田河水泡の原点
このページでは『おとなのEテレタイムマシン(2025年12月23日放送)』の内容を分かりやすくまとめています。今回放送される『わたしの自叙伝 田河水泡〜のらくろ誕生前後〜』は、日本の漫画がどのように形づくられていったのかを、当事者の視点からたどることができる貴重な番組です。ひとつの作品が生まれるまでの背景には、時代、仕事、生活、そして個人の選択が重なっています。この番組では、そうした積み重ねが静かに語られ、日本の物語漫画の原点に触れることができます。
おとなのEテレタイムマシンとは何かと今回の放送位置づけ
おとなのEテレタイムマシンは、NHKが長年にわたって保管してきた番組アーカイブの中から、今あらためて見てほしい内容を選び、映像や音声を整えて放送するシリーズです。過去の番組をそのまま流すのではなく、現在の視聴環境に合わせて見やすくしている点が特徴です。今回の放送では、1981年に制作された自叙伝番組が取り上げられます。当時の空気感を残しつつ、今の視点で見ても価値が伝わる内容として編成されています。教養番組として、日本文化や表現の歴史を知る位置づけの放送回です。
1981年放送「わたしの自叙伝」が選ばれた理由
『わたしの自叙伝』は、各分野で道を切り開いてきた人物が、自らの人生を振り返るシリーズです。その中でも田河水泡の回は、日本の漫画史を語るうえで欠かせない内容とされています。物語漫画がまだ確立していなかった時代に、どのような仕事を重ね、どのような流れで代表作にたどり着いたのかを、本人が整理して語っています。後から評価を加えた解説ではなく、当事者の回想として残された映像である点が重要です。創作の背景を知る一次的な記録としての価値が、今回の再放送につながっています。
物語漫画の草分けとしての田河水泡の歩み
田河水泡は、日本における物語漫画の草分け的存在として知られています。それまでの漫画が一場面の面白さや風刺を中心としていた中で、物語として読み進められる構成を取り入れました。登場人物が時間の流れの中で成長し、出来事が積み重なっていく表現は、その後の漫画文化に大きな影響を与えています。田河水泡の歩みは、漫画が読み物として広く受け入れられていく過程と重なっています。その仕事の積み重ねが、現在の漫画表現の基礎になっています。
画家志望から落語台本、漫画へと至る転機
田河水泡は、はじめから漫画家を目指していたわけではありません。若い頃は画家を志し、絵の道で身を立てようとしていました。しかし、生活を支えるために新作落語の台本を書く仕事に関わるようになります。落語台本を大衆雑誌に発表する中で、物語を組み立てる力や、読者に伝わる言葉の感覚が磨かれていきました。この経験が、絵と物語を組み合わせる表現へと自然につながっていきます。画家志望という出発点と、落語台本での経験が交わったことが、漫画家としての道を開く転機となりました。
「少年倶楽部」と『のらくろ』誕生前後の舞台裏
転機の先にあったのが、『少年倶楽部』での連載です。ここで誕生したのが代表作『のらくろ』でした。犬を主人公にしたこの作品は、当時の子どもたちに親しまれ、連載を重ねる中で広く知られる存在になっていきます。『のらくろ』は、親しみやすいキャラクターでありながら、物語としての流れや成長の要素を持っていました。その点が、物語漫画として評価される理由の一つです。誕生前後には、雑誌文化や時代背景、創作上の工夫が重なっており、それらが作品の魅力を形づくっています。
まとめ
『おとなのEテレタイムマシン わたしの自叙伝 田河水泡〜のらくろ誕生前後〜(2025年12月23日放送)』は、日本の漫画文化が形づくられていく過程を知ることができる番組です。田河水泡の人生と仕事を通して、『のらくろ』がどのように生まれ、物語漫画が広がっていったのかが見えてきます。
【おとなのEテレタイムマシン】わたしの自叙伝 森繁久彌〜放浪の青春〜|旧満州と昭和俳優の原点|2025年12月16日
雑誌というメディアから見た「のらくろ」の広がり

ここでは、番組本編の内容を補足する形で、「のらくろ」が当時の子ども文化に与えた影響を、雑誌というメディアの視点から紹介します。作品そのものだけでなく、どのような形で子どもたちの手元に届き、日常の中に入り込んでいったのかを見ると、「のらくろ」が持っていた力がよりはっきりと見えてきます。
少年向け雑誌が担った役割
「のらくろ」が連載された『少年倶楽部』は、当時の子どもたちにとって欠かせない読み物でした。雑誌は月に一度決まった日に発売され、子どもたちは次号を心待ちにしながらページをめくっていました。その中で連載漫画として毎回続きが読めるという形は、物語を追いかける楽しさを自然に生み出していました。「のらくろ」は、雑誌という定期的に届くメディアに載ることで、子どもたちの生活リズムの一部になっていったのです。
物語を読む習慣を育てた連載形式
雑誌連載という形は、一話完結ではなく、少しずつ話が進んでいく構成でした。これにより、子どもたちは次の展開を想像し、前の話を思い出しながら読むようになります。物語として漫画を読む習慣が、この時代に広がっていきました。「のらくろ」は、絵を眺めるだけでなく、話の流れを追う読み物として受け止められ、子ども文化の中で漫画の位置づけを大きく変えていきます。
雑誌全体に与えた影響
「のらくろ」の人気は、一作品にとどまりませんでした。読者が増えたことで、雑誌の中で漫画が占める割合が高まり、他の漫画作品も次々と掲載されるようになります。結果として、漫画が雑誌の中心的な存在になり、子ども向け雑誌そのものの性格も変わっていきました。雑誌を通じて広がった「のらくろ」は、当時の子ども文化の中で、漫画が当たり前に楽しまれる土台を作った存在だったと言えます。
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