再発しやすい肝臓がんと向き合うために知っておきたい最新治療
このページでは『きょうの健康(2025年12月16日放送)』の内容を分かりやすくまとめています。
肝臓がんは再発しやすい病気として知られていますが、今は治療の選択肢が大きく広がり、長く元気に生活できる時代になってきました。早期発見がなぜ大切なのか、手術や薬物療法にはどんな効果があるのかを知ることで、自分や家族の健康を守るヒントが見えてきます。
肝臓がんの特徴と早期発見が重要な理由
肝臓がんの多くは『肝細胞がん』で、慢性肝炎や肝硬変を背景に発生することが多いとされています。肝臓全体が弱った状態のため、がんを治療しても別の場所に新たながんができやすく、再発率が高いのが特徴です。
初期の肝臓がんは、痛みや体調の変化がほとんどなく、気づかないまま進行することも珍しくありません。進行すると、お腹の張りや痛み、黄疸などが現れることがあります。
そのため、超音波検査やCT、MRIといった画像検査、AFPやPIVKA-IIなどの腫瘍マーカーを使った血液検査による定期的なチェックが重要になります。特に肝炎や肝硬変がある人では、短い間隔での検査が早期発見につながります。
早期に見つかった場合の手術・焼しゃく療法
がんが小さく、数も限られている段階で見つかった場合は、治癒を目指した治療が行われます。代表的なのが手術による肝切除です。最近は体への負担を抑えた手術方法も進歩し、回復が早くなるケースも増えています。
手術が難しい場合には、『焼しゃく療法』が選ばれることがあります。これは、細い針をがんに刺し、熱でがん細胞を壊す治療法で、ラジオ波焼灼術などが知られています。周囲の肝臓への影響を抑えながら治療できる点が特徴です。
これらの治療は、がんを局所的に取り除くことを目的とした方法として位置づけられています。
がんが多い・大きいときに行われる治療法
がんの数が多い場合や、サイズが大きい場合には、肝臓全体の状態を考慮した治療が必要になります。その一つが『肝動脈化学塞栓療法』です。
この治療は、カテーテルを使ってがんに栄養を送る血管をふさぎ、同時に抗がん剤を直接届ける方法です。がんの成長を抑え、進行を遅らせる効果が期待されます。
手術や焼しゃく療法が難しい中等度の肝臓がんに対して行われることが多く、治療の選択肢として重要な役割を担っています。
分子標的薬と免疫チェックポイント阻害薬の効果
近年、大きく進歩しているのが薬物療法です。肝臓がんでは『分子標的薬』や『免疫チェックポイント阻害薬』が使われています。
分子標的薬は、がん細胞の増殖や血管の新生など、特定の仕組みに作用してがんの広がりを抑えます。一方、免疫チェックポイント阻害薬は、体の免疫が本来持つ力を引き出し、がん細胞を攻撃しやすくする治療です。
これらの薬の効果によって、以前は手術が難しかったケースでも、がんが小さくなり手術が可能になることがあります。治療の流れが変わりつつある点が、現在の肝臓がん治療の大きな特徴です。
治療を組み合わせて長く生きる時代へ
肝臓がんの治療は、一つの方法だけで完結するものではありません。がんの状態や肝機能に応じて、手術、焼しゃく療法、肝動脈化学塞栓療法、薬物療法を組み合わせていく考え方が主流になっています。
例えば、薬物療法でがんを小さくしてから手術を行う、手術後に再発を抑えるための治療を続けるといった選択もあります。再発を繰り返しながらも、その都度適切な治療を受けることで、生活の質を保ちながら長く向き合っていくことが可能になっています。
まとめ
『きょうの健康』では、肝臓がんは再発しやすい一方で、治療の進歩によって希望が広がっていることが伝えられる予定です。
早期発見による手術や焼しゃく療法、進行に応じた肝動脈化学塞栓療法、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬を組み合わせることで、肝臓がんと向き合う選択肢は確実に増えています。
番組では、大阪公立大学肝胆膵外科教授 石沢武彰さんが専門的な立場から最新の治療情報を解説し、岩田まこ都さんと大川悠介さんが進行を務めます。
Eテレ【きょうの健康】肝臓がん 早期発見・徹底治療|脂肪肝リスクとALT数値の見逃し注意点|2025年12月15日
肝臓がん検査を考えるきっかけになりやすい背景について紹介します

肝臓がんは、ある日突然見つかる病気というより、長年の生活習慣や持病が積み重なって起こることが多いがんです。そのため、検査を受けるきっかけも、日々の体調や健診結果、これまでの病歴の中に隠れていることがあります。ここでは、実際に多くの人が検査につながりやすい代表的な背景を紹介します。
肝炎ウイルス感染や肝臓そのものの病気がある場合
慢性のB型肝炎ウイルス(HBV)やC型肝炎ウイルス(HCV)に感染している状態では、肝臓の中で炎症が長く続きます。この炎症が何年も積み重なることで、肝臓の細胞が傷つき、肝硬変を経て肝臓がんへ進むリスクが高まります。すでに肝硬変と診断されている人は、肝臓がんができやすい状態にあるため、定期的な画像検査や血液検査が重要になります。また、脂肪肝やNASH(非アルコール性脂肪性肝炎)も、放置すると肝硬変や肝臓がんにつながることがあり、見た目の症状が少ない分、検査の継続が大切になります。
飲酒習慣や生活習慣病が重なっている場合
長年にわたる多量飲酒は、肝臓に強い負担をかけ、脂肪の蓄積や炎症を引き起こします。その結果、アルコール性肝障害から肝硬変、肝臓がんへと進むケースも少なくありません。また、肥満・糖尿病・高脂血症といった生活習慣病があると、肝臓に脂肪がたまりやすくなり、肝臓の働きが少しずつ弱っていきます。これらが重なることで、本人が気づかないうちに肝臓がんのリスクが高まっていることがあります。
健康診断の数値がきっかけになる場合
多くの人が検査を意識するきっかけになるのが、健康診断での異常値です。ASTやALTなどの肝機能の数値が高いと指摘されたり、AFPやPIVKA-IIといった腫瘍マーカーに変化が見られた場合、より詳しい検査へ進むことがあります。超音波検査での異常所見をきっかけに、CTやMRIといった画像検査につながり、まだ小さい肝臓がんが見つかることもあります。数値の変化は小さくても、継続してチェックすることが、早期発見につながります。
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