人の流れで見えてくる京都のもう一つの顔
このページでは『うなぎのぼりLAB 発掘!京都の“B面”(2026年1月2日放送)』の内容を分かりやすくまとめています。
今回の番組が教えてくれたのは、京都の魅力は有名な観光地だけでは語れない、という事実です。携帯電話の位置情報をもとにしたデータ分析によって、人が集まる場所や時間帯が見えてくると、これまで気づかれにくかった“B面”が次々と浮かび上がります。定番から少し外れた場所、時間帯をずらした風景、地元の人が大切にしている日常。この記事を読むことで、混雑の裏側に広がる京都市の新しい楽しみ方が見えてきます。
データが照らす京都のB面という考え方
番組の出発点は、観光客の移動データを使って京都駅や嵐山、祇園、東山といった定番エリアの混雑を可視化することでした。その一方で、時間帯によって人が少なくなる場所や、これまで注目されてこなかったエリアが明確になります。
京都市のウェブサービスでは、混雑予測だけでなく、トイレやコインロッカーの場所まで確認できます。こうした情報がそろうことで、観光は「行き当たりばったり」から「選んで動く」体験へと変わっていきます。今、観光客の流れは中心部だけでなく、郊外へと静かに広がっています。
伏見で急上昇するイベントと学びの拠点
伏見区(京都)で、はっきりとうなぎのぼりの動きを見せていたのが京都府総合見本市会館です。
番組では、朝9時の時点ですでに長蛇の列ができている様子が映され、その理由として、サボテンや多肉植物の展示・販売会が行われていたことが紹介されました。こうした催しは、一般的な観光とは異なり、明確な目的を持った来場者が集まるのが特徴です。
サボテンや多肉植物の愛好家は、珍しい品種や育て方の情報を求めて全国から集まります。そのため、開催日には一気に人が集中し、普段は目立たない場所が一時的に大きな賑わいを見せます。番組内では、この会場で年間およそ200件ものイベントが開催されていることも紹介され、特定の日・特定のテーマによって人の流れが急変する、典型的な京都のB面スポットとして位置づけられていました。
さらに注目されたのが稲盛ライブラリーです。
ここは京セラ創業者である稲盛和夫の思想や経営哲学を学べる企業ミュージアムで、展示資料や映像を通して、その歩みを知ることができます。稲盛和夫の著書は世界で2900万部以上発行されており、番組では大谷翔平選手の愛読書として知られていることも紹介されました。
この施設には国内だけでなく海外からの来館者も多く、年間3万人以上が訪れています。特に目立つのが、中国から訪れる若い経営者層です。観光名所としての京都ではなく、「学びの場」として京都を訪れる人が増えている点は、街が世界とつながる新しいB面を示していました。
同じ流れで取り上げられたのが、ニンテンドーミュージアムや島津製作所 創業記念資料館といった企業ミュージアムです。
いずれも京都発の世界的企業の歴史や技術を体感できる場所で、寺社仏閣とは異なる動機で人を引きつけています。番組では、こうした施設に向かう人の流れが確実に伸びていることが示され、京都観光が「見る」から「知る・学ぶ」へと広がっている様子が伝えられました。
伏見というエリアは、酒蔵や有名神社のイメージが強い一方で、イベント会場や企業ミュージアムを軸にした別の顔を持っています。目的型の来訪が重なり合うことで、静かに、しかし確実に人を集めるB面が形成されていることが、印象的に描かれていました。
山科に広がる寺と現代表現の出会い
山科区(京都)で強い注目を集めていたのが随心院です。
随心院は、小野小町ゆかりの寺として古くから知られていますが、近年になって人の流れを大きく変えたきっかけがありました。それが、襖絵『極彩色梅匂小町絵図』です。この襖絵がSNSで話題となり、とくに2〜3月にかけて来訪者が増えている様子が番組で紹介されました。
この作品を手がけたのは、若きクリエイター集団のだるま商店です。最新のCG技術を取り入れながら、小野小町の生涯や数々の伝説を、細部まで緻密に、そして色鮮やかに描いています。古典的な題材でありながら、現代的な表現によって写真や映像で切り取られやすく、自然とSNSで拡散される流れが生まれました。歴史ある寺院が、現代の感性と出会うことで、新しい来訪理由を持つB面へと変化している様子が印象的に描かれていました。
