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NHK 【未来予測反省会】“自動調理器のある未来”はなぜ来なかったのか?60年越しの真相とは|2025年6月5日放送

テクノロジー・科学

「家庭料理はなんでも自動調理器が作ってくれる」って本当に実現した?

2025年6月5日(木)夜20時15分からNHK総合で放送される『未来予測反省会』では、「家庭料理がすべて自動化される」というかつての夢がなぜ実現しなかったのかをテーマにした特集が放送されます。1960年代に描かれた未来のキッチンの姿と、現代の私たちの生活を比べながら、「どうしてこんなにも違ってしまったのか?」という問いに迫る内容です。番組では短編映画『1999年』などの貴重な映像資料も取り上げられ、科学技術の進歩と生活文化のズレに光をあてていきます。
放送後、詳しい内容が分かり次第、記事を更新していきます。

昔の人が信じた“未来の台所”とは?

1960年代、多くの技術者や企業は、21世紀の家庭では料理も掃除も完全に自動化されると本気で信じていました。当時の未来予測では、「キッチンに人が立つ必要がなくなる日が来る」と考えられていたのです。その象徴が、ボタン操作ひとつで調理から配膳までが完了する“夢のキッチンユニット”でした。

1958年の新聞連載漫画『Closer Than We Think』では、主婦が椅子に座ったまま中央に設置された円形パネルで操作し、キッチンが自動で動くという「円形キッチンコントロールセンター」が描かれました
・このキッチンには、電子レンジによる高速調理や超音波による自動食器洗浄機能
が組み込まれているとされ、まるで宇宙船の中のような近未来感がありました
・調理時間の短縮だけでなく、「家事からの完全解放」がその設計思想の中心にありました

さらに、1967年のCBSテレビ番組『The 21st Century』では、アメリカの有名キャスター、ウォルター・クロンカイト氏が登場し、「未来の家庭」についての実演を行いました。この番組では、まるでSF映画のようなキッチン風景が紹介されました。

・メニューをパンチカードやタイプライターで入力することで、冷凍または放射線処理された食材が自動で選ばれ、ロボットによって調理される
・完成した食事は機械のアームが配膳し、食後には使った皿を溶かして再利用できる特殊素材に変形させるというアイデアも登場しました
・このキッチンでは、人の手による調理は一切不要とされ、「手間のない快適な暮らし」が技術によって約束されると考えられていました

当時の背景には、高度経済成長や技術革新への強い期待がありました。また、家事負担が女性に偏っていた時代でもあり、「主婦を家事から解放したい」という社会的な願望も、こうした未来像を後押ししていたと考えられます。

実際に、展示会や科学技術博などでも、これらのキッチンは実物模型として公開され、多くの来場者がその最先端ぶりに驚きました。家庭の未来はテクノロジーによって変わるという希望が、強く語られていた時代だったのです。

しかし現代の私たちの生活を見てみると、当時描かれたような「完全自動化されたキッチン」は、ほとんど一般家庭には存在していません。夢のキッチンは実現しなかったというよりも、私たちの暮らし方や価値観が予想とは違った方向に進んだということが浮かび上がってきます。

ではなぜその未来は来なかったのか?

1960年代に多くの人が思い描いていた「家庭料理が完全に自動化される未来」は、2025年の今もまだ実現していません。その理由には、技術面の限界だけでなく、社会の変化や人々の価値観の揺らぎといったさまざまな背景が関係しています。

まず、技術的な問題としては、家庭料理に必要な調理工程の複雑さがあげられます。食材の状態を見て火加減を変えたり、炒めながら味見をして塩加減を調整するなど、人間の感覚に頼る部分が多く、機械だけで正確にこなすのは今でも難しいのが現状です。

食材の種類や状態によって変化する調理工程への柔軟な対応が困難
調理中の味見や食感の判断を機械が行うにはまだ限界がある
家庭ごとに異なる“味の好み”に完全には対応しきれない

また、社会構造の変化も未来像の実現を妨げる大きな要因です。昭和時代には大家族が一般的でしたが、今は核家族や単身世帯が増え、食事のスタイルも変わりました。一人分の食事をわざわざロボットに作らせる必要があるのかという疑問も生まれています。

核家族化や一人暮らしの増加により、全自動調理器の必要性が薄れた
「調理=家事」から「調理=趣味・癒し」へと価値観が変化
料理が家族やパートナーとのコミュニケーションの場として再評価されている

さらに、現代の私たちは、健康や食の安全性にも強い関心を持っています。自動調理器が便利であっても、何を使ってどんな過程で作られるかが見えにくくなると、手作りに比べて不安を感じる人もいます。

添加物や加工食品への不安から、手作り志向が高まった
「家族の健康を守るには、手作りが一番」という意識が根強い
食材選びから調理までの“見える安心”を重視する人が多い

一方で、現在の自動調理器にも多くの利点はありますが、万能ではありません。

調理中に味を確認して調整できないため、好みの味にならないことがある
対応レシピが限られていて、自由な献立作りが難しい
本体が大きく、キッチンに置きにくいという物理的な問題
使ったあとのお手入れが面倒で、結局あまり使わなくなる人も多い

このように、技術的な未熟さ、生活スタイルの変化、そして“料理にこめられた想い”の重視など、さまざまな要素が重なり合って、「夢のような全自動キッチン」は今も現実にはなっていません。便利さだけで人の心や文化まで自動化することは難しいという、あたりまえのようで見落とされがちな現実が、ここにあるのです。

