大人が“9歳の幸せ”を取り戻す3日間とは?
私たちは大人になるにつれて、忙しさや責任に押され、気づけば“心の遊び場”をどこかに置き忘れてしまいます。2025年11月24日に放送された大人リセット計画『童心キングダム』は、まさにその“忘れてしまった場所”を取り戻す3日間の物語でした。
番組では、大人たちが子どもたちと本気で遊び、語り、向き合う中で、心の変化を科学的に測定。ポジティブ感情に関連する筋肉の動きを数値化することで、幸福度の変化を追跡しました。
この記事では、合宿で起きたひとつひとつの出来事がどのように大人たちの心を少しずつほぐし、“童心”を呼び戻していったのかを、深く掘り下げます。
大人の殻を揺さぶった“スプラッシュケイドロ”
最初のミッションは『スプラッシュケイドロ』。昔ながらのケイドロを、水鉄砲と宝探しの要素でアレンジしたアクティビティです。
大人たちはネズミの被り物を身につけ、子どもたちはネコ役として待ち構えます。大人が水に当たらず宝にタッチできれば勝利というルールですが、体力だけでなく“作戦と会話”が勝敗を分ける仕組みになっていました。
ところが、チームを組んだばかりの大人たちは初戦でわずか5分で敗北。子どもたちから「弱すぎてつまんない」と言われ、大人チームには悔しさが立ち上りました。ここで初めて、大人同士の会話が自然と生まれ、リベンジマッチではつんぢが子どもの裏をかく役割を担い、ちゅみが宝を取りに走る“連携プレー”が成立。見事に勝利をつかみました。
しかし、その輪に入れないままの参加者がりゅうじでした。
幼い頃から否定され続けた経験が心の奥に重く残り、人との距離感がつかめず、輪に入ることに恐怖すら感じてしまう。こうした背景が、彼の行動に影響をおよぼしていました。
夕方のバーベキューでも、他の参加者が子どもたちと自然に関わる中、りゅうじだけは孤立したまま。そんな中、別の参加者・きょうかは「子どもたちの目がキラキラしている」と感じたと語り、子どもたちの存在が大人たちの心に強く働きかけていることが伝わってきました。
1日目の幸福度測定では、ねむとちゅみは上昇。しかし異なる環境では幸福度が下がりやすいと言われる通り、他の参加者は低下しました。
自分の心と向き合う“森の自画像づくり”
2日目のミッション『森で自画像づくり』は、大人にとってもっとも負荷の高い体験だったかもしれません。
枝、葉、石、草…。普段なら目に留めない自然の素材を使い、自分という存在を“形”で表現する作業は、内面を静かに見つめ直す時間でもあります。
最初に子どもたちに作品を見せたのはつんぢでした。
彼は長年芸人として活動してきた中で味わった孤独や、心がすり減るような瞬間について素直に語りました。「辛辣な言葉を浴び続けると、お客さんが神様に見えなくなる」と話す姿に、子どもたちはしっかり耳を傾け、彼の作品を合格と認めました。
ちゅみは、離婚後の生活苦、生活保護に頼らざるを得なかった過去を語りました。
「またどん底に戻るのでは」という恐怖が、仕事を休めない理由になっているという告白は、働く大人のリアルを映し出すもので、彼女の作品も合格に。
続くりゅうじは、最初の作品で「生き生きしていない」「もっと自信を持って」と子どもたちに言われ、不合格。しかし作り直した作品を見た子どもたちから「たまに笑うところが良さとして出ている」と評価され、合格となりました。
これは、他者から肯定される経験が少なかった彼にとって、大きな一歩だったはずです。
午後のおやつタイムでは、子どもたちが用意した食材で自由な餃子を作るというユニークな時間が始まりました。チョコや駄菓子、さまざまな具材を組み合わせて、固定観念を外すことが狙いです。
ここで大きな変化が起きました。
りゅうじが自分から「手伝うよ」と動き、自然に会話の輪へ入っていったのです。
小さな行動の変化は、周りだけでなく、本人にも大きな自信を与えます。
そして夕方。
ラップが好きな小学生のザイロスがつんぢを呼び出し、「28年続けているのがすごい。売れなくても応援してる」と伝えるという心揺さぶられる場面もありました。
また、りおながりゅうじを呼び出し「笑う練習をしよう」と声をかけ、子どもたちのまっすぐな姿勢が大人たちを優しく包み込みました。
2日目の幸福度測定では、りゅうじ以外のほぼ全員が数値上昇。この日は大人たちの表情が明らかに柔らかくなっていました。
夢を紙飛行機にのせて挑む70m
最終日のミッションは『夢を乗せた紙飛行機とばし』。70m先の基地に向けて紙飛行機を飛ばすというシンプルな挑戦ですが、ペアとなった大人と子どもが夢を書き込むことで、飛行機が“大切なメッセージを運ぶ存在”に変わりました。
ちゅみは「普通が一番幸せだと感じた」と語り、忙しさの中で見失いかけていた“日常の尊さ”を取り戻したようでした。
つんぢは「自分がやりたいことをしながら、誰かを救う側にもなれたら」とこれからの働き方について新たな視点を得ていました。
そしてりゅうじは、「3日前より気持ちが明るくなった。もっと人と関わっていきたい」と前向きな気持ちを言葉にしました。この3日間での変化は、彼自身がもっとも実感していたはずです。
飛行機は誰も基地には届きませんでした。しかし、飛ばした瞬間の笑顔や、夢を語るときの表情は、まぎれもなく“童心”を取り戻した証でした。
子どもたちからの表彰が示した“変化の証拠”
合宿の最後は、子どもたちによる表彰式でした。
つんぢは“まあまあおもしろツッコミ賞”を受賞。
大人たちは子どもたちから手作りのトレーディングカードを受け取りました。カードにはそれぞれの素敵なところがメッセージとして添えられており、大人たちは胸を熱くしていました。
最終的な幸福度測定では、ちゅみとたいさくの数値は実験前と大きな差がなかったものの、その他の4人は明確に上昇。とくにりゅうじは合宿後に“表情筋のトレーニング”を始めるなど、自発的に変化へ向かう行動を起こしていました。
童心キングダムで過ごした3日間は、単なる合宿ではなく、大人たちの人生をやわらかく書き換える時間だったのだと実感させられる瞬間でした。
まとめ
『童心キングダム』は、大人が取り戻すべき“心の原点”を教えてくれる番組でした。
水しぶきを浴びながらのケイドロ、森での自画像づくり、自由すぎる餃子の発想、夢をのせた紙飛行機…。そのどれもが、大人の心に積みあがった固い殻をひとつひとつほどいていく“解放の実験”だったと言えます。
そして、子どもたちのまっすぐな眼差しや言葉は、大人が忘れがちな「自分を肯定する力」を思い出させてくれました。
人は誰でも、ほんの少し勇気を出して一歩踏み出すだけで、過去に縛られた心がふっと軽くなるものです。この3日間の物語は、そんな変化のプロセスを丁寧に映し出していました。
大人こそ、童心を取り戻すことで人生がやわらかく開いていく。
そのことを静かに、しかし強く教えてくれる内容でした。
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