なぜエレベーター待ちはイライラするの?脳と時間感覚の不思議を解説
2025年6月13日に放送されたNHK総合「チコちゃんに叱られる!」では、日常生活で誰もが一度は感じたことのある「エレベーター待ちのイライラ」について取り上げられました。信号や電車を待つのとは違って、エレベーターだけがなぜか特別にストレスを感じやすい。その原因を、脳の仕組みや人間の時間感覚から紐解いていく内容でした。番組では専門家の解説をもとに、意外な理由と対策を紹介しており、日々のちょっとした不満が解消できるヒントが盛り込まれていました。
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エレベーター待ちがイライラするのは“体感時間”が長いから
この疑問に答えたのは、千葉大学の一川誠教授。エレベーターの待ち時間がイライラするのは、単に「長く待たされている」からではなく、脳が感じる時間、つまり体感時間が実際よりも長くなってしまっていることが原因だといいます。
人間の脳では、何かをしている間に「パルス」と呼ばれる神経の信号が一定のリズムで発生しています。この信号は、「注意ゲート」という仕組みを通って、脳内の時間を記録する場所に集められていきます。私たちが時間を感じるのは、この溜まった信号の量によって判断されているのです。
この「注意ゲート」は、どれだけ時間に意識を向けているかで開いたり閉じたりします。つまり、時間を強く意識しているとゲートが開き、信号がたくさん流れ込んでしまい、結果として「長く待っている」と感じやすくなるという仕組みです。逆に、何かに夢中になっていればゲートが閉じていて、同じ時間でも短く感じられるということです。
エレベーターには“予測できる情報”が少ない
電車や信号待ちと違って、エレベーターには明確な「残り時間」や「到着予定時刻」の表示がありません。駅では発車時刻が電光掲示板で表示され、信号も残り秒数が点滅することで「もうすぐ終わる」とわかります。時間の終わりが見えると、人は安心して待つことができるのです。
しかしエレベーターは、今どの階にいて、あと何秒で来るかが表示されていないことが多く、先の見通しが立たない不安感を生みます。さらに、エレベーターが途中の階で止まって誰かが乗り降りすると、「やっと来る」と思っていた期待が外れてしまいます。この“裏切られた感覚”が、さらにイライラを増幅させてしまうのです。
また、待っている間に周囲に変化が少ないのも問題です。電車のホームや信号のある交差点には、他の人の動きや風景、音の情報が多く、脳が時間から意識をそらしやすい環境があります。それに比べて、エレベーター前のホールは静かで、目の前にはただの扉が閉まっているだけ。視覚的にも刺激が少ない場所では、時間に集中しやすくなり、体感時間が長くなってしまいます。
イライラを減らす工夫も紹介
番組では、こうした「エレベーター待ちのイライラ」を和らげるために、実際に導入されている工夫も紹介されました。
・エレベーターホールに鏡を設置すると、待っている人が自分の身だしなみをチェックするなどして、時間への意識が薄れる
・デジタル表示や映像モニターをつけると、視覚的に注意をそらす効果がある
・壁に絵やポスターを貼ることで、自然に目が時間以外の情報に向き、待ち時間が気になりにくくなる
・音楽やラジオを流すことで、音に意識が向きやすくなり、聴覚的な分散が生まれる
これらの対策は、脳が時間以外のことに気を取られるようにすることで、体感時間を短くするという考え方に基づいています。
さらに、番組ではサービスエリアにある挽きたて珈琲の自動販売機の例も紹介されました。この自販機はコーヒーを作る工程がガラス越しに見えるようになっており、カップが出てくるまでの数十秒間、人々は「見て楽しむ」ことができます。このように、作業の過程が見えるという仕掛けも、時間を感じにくくするのに役立っているのです。
同じく、病院や施設などでBGMやラジオが流れている理由も、ただの雰囲気づくりではなく、患者や来客が待ち時間をストレスなく過ごせるようにするための工夫であることがわかりました。
“時間の感じ方”を知れば、日常も少し快適に
今回の放送では、エレベーター待ちのイライラという身近な体験を、脳の働きや時間感覚という科学的な視点から解き明かしました。ただ「待っているだけ」の時間がストレスになるのではなく、その待ち方や周囲の環境が大きく影響していることがわかる内容でした。
この知識を知っていれば、今後エレベーターを待つときも、「なぜイライラしているのか」を冷静に受け止められるようになります。身近なストレスに向き合うきっかけとして、視覚や聴覚の刺激を意識的に取り入れてみることが、心を落ち着けるポイントになるのかもしれません。日常の小さなイライラが、少しでも軽くなるヒントになる回でした。
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