脂肪肝は静かに進む 肝臓がんにつながる本当の入口
このページでは『きょうの健康 肝臓がん 早期発見・徹底治療「脂肪肝・肝炎の人は要注意」(2025年12月15日放送)』の内容を分かりやすくまとめています。
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるほど、異変があっても気づきにくい臓器です。そのため、脂肪肝や肝炎があっても、日常生活に支障がなければ放置されがちです。しかし、その積み重ねが肝臓がんへとつながる道になることがあります。
この記事では、脂肪肝がなぜ肝臓がんにつながるのか、誰にどんなリスクがあるのか、そして見つかったときに選べる治療までを、番組内容に沿って詳しく整理しています。
脂肪肝が引き起こす肝臓がんの最新事情
脂肪肝は、肝臓の細胞の中に脂肪がたまりすぎた状態です。最初は自覚症状がなく、血液検査で偶然見つかることも多いですが、時間がたつにつれて肝臓に炎症が起こり、少しずつ硬くなっていきます。これが線維化で、さらに進むと『肝硬変』と呼ばれる状態になります。
肝硬変まで進行すると、肝臓がんが発生しやすい土台ができてしまいます。とくに『肝細胞がん』は、こうした慢性的なダメージを受けた肝臓から生じることが多く、日本でも最も多いタイプの肝臓がんです。
これまで肝臓がんは、ウイルス性肝炎や長年のお酒が原因というイメージが強くありましたが、近年は脂肪肝を背景にしたケースが増えています。食生活の変化や運動不足、生活習慣病の増加が重なり、脂肪肝そのものが大きなテーマになっています。
お酒を飲まない人・やせ型の人にも潜むリスク
脂肪肝と聞くと、太っている人やお酒を飲む人を思い浮かべがちですが、実際にはそうとは限りません。体重が標準範囲でも、糖質や脂質を多く含む食事が続いたり、体の中で糖をうまく処理できない状態があると、肝臓に脂肪がたまりやすくなります。
こうした背景で起こるのが『非アルコール性脂肪肝』です。アルコールが原因ではないため、本人がリスクを意識しにくいのが特徴です。
健康診断で示される『ALT』の数値は、肝臓の細胞がどれくらいダメージを受けているかを映します。少し高い程度でも、長く続く場合は肝臓が無理をしているサインです。太っていないから大丈夫、お酒を飲まないから安心、そう思い込まずに数値の変化を見ることが重要になります。
見逃さないための早期発見ポイントとALT数値の重要性
肝臓がんが厄介なのは、かなり進行するまで症状が出にくい点です。痛みやだるさが出たときには、すでに病気が進んでいることもあります。
そのため、早期発見の鍵は検査にあります。腹部エコーは肝臓の状態を手軽に確認でき、血液検査ではALTやASTのほか、腫瘍マーカーが参考になります。
さらに詳しい検査としてCTやMRIが行われ、小さながんを見つける手がかりになります。とくに精密なMRI検査は、まだ目立たない段階の変化を捉えることができるとされています。
ALTはがんそのものを示す数値ではありませんが、肝臓に起きている異常をいち早く知らせる存在です。毎年の健康診断で見過ごさず、前年との違いに目を向けることが、結果的に肝臓がんの早期発見につながります。
肝臓がんと診断された場合の多様な治療選択肢
肝臓がんの治療は、患者一人ひとりで異なります。がんの大きさや数、位置だけでなく、肝臓がどれだけ元気かも重要な判断材料になります。
肝臓を部分的に切除する『肝切除』は、根治を目指せる治療法の一つです。肝機能が保たれていれば、広い範囲を切除することも可能です。
がんが小さい場合には、『ラジオ波焼灼療法』でがんを内部から焼く治療が選ばれることがあります。体への負担が比較的少ない点が特徴です。
手術が難しい場合には、『肝動脈塞栓療法』など、がんに栄養を送る血管を狙って治療する方法もあります。
さらに、分子標的薬や免疫療法などの薬による治療も進歩しており、状態に応じた組み合わせが行われています。最近では、傷を小さく抑える手術方法も広がり、治療の選択肢は確実に増えています。
がんを「光らせて」切除する最新医療と今後の展望
番組で紹介される最新技術の一つが、肝臓がんを『光らせて』確認する手術です。これは、手術中にがんと正常な組織の境目を見分けやすくする工夫で、肉眼では分かりにくい小さながんの見落としを防ぐ目的があります。
こうした技術に加え、画像解析やAIを使った手術支援も進んでいます。治療前の計画がより正確になり、手術中の判断も助けられることで、安全性と確実性の向上が期待されています。
肝臓がんは、医療の進歩によって向き合い方が変わりつつあります。早く気づき、状態に合った治療を選ぶことで、選択肢は確実に広がっています。
まとめ
脂肪肝は気づかないうちに進み、肝臓がんにつながることがあります。お酒を飲まない人ややせ型の人でも例外ではありません。ALTなどの数値をきっかけに肝臓の状態を知り、早い段階で対応することが将来を左右します。
『きょうの健康』では、こうした肝臓がんの最新事情から治療の選択肢までを専門家が解説します。
脂肪肝はなぜ気づかれないまま進んでしまうのか

ここでは、記事本文に補足として加える情報として、脂肪肝が進行するまで自覚症状が出にくい理由を紹介します。脂肪肝は多くの人が知らないうちに進み、気づいたときには状態がかなり進んでいることも少なくありません。その背景には、肝臓ならではの特徴があります。
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれる理由
肝臓は体の中でとても重要な働きをしていますが、痛みを感じる神経がほとんどありません。そのため、肝臓の細胞に脂肪がたまり始めても、痛い、苦しいといった分かりやすいサインが出にくいのです。さらに肝臓は再生能力が非常に高い臓器で、一部が弱っても残りの部分が補いながら働き続けます。このため、かなり脂肪がたまっていても、日常生活では「いつも通り」に感じてしまうことが多いのです。
自覚症状が出るころには何が起きているのか
脂肪肝が進み、炎症が起こると『脂肪性肝炎』と呼ばれる状態になります。さらに時間がたつと、肝臓が少しずつ硬くなり『肝硬変』へ近づいていきます。疲れやすさや、右のあばらの下あたりの重たい感じといった症状が出るのは、この段階に入ってからのことが多いです。つまり、体が「何かおかしい」と感じ始めたときには、肝臓の中ではすでに大きな変化が起きているケースが少なくありません。
健康診断が最初の気づきになることが多い
脂肪肝は、本人の自覚よりも先に、健康診断の結果で見つかることが多い病気です。血液検査で『ALT』の数値が高かったり、腹部エコーで脂肪のたまりが確認されたりして、初めて気づくことがあります。症状が出ないから安心なのではなく、症状が出ないからこそ見逃されやすい、それが脂肪肝の怖さです。だからこそ、毎年の検査結果を比べて変化を見ることが、肝臓を守る大きな手がかりになります。
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