と深く結びついていることを、研究と現場の変化から描き出します。
この記事は放送前の内容をもとに構成しています。放送後、具体的な実験結果や専門家の発言が明らかになり次第、内容を書き直す予定です。
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