令和のゴールドラッシュ 空前の金価格高騰で日本・世界は
2025年12月16日放送のNHK総合クローズアップ現代では、『令和のゴールドラッシュ 空前の金価格高騰で日本・世界は』と題し、世界的に高騰を続ける金価格と、日本で進む新たな金探査の最前線が伝えられました。世界で起きている「金の争奪戦」は、遠い国の話ではなく、かつて金鉱山で栄えた日本の地方にも確実に波及しています。この回では、なぜ今金がこれほど注目されているのか、日本が再び「金の国」として注目される理由、そして地域再生につながる可能性までが具体的に描かれました。
世界で進む金価格の高騰と「令和のゴールドラッシュ」
2025年、金の価格は世界的に過去最高水準を更新し続けています。米ドル建てでは1トロイオンスあたり約3,900〜4,000ドルに達し、年初からの上昇率は50%を超えました。背景にあるのは、世界的な政治不安や経済の先行き不透明感、インフレへの警戒感です。こうした状況の中で、価値が急激に下がりにくい『金』は、安全資産として再び強い存在感を示しています。さらに、各国の中央銀行が金の保有を増やしていることも、価格を押し上げる大きな要因となっています。番組では、こうした世界的な動きが「令和のゴールドラッシュ」と呼ばれる現象を生み出していると伝えました。
なぜ今、日本が金の探索先として注目されているのか
日本は長年「資源の乏しい国」と言われてきましたが、その見方が変わり始めています。理由の一つが、過去に閉山した金鉱山や古い地質データの再評価です。金価格が高騰したことで、かつては採算が合わなかった場所でも、今なら十分に事業として成り立つ可能性が出てきました。そこに目を付けたのが外資系の資源探査会社です。2011年の鉱業法改正により、技術力や資金力を持つ事業者であれば、外国企業でも鉱業権を取得しやすくなりました。この制度変更が、日本を金探査の新たな舞台として押し上げています。
鹿児島・山ヶ野地区で発見された新たな金鉱脈
番組で詳しく紹介されたのが、鹿児島県霧島市の山間にある山ヶ野地区です。ここは江戸時代から国内有数の金鉱山として栄えましたが、戦後、採算が取れなくなり閉山しました。この地域に再び光が当たった理由が、同じ鹿児島県内にある菱刈鉱山の存在です。菱刈鉱山は、鉱石1トンあたりの金の量が世界トップクラスで、年間およそ3.5トンを産出しています。同じ地質帯にある山ヶ野地区にも、地下深くに金が眠っている可能性があると考えられてきました。カナダの資源探査会社の日本法人は、その可能性にかけて調査を行い、新たな金鉱脈を発見しました。
最新の地質調査技術が可能にした金探し
今回の発見を支えたのが、最新の地質調査技術です。ポイントとなったのは「電気の通しにくさ」という性質でした。日本では、電気を通しにくい石英に金が含まれていることが多いとされています。企業は地下の電気的な特性を詳しくデータ化し、有望な地点を絞り込みました。その上でボーリング調査を行った結果、予測通りの場所で金が確認されました。経験や勘だけに頼らず、科学的データを積み重ねて探査する手法が、令和の金探しの特徴です。調査は今も続けられており、より多くの金が眠る鉱脈を探し当てようとしています。
金鉱山復活にかける地域と自治体の期待
山ヶ野地区では、金鉱脈の発見が地域に新たな希望をもたらしています。もし金鉱山が本格的に復活すれば、雇用が生まれ、観光客の増加も期待できます。かつて金で栄えた町が再び注目されることで、過疎化が進む地域の再生につながる可能性があります。自治体も、鉱産税などによる税収増加を見込んでおり、地域経済の新たな柱として期待を寄せています。金の探査は、単なる資源開発ではなく、地域の未来を左右する取り組みとして受け止められています。
鉱業法改正が呼び込んだ外資系企業の参入
現在、日本各地で金の調査を進めている外資系企業は少なくとも3社あり、すべて2011年の鉱業法改正以降に参入しました。あるカナダ系企業は、日本進出から約13年の間に、約380件もの金鉱脈調査の権利を取得しています。改正前は、鉱業権取得にあたって事業者の技術力や資金力は厳しく問われていませんでしたが、改正後は開発能力のある事業者が選ばれる仕組みに変わりました。この制度が、海外の企業にとって日本を魅力的な探査先に変えたのです。
まとめ
クローズアップ現代が描いた「令和のゴールドラッシュ」は、世界的な金価格高騰という大きな流れと、日本の地方、技術、制度が交差する現場でした。資源がないとされてきた日本でも、視点と技術を変えることで、眠っていた価値が掘り起こされつつあります。金をめぐる動きは、これからの日本の地域や産業のあり方を考える上で、重要なヒントを与えてくれます。
NHK【所さん!事件ですよ】令和のゴールドラッシュ 黄金の国ジパング復活!?銀歯も電子基板も“金の山”に変わる日本の技術力|2025年11月1日
家庭で眠る電子機器は、実は大きな資源のかたまりです

ここでは筆者からの追加情報として、家庭で使われずに眠っているスマートフォンやパソコンが、どの程度の資源価値を持っているのかを一般的な事実をもとに紹介します。普段は気に留めることのない電子機器ですが、視点を変えると『都市鉱山』と呼ばれる理由がはっきり見えてきます。
天然鉱山を上回る金の含有量という事実
一般的な自然の金鉱山では、鉱石1トンあたりに含まれる金は約5グラム前後とされています。一方で、スマートフォンやパソコンなどの電子機器をまとめて処理すると、1トンあたり約280〜300グラムもの金が取り出せるといわれています。これは天然の鉱石と比べると数十倍以上の含有量です。山を掘らなくても、すでに私たちの身近な場所に高濃度の金が存在していることになります。
1台では少なくても集まると価値が見える
スマートフォン1台に含まれる金は約0.03〜0.04グラムほどで、見た目にはごくわずかです。そのため、多くの人は価値がないように感じてしまいます。しかし、100台集まれば約3グラム、1000台なら約30グラムになります。金価格によっては数千円から数万円相当の価値になる計算です。家庭の引き出しや棚にしまわれたままの端末が、集まることで現実的な資源に変わります。
金だけではない都市鉱山の本当の価値
電子機器に含まれているのは金だけではありません。銀、銅、プラチナ、レアメタルなど、現代の社会に欠かせない金属が幅広く使われています。これらをすべて合わせた総資源価値は非常に高く、国連の報告では、世界中の電子廃棄物全体が数兆円規模の価値を持つとも指摘されています。日本国内だけを見ても、廃棄された小型家電から回収できる金属量は、天然資源の埋蔵量に匹敵するという見方があります。
まとめると、家庭で使われずに眠っているスマートフォンやパソコンは、一見すると小さな金属の集まりに見えますが、集めて適切に処理すれば、天然鉱山を上回るほどの資源価値を持つ存在です。これがいま『都市鉱山』と呼ばれ、企業や国が注目し、資源確保の対象として動き出している背景になっています。
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