広島港から世界へ!ソース・針・木材が海を越える
NHKの人気シリーズ「コンテナ全部開けちゃいました!」、今回の舞台は広島県の広島港でした。番組では、日々世界中へと出入りするコンテナの中身を実際に開けて、日本と世界をつなぐモノの流れを紹介。出演者は千葉雄大さんと槙野智章さん。今回はロサンゼルス・釜山・ロッテルダム・寧波舟山といった国際港とのつながりを通じて、日本の「ものづくり」と「物流」の力を感じさせる内容でした。
アメリカへ運ばれるのは広島名物の味
広島港から出発するコンテナの中には、アメリカ・ロサンゼルス港へ向かう便に、お好み焼き用のソースがたっぷり積まれていました。このソースは、広島では欠かせない調味料のひとつで、甘さとコクのある味わいが特徴です。番組では、輸出される量が10年前の3倍以上に増えていることが紹介され、今や世界で広島の味が楽しまれていることがよく分かりました。
海を越えて人気上昇中のお好み焼きソース
ロサンゼルスのスーパーマーケットでは、日本食コーナーに並ぶ定番商品のひとつとしてこのソースが扱われており、地元の人たちにも受け入れられつつあります。実際にアメリカのレストランなどでは、お好み焼きだけでなくチキンやハンバーガーにかけて楽しむ人も増えているとのことです。こうした食べ方の広がりも人気の背景にあります。
日本の味がアメリカで知られるようになった理由として、訪日外国人観光客が増えたことが挙げられます。旅行中に味わった料理を母国でも再現したいというニーズが高まり、お好み焼きやそのソースが注目されるようになりました。特に広島のお好み焼きは、ボリューム感や見た目のインパクトもあって、海外の人からも人気を集めています。
さらにこのソースは、大手メーカーがアメリカ現地の流通業者と提携しているため、安定した供給が可能となっており、売り場の確保もしやすいという点も輸出拡大の追い風となっています。港から始まるこのグローバルな流れは、まさに広島の味が世界で愛されている証です。
中国から届いたハロウィーングッズと100円ショップ商品
続いて登場したのは、中国・寧波舟山港から広島港へ届いたコンテナの中身です。開けてみると、中にはハロウィーンの仮装グッズがずらり。カボチャ型のバケツやマント、仮面など、イベントシーズンを盛り上げるアイテムがたくさん詰め込まれていました。それに加えて、およそ50種類以上の100円ショップ向けの商品も一緒に運ばれており、そのボリュームはコンテナ全体の約8割にも及びます。
自動倉庫が支えるスピード配送
これらの商品はすべて、東広島市にある最先端の自動倉庫に集められます。この倉庫は天井まで届くような高い棚とロボット搬送システムを備えていて、商品がどこにあるのかを自動で把握し、効率よくピッキングと仕分けが行われます。そのため、店舗からの発注に対して中1日での配送が可能となっています。
この施設は、中国・四国地方にあるおよそ500店舗の100円ショップを支えており、日用品や季節商品が毎日のように出荷されています。特にハロウィーンの時期には、人気アイテムが店頭に並ぶスピードが重要になるため、こうした流通体制が大きな力となっています。
広島がルーツの100円ショップ文化
番組では、立教大学の郭教授による歴史の紹介もありました。それによると、日本の100円ショップ文化の始まりは1972年、広島の露天商が「すべて100円で販売する」スタイルをとったのがきっかけだったそうです。当時のアイデアが、今や国内外に広がる一大業態へと成長したというのは驚きです。
今や海外から届く商品と国内の物流システムが連携し、毎日当たり前のように手に入る100円アイテム。その背景には、港と倉庫、そして広島の歴史がしっかりつながっていることが、今回の放送でよく伝わってきました。
ドイツ向けは最先端の医療用針
広島港からヨーロッパへ向かうコンテナの中には、医療用の注射針が慎重に梱包されていました。送り先はドイツ・ロッテルダム港。この注射針は、広島県三次市にある専門工場で製造されていて、年間約3億6000万本という膨大な数を出荷しています。見た目は小さいですが、そこには繊細な技術と長年の開発努力が詰まっています。
刃物のように切り込む先端加工
この針の大きな特長は、「刺す」のではなく、まるで刀のように“切り込む”構造になっていることです。皮膚に触れる部分が非常に鋭く仕上げられており、突き刺すのではなく切りながら入ることで、針が入る時の痛みを軽減することができます。特に透析や治療で頻繁に針を使用する患者にとっては、この設計が大きな負担の軽減につながります。
工場では、用途に応じて異なるサイズや仕様の針を製造しており、検品もすべて専用機器を使って行われています。品質管理は非常に厳しく、製品のひとつひとつが厳密な検査を経て出荷されます。
ドイツで高まる日本製針への信頼
このような高精度な針は、医療技術の進んだドイツでも高い評価を得ており、特に透析治療や血管への処置が必要な場面で重宝されています。その結果、この5年間でドイツへの輸出額は2倍以上に増加。今では重要な輸出先のひとつとなっています。
