職人の技が光る『美馬和傘』の世界へようこそ
徳島県美馬市の「うだつの町並み」を歩くと、色とりどりの和傘が軒先に飾られ、光を透かしてやさしく輝いています。そんな風景を見て「この美しい和傘、どこで作られているのだろう」と感じたことはありませんか?
実はこの和傘こそ、美馬和傘と呼ばれる伝統の工芸品。この記事では、和傘づくりの歴史や職人の技、体験できるスポットまでをわかりやすく紹介します。読むだけで“職人の息づかい”が感じられる内容です。
美馬市で受け継がれる伝統の和傘文化
徳島県西部にある美馬市は、江戸時代末期から明治時代にかけて「阿波番傘」「美馬和傘」として知られた和傘の名産地でした。竹や和紙を使った傘づくりが盛んで、雨傘・日傘・飾り傘など多くの種類が作られていました。
最盛期には200軒以上の工房が立ち並び、年間約90万本もの傘を生産していたといわれています。まさに日本を代表する和傘の一大拠点だったのです。
この産地を支えたのが、地元産の竹と阿波和紙。美馬町郡里地区では良質な竹が育ち、和傘づくりに最適な環境が整っていました。戦後になると洋傘が普及し、職人の数は減りましたが、現在では美馬和傘製作集団が伝統を受け継ぎ、失われかけた技術の保存と復興に力を注いでいます。
一本の和傘ができるまで
和傘の制作には、想像以上に多くの工程が存在します。まず、職人は竹を選び、一本一本を丁寧に割って骨を作ります。竹は真竹・五三竹・黒竹などを使い、用途によって使い分けられます。
次に、傘の要である柄(持ち手)やロクロ(開閉の仕組み)を加工。細やかな調整が必要で、わずかなズレも許されません。その後、骨組みを整えて和紙を張る工程へと進みます。紙を張る位置や張り方で、傘の開き方や張り具合が変わるため、熟練の感覚が求められます。
張り終えた傘には油引きを施し、雨に強く仕上げます。最後に漆塗りや装飾糸での仕上げが行われ、ようやく一本の和傘が完成します。
中でも人気を集めているのが、藍染め和紙を使った日傘や、光を通すと模様が浮かび上がる蛇の目傘タイプ。一本ごとに個性があり、まさに手仕事の芸術です。
伝統の技を体験できる「美来工房」
和傘の魅力を身近に感じたいなら、美馬市伝統工芸体験館「美来工房」がおすすめです。ここでは、ミニ和傘やランプシェードづくりを体験することができます。職人が丁寧に教えてくれるので、初めての方でも安心。完成した作品は記念に持ち帰ることもでき、旅の思い出にもぴったりです。
また、工房では制作の見学も可能。竹を削る音や和紙を張る手の動きなど、普段は見られない工程を間近で体感できます。その静かな作業場には、100年以上続く伝統の空気が流れています。
さらに「うだつの町並み」と組み合わせれば、和傘と歴史的建造物が織りなす景観を楽しむことができ、写真スポットとしても人気です。
五感で味わう“和傘”の魅力
美馬和傘は、見た目の美しさだけではありません。開いた瞬間の竹の音、和紙に当たる雨のやさしい響き、油を引いた紙の香り。手に取ると、素材と職人の息づかいが感じられます。
地元の竹や和紙を使うため、自然との共生も大切なテーマです。和傘づくりは無駄の少ない循環型の工芸であり、現代のサステナブル文化の象徴としても注目されています。
まとめ
この記事のポイントは次の3つです。
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美馬市は江戸時代から和傘づくりで栄えた日本有数の産地。
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一本の傘に数十もの工程と職人の技が込められている。
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「美来工房」で体験や見学ができ、伝統を身近に感じられる。
美馬和傘は、単なる工芸品ではなく“美馬の誇り”そのもの。手にした瞬間に伝わる竹のぬくもりと和紙のやさしさが、きっと心を動かすでしょう。
旅の目的地として、美馬市でこの和傘に触れてみませんか?
参考・出典リンク
・美馬市観光サイト(和傘紹介ページ)
https://www.city.mima.lg.jp/kanko/docs/4100.html
・ツーリズム四国(美馬和傘特集ページ)
https://shikoku-tourism.com/spot/14051
・美馬観光ビューロー(体験・販売情報)
https://mimakankou.or.jp/
・徳島県観光情報サイト 阿波ナビ(美来工房体験案内)
https://www.awanavi.jp/archives/spot/2019
・日本伝統文化振興機構(和傘製作の技術解説)
https://www.jtco.or.jp/japanese-crafts/
・とくしま観光情報サイト T-Tokushima(美馬和傘製作集団紹介)
https://www.t-tokushima.jp/feature/active/umbrella
・にし阿波~剣山・吉野川観光圏公式サイト(阿波番傘の歴史)
https://nishi-awa.jp/
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