技術の進化と、今できること

2025年現在、家庭用の調理家電は大きく進化しており、「全自動」とまではいかないものの、日常の調理を大幅に楽にする家電が次々と登場しています。調理初心者でも失敗しにくく、家族分の料理を簡単に作れる機能が搭載された製品が増えています。

たとえば、アイリスオーヤマの「シェフドラム」は、ドラム型の内釜が自動で回転しながら加熱してくれるため、炒め物や煮込み料理を“放っておいても”作ることができます。火加減の調整やかき混ぜ作業も不要で、材料を入れてスタートボタンを押すだけで済むのが特徴です。

加熱ムラを防ぎ、均一に仕上げられる回転加熱構造
炒め物・煮込み・無水料理など幅広い調理モード
食材を入れるだけで調理が始まる“ほったらかし”調理

また、パナソニックのオーブンレンジ「ビストロ」は、スマートフォン専用アプリ「キッチンポケット」と連動して、その日の食材に合った献立をAIが提案してくれます。アプリで操作すれば、火加減も時間も自動で設定され、段取りも一目でわかります。

冷蔵庫の中にある食材からレシピを提案
専用アプリと連動し、献立管理や調理サポートが可能
レンジ内のセンサーで加熱具合を自動調整

さらに、BOTINKITが開発した「Omni」は、13種類の液体調味料をあらかじめセットしておけば、AIがレシピに応じて自動で分量を調整しながら投入し、調理まで行う本格ロボットです。特に中華料理のような高温・短時間調理を安定して再現できる点が注目されています。

調味料の自動投入機能で味の安定性を実現
プロの味を初心者でも再現できる点が評価されている
本格的な炒めや煮込みにも対応する加熱性能

このように、最新の調理家電は、技術によって「時短」「省力」「失敗しにくい」料理を実現しつつあります。以前のように、すべてを自分の手でやらなければいけなかった時代と比べると、確実に“手間は減っている”といえます。

ただし、完全な自動調理にはまだ距離があります。人の手による味見や盛りつけ、そして「今日は何を作ろうかな」と考える楽しみは、今も私たちの暮らしに残されています。技術が支える“半分自動”の時代が、今なのかもしれません。

そもそも私たちは“自動化”を望んでいない?

2025年の今、自動調理家電の技術は大きく進歩していますが、それでも完全な自動化が主流になっていないのは、私たち自身が「料理をすべて機械に任せたい」とまでは思っていないからかもしれません。料理という行為には、単なる“作業”以上の価値があるからです。

たとえば、家族の好みに合わせて味を調整したり、子どもと一緒にお菓子作りをしたりする時間は、料理を通じたコミュニケーションの時間でもあります。機械では再現できない“人と人とのやりとり”や“記憶に残る時間”が、料理にはたくさん含まれています。

料理は家族や友人との絆を深める手段として機能している
「おいしいね」と言い合う体験が、暮らしに温かさを生む
手を動かすことで、愛情や思いやりを伝える手段にもなる

また、料理の途中で感じる香りや、焼き色の変化、ジュウジュウという音など、五感を通じた楽しみも、自動調理では味わえません。これらは、作っている間も楽しいと感じさせる重要な要素であり、料理そのものが“体験”になっているといえます。

香りや音、手触りといった感覚的な喜びがある
時間とともに変化する様子を見ているだけでも楽しい
手間をかけることで、料理への満足感や誇りが生まれる

さらに、料理には“家庭の味”という言葉があるように、個々の家族にしかない調理の工夫や味の伝統が存在します。母や祖母から教わった味や作り方は、単にレシピでは表現できない大切な文化です。すべてが自動化されると、こうした受け継がれる味や手間の工夫が消えてしまう危険もあります。

「母の味」「うちの味」は手作りの中にしか存在しない
調理の工程にこそ、家族の歴史や文化が込められている
機械化によって“味の継承”が途絶える可能性もある

このように、技術が進んで便利になっても、私たちは料理の中に“手間をかける価値”を見出しているのではないでしょうか。ただ楽をしたいわけではなく、自分の手で誰かのために作ることに意味があると感じている人が多いのです。

そのため今の時代には、すべてを代行する完全自動型よりも、必要な部分だけをサポートしてくれる「補助型の調理家電」の方が合っているといえます。便利さと人のぬくもり、そのどちらも大切にしたいという気持ちが、私たちの選択を導いているのです。

放送の注目ポイントまとめ

今回の『未来予測反省会』では、かつての未来像を振り返りながら、今の私たちの価値観や暮らしを再確認する機会になりそうです。料理という日常のテーマを通して、「技術と生活の距離感」や「便利さと豊かさのバランス」といった、深い問いかけがなされると考えられます。

1964年の人々が信じた“夢のキッチン”の映像と実像のギャップ
現代社会の変化がもたらした“料理の再評価”
テクノロジーと人間の関係性の再考
料理を通して見える“人間らしさ”の本質

放送はわずか27分ですが、その中に過去と未来、そして“いま”を見つめ直すためのヒントが詰まっているはずです。未来を想像することの面白さと、それが外れたときの意味を考えるユニークな番組となりそうです。
放送後、詳しい内容が分かり次第、さらに深掘りして記事を更新していきます。

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