“鳥嵐”を生む型破りなコウヨウチョウの秘密とは
アフリカ南部で暮らすコウヨウチョウ(英名 Red-billed Quelea)は『世界一個体数が多い野鳥』として知られています。空を黒く染めるほどの大群が“鳥嵐”と呼ばれるほどですが、その増え方には、一般的な鳥からは想像できない驚きの繁殖戦略があります。この記事では、コウヨウチョウがどのように数を増やし、なぜこれほどまでに成功してきたのかを、放送前に分かっている範囲で整理します。放送後に内容を確認し、改めて書き直します。
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コウヨウチョウとはどんな鳥?
コウヨウチョウ(学名『Quelea quelea』)は、スズメと同程度の大きさで、オスは赤いくちばしと黒い顔の模様が印象的です。アフリカ南部を中心に広い範囲で見られ、サバンナ、灌木地帯、草原など開けた土地を好みます。乾燥に強く、極端な環境変化にも柔軟に適応できるため、厳しい気候の年でも生き残るしたたかさを持っています。
さらに3つの亜種が存在することが知られていて、地域によって模様や体色がやや異なります。これは環境への適応が進んだ証拠で、コウヨウチョウという鳥がどれほど進化上の成功者なのかを物語っています。
鳥嵐を生む“異常なスピード”繁殖
コウヨウチョウが爆発的に増える最大の理由は、とにかく繁殖のスピードが圧倒的だからです。
● 雨が降ったら、その瞬間に繁殖スタート
アフリカでは「雨=命の源」です。雨が降れば草が伸び、草の種子が実り、それが餌になります。コウヨウチョウは、このサイクルを誰よりも敏感に察知していて、雨が降った直後から繁殖行動が一気に始まります。
● 卵の抱卵期間はたった約10日
多くの鳥は抱卵に2週間以上かかりますが、コウヨウチョウは驚くほど短い期間でヒナが孵(かえ)ります。短期間でヒナを生み出せるため、条件が良いときには年間に複数回繁殖することも余裕でこなします。
● 巣立ちも超スピード
ヒナは成長のスピードが非常に速く、未熟な段階でも巣を離れられるようになります。ヒナが巣に長く残らないため、巣を狙う捕食者のリスクも減りますし、親鳥が次の繁殖へ向けて行動できる時間が増えていきます。
巣作りも“手抜き”に見えて実は合理的
コウヨウチョウの巣作りは、驚くほどシンプルで速いです。
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オスが最初に輪っか状の骨組みを作る
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その後、草を編み込んで一気に巣を形にする
一羽一羽の巣は簡素ですが、これが効率性を極限まで高めた設計になっています。
さらに、抱卵方法も特殊で、昼間は太陽光で卵を温めます。
親がべったり卵に付く必要がないため、
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親鳥のエネルギー消費が少なくなる
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危険があってもすぐ逃げられる
というメリットがあります。夜だけ抱卵するという行動は、まさに“合理的すぎる手抜き”と言えます。
大群で生活するメリットが圧倒的
コウヨウチョウは、数千羽どころか数十万羽、時には数百万羽という規模で行動することがあります。
● 捕食者から身を守る
大群で一斉に飛び立つと、捕食者はどの一羽を狙うか判断できなくなり、攻撃は成功しにくくなります。
● 餌の情報を共有できる
群れの中で餌場を見つけた鳥が動くと、それを他の鳥もすぐに追従し、効率よく資源を利用できます。
● 大規模コロニーが一気に繁殖モードへ
雨が降った地域では、巨大な繁殖コロニーが作られます。一つの場所に数万~十万単位の巣がぎっしり並ぶ光景は圧巻で、繁殖成功率も高くなります。
農業に与える影響は深刻なレベル
コウヨウチョウの食べ物は主に草の種子ですが、農地のキビ、ソルガム、ヒエ、トウモロコシなども大量に食べてしまいます。
大群が畑に降り立つとその被害は甚大で、アフリカの農業では“最も対処が難しい害鳥”の一つとして扱われています。移動力が高く、繁殖数も多いため、対策をしてもすぐにまた別の場所から新たな群れがやってきます。
それでも生態を見ると感嘆せざるを得ない理由
コウヨウチョウの生き方は、
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少ない労力で
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できる限り早く
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大量の子どもを残す
という、極限まで研ぎ澄まされた生存戦略です。手抜きに見えて、自然環境の厳しさを考えるととても合理的。鳥の常識をくつがえす、その賢さとしたたかさには驚かされるばかりです。
まとめ
『コウヨウチョウ』が世界で最も多い野鳥と言われるのは、速い繁殖、簡略化された巣作り、危険を避ける群れの力、環境に合わせた移動のうまさがすべて揃っているからです。
この鳥の“ずぼら”とも言える行動は、実は計算され尽くした高度な生き方です。
この記事は放送前のため、番組内のやり取りや具体的な描写は反映していません。放送後、事実に基づいて記事をさらに書き直します。
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