広島で生まれた最先端の医療機器が、世界中の医療現場で使われているという事実は、日本のものづくりの力をあらためて感じさせてくれる内容でした。物流の裏側には、こうした人の命を支える技術も詰まっているのです。
韓国へ向かうのは木造住宅のパーツ
広島港から韓国・釜山港へ輸出されるコンテナに詰まっていたのは、日本の木造住宅に使われる木材のパーツでした。使用されていたのは、杉やヒノキといった国産の木材。これらは「プレカット材」と呼ばれ、工場であらかじめ加工されているため、現地では図面に沿って組み立てるだけで家が建てられる仕組みです。
一戸建て志向が生まれつつある韓国の住宅事情
韓国では、国土の広さや都市部の人口密度からマンションやアパートが主流となっています。しかし近年、郊外や地方都市では自然を感じられる暮らしを求めて、一戸建て住宅に注目する人が増えているとのこと。中でも日本式の木造住宅は「落ち着きがある」「断熱性が高い」といった点で関心を集めています。
朝鮮戦争後に森林資源の多くを失った韓国では、木造建築の技術や素材の確保が課題でした。そこで、加工済みの木材を日本から輸入し、現地でスムーズに建てられるプレカット住宅が支持されるようになっています。
木材輸出が地域の林業に新たな活力を
プレカット工法は、工場での加工精度が高いため、建築現場での手間が大幅に省けるのも特徴です。また、日本の林業では戦後に植えられた杉やヒノキが伐採の時期を迎えていることから、こうした輸出は国内の森林資源の活用にもつながっています。
番組では、韓国・龍仁市へ向かう実際のコンテナが紹介されており、プレカット材が整然と積み込まれる様子や、現地で住宅として仕上がる工程も映し出されました。地域の林業、住宅産業、国際交流が結びついた、まさに広島港発の新しい輸出のかたちとして印象的なエピソードでした。
港から世界へと飛び立っていく様々な日本の製品たち。今回の広島港編では、地元の味・工業製品・日用品・住宅資材と幅広いジャンルの輸出入が紹介されました。ひとつのコンテナが、実はたくさんの物語を運んでいることに気づかされる回でした。次回の舞台がどの港になるのかも楽しみです。
小学生でも楽しく学べる!物流をテーマにしたおすすめの本

ここからは、私からの提案です。物流というと難しそうに聞こえますが、絵本や図鑑を使えば、子どもでも分かりやすく学ぶことができます。ここでは、物流の仕組みや仕事をテーマにした小学生向けの本や図鑑を3冊ご紹介します。いずれも楽しいイラストやしかけがあり、読んでいるうちに自然と物流の流れや働く車、船の役割などが頭に入ってきます。
『うんこドリル:海の物流』
この本は、日本郵船(NYK)と文響社が共同で制作した学習用ドリル形式の参考書です。「うんこドリル」シリーズならではのユーモアとわかりやすさが特徴で、海を使ったモノの流れ、貨物船のしくみ、港での作業などがやさしく学べる内容になっています。特に、船でモノを運ぶという行為がどのような工程を経て行われているかを、イラストと短文で具体的に解説しており、小学校低学年から中学年におすすめです。2024年には秋田県内の公立小学校へも寄贈され、学校教育の現場でも活用されています。
『Freight Train(貨物列車)』
アメリカの絵本作家ドナルド・クルーズによって描かれたこの作品は、1978年に出版されて以来、長年愛されている絵本です。色とりどりの貨車が並んだ貨物列車が走っていく様子を、流れるような線と色彩で表現しており、視覚的な楽しさの中に、貨車の種類や積み荷の違いを理解できる工夫が詰まっています。文章はシンプルですが、動きのある構図や繰り返しのリズムが子どもを引きつけ、物流の初歩に自然と親しめるようになっています。
『Work Vehicles: A Pop‑Up Book(働く車のしかけ絵本)』
この絵本は、港や建設現場などで働く車をテーマにしたしかけ絵本で、トラックや重機、コンテナを運ぶ大型車両などを、ページをめくるたびに立体的に体感できるよう作られています。飛び出す構造を通じて、どんな仕事をしているのか、どんな順番で作業が進むのかを目で見て理解できる点が特徴です。日本語版も販売されており、文字が読めない年齢の子どもでも楽しめる工夫がされています。物流や働く車に興味を持ち始めた小学生にぴったりの内容です。
これらの絵本や図鑑を通して、子どもたちは「モノがどうやって運ばれてくるのか」「だれが運んでいるのか」など、普段見えない世界を知ることができます。身近な商品がどこから来て、どのように届けられているのかを知ることで、物流への関心が深まり、ものを大切にする気持ちにもつながります。
【参考・出典】
・日本郵船「うんこドリル 海の物流」制作について:https://www.nyk.com/news/2024/20240419_01.html
・Freight Train by Donald Crews(HarperCollins)
・Amazon「Work Vehicles: A Pop‑Up Book」販売ページ
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