おとな時間研究所「絶品!ご当地の味」
ご当地の味に出会うと、その土地で暮らす人や文化まで少し近く感じられます。今回の『おとな時間研究所(2025年12月11日)』では、東京・二子玉川、鎌倉、鹿児島県鹿屋市という三つの地域で、食を通じてまちを元気にする人たちの姿が紹介されます。ビール、魚、野菜など扱うものは違っても、そこには“地域を愛する人の力”がしっかり息づいています。
東京・二子玉川のクラフトビールが広げる地域の輪
二子玉川の柳小路エリアにあるふたこビール醸造所は、初めて訪れた人でも雰囲気がやわらかく、まちの空気をそのまま包みこんだようなブリューパブです。クラフトビールは種類が多いだけではなく、季節の食材や地域の風景を思わせる香りが特徴です。地域の人が自然に集まる場所になっているのもこの店の魅力です。
運営するふたこ麦麦公社の活動は、ただビールを造るだけではありません。地元の農家や商店といっしょに“地域で育てたものを地域で楽しむ”という地産地消の形を広げています。中でも『世田谷ホッププロジェクト』は象徴的な取り組みで、家のプランターや畑でホップを育てる人たちが増え、その収穫がビールになるという流れが生まれています。自分が育てたホップが入ったビールを飲む瞬間は、地域とのつながりを感じる特別な体験です。
ビールに合わせる料理にも地域の素材が多く使われ、近くの豆腐屋の食材や世田谷産の野菜がメニューに並びます。飲んで食べる時間を通して、訪れた人が自然に“この地域にはこんな食材があったんだ”と気づく場になっています。ふたこビール醸造所は、まさに人と街がゆるくつながる“地域循環の拠点”として存在感を持つ場所です。
鎌倉で広がる“全国漁港の魚”を楽しむ新しい文化
歴史ある街・鎌倉では、観光のイメージが強い一方で、魚と向き合う人たちの新しい動きがあります。全国の漁港から届く魚を販売する取り組みは、鎌倉に暮らす人がさまざまな地域の魚文化を知るきっかけになっています。普段のスーパーではあまり見かけない種類の魚も並ぶため、“何をどう料理しようかな”と考える楽しさが広がります。
この流通を支えるのは大人世代のスタッフで、魚を扱う経験が豊富な人もいれば、魚の魅力に惹かれて活動を始めた人もいます。共通しているのは“魅力を伝えたい”という気持ちです。新鮮な魚を手にしたお客さんが、食卓で小さな驚きを味わえるように、産地の情報や魚の特徴を丁寧に伝える工夫をしているようです。
全国の漁港とつながることで、単なる“仕入れ”ではなく、産地との関係も育まれていきます。漁港で働く人の思いを受け取り、その魚が鎌倉で食べられるまでの流れを大切にしている点が、この取り組みの根っこにあります。魚を食べる喜びが、自然と文化への理解につながる手助けになっているのが印象的です。
鹿児島・鹿屋市で門倉多仁亜さんが広げる“食の交流”
鹿児島県鹿屋市で暮らす門倉多仁亜さんの活動は、“その土地の食と暮らしを味わうことの大切さ”を伝えてくれます。ドイツと日本の文化を行き来してきた経験を持つ彼女は、素材をていねいに扱う料理に魅力を感じ、鹿屋の食材と深く向き合うスタイルへたどり着きました。
鹿屋では野菜が豊富に採れ、海の恵みも近くにあります。門倉さんは、この土地の食材を料理に生かしながら、人が自然に集まる場づくりを行っています。料理教室では、素材の扱い方や季節ごとの楽しみ方を共有し、参加する人同士が自然につながっていきます。家族の食卓に新しい発見が持ち帰られることも魅力です。
さらに、門倉さんが重視しているのは“暮らしそのもの”です。住まい方や時間の使い方を見直すことで、日常の中に心地よさを増やしていく考え方が、鹿屋での活動にも流れています。食はただ空腹を満たすものではなく、周りの風景や関わる人の思いを感じさせてくれる存在――そんな価値を広げる取り組みが進んでいます。
まとめ
それぞれの土地が持つ魅力は、人が動くことで大きく育ちます。二子玉川ではクラフトビールが地域をつなぎ、鎌倉では魚が産地と街の架け橋となり、鹿屋では食材が人の交流を生み出しています。共通しているのは、食を通して“地域がもっと好きになる瞬間”が生まれていることです。
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