また、同じく寺院のB面として紹介されたのが、一休宗純ゆかりの大徳寺 真珠庵です。ここでは、長谷川等伯の『商山四皓図』という日本美術史に残る名作が伝えられています。水墨の静けさと深い精神性を感じさせるこの作品は、派手さはないものの、じっくり向き合うことで価値が伝わる存在です。
さらに真珠庵には、『釣りバカ日誌』で広く知られる漫画家・北見けんいちによる『楽園』もあり、現代の表現が同じ空間に共存しています。こうした作品の存在は、寺院が単なる歴史遺産ではなく、今も文化を受け止め続ける場所であることを示しています。
随心院や大徳寺 真珠庵に共通しているのは、古い寺そのものが変わったのではなく、「見せ方」や「重なり」によって人の流れが変わっている点です。伝統的な空間に現代の表現や物語が加わることで、これまで気づかれにくかった山科の魅力がB面として浮かび上がり、静かに、しかし確実に注目を集めていました。
夜に表情を変える京都駅周辺
昼間は観光の玄関口として多くの人が行き交う京都駅ですが、夜になるとまったく違う表情を見せます。
番組では、昼の混雑が落ち着いたあとに現れる「夜の人の流れ」に注目し、駅周辺に広がるB面が追われていました。
終電後にもかかわらず行列ができていたのは、深夜1時まで営業しているラーメン店です。観光客だけでなく、仕事帰りの人や夜遅くに京都へ到着した人たちが集まり、昼間とは別の目的を持った人の波が生まれていました。
また、朝6時から深夜まで通し営業している店も紹介され、時間を選ばず立ち寄れる存在が、夜の京都駅周辺を支えている様子が伝えられました。こうした店は、昼の観光動線とは重ならないため、位置情報データ上でも夜に独自のピークを作り出します。
番組で特に印象的だったのが、豚骨ベースのスープにチャーシュー10枚を豪快にのせた一杯です。見た目のインパクトとは裏腹に、深夜でも食べやすいバランスを意識した味づくりがされており、京都駅の夜を象徴する存在として描かれていました。
さらに紹介されたのが、上七軒(京都)の路地奥にひっそりと佇む中華料理店です。観光客でにぎわう通りから少し外れた場所にありながら、地元の人に長く親しまれてきた店として登場しました。
この店の酢豚は、香辛料やニンニクを使わず、上質な豚もも肉の赤身だけで仕上げるのが特徴です。素材の旨味を引き出すことで、重たさを感じさせない味わいになっており、京都らしい引き算の料理として紹介されました。
また、別の店では皿うどんが名物となっており、具材には九条ネギや湯葉、生麩といった京都ならではの食材が使われていました。一般的な中華料理のイメージとは異なり、土地の食文化と自然に溶け合った一皿が、訪れる人の印象に残ります。
番組を通して伝えられたのは、こうした店々が集まることで育ってきた京都中華という独自ジャンルの存在です。寺社観光が終わったあとの時間帯に、食を目的として人が動き出すことで、京都駅周辺には昼とは別の回遊が生まれています。
夜の京都は静かで何もないわけではなく、時間をずらすことでこそ見えてくるB面が、確かに息づいていることが印象的に描かれていました。
京都の人が教えてくれた本当のB面
京都在住100人への聞き込みでは、一般的な観光ガイドにはあまり載らない、暮らしに根ざした風景が数多く集まりました。
そこに共通していたのは、「見に行く観光」ではなく、「続いてきた時間」に触れる京都の姿です。
象徴的だったのが、賀茂御祖神社(下鴨神社)の御手洗祭です。
土用の頃に行われるこの祭りでは、御手洗池の冷たい水に足を浸し、無病息災を祈ります。観光客向けの演出というより、地元の人が毎年自然に足を運ぶ行事として続いてきました。水の感触や境内の空気そのものが体験であり、静かな参加型のB面として語られていました。
また、桂離宮で毎朝行われているラジオ体操も印象的な例です。
世界的に知られる庭園でありながら、朝の時間帯には地域の人が集まり、体を動かす場所として使われています。特別なイベントではなく、日々の習慣として続いている点に、観光地とは異なる京都の顔がにじんでいました。非公開の時間帯や朝の使われ方こそが、外からは見えにくいB面になっています。
伝統と現代が交わる場として挙げられたのが、京都国際マンガ・アニメフェア(京まふ)です。
寺社や歴史の街という印象が強い京都に、マンガやアニメを目的とした人の流れが生まれ、若い世代や海外からの来訪者が集まります。古都のイメージとは異なる動機で人が集まることで、京都の都市としての幅が広がっている様子が紹介されました。
さらに、一条通の妖怪ストリートでは、百鬼夜行のイベントが行われ、地域ぐるみで通りを盛り上げています。妖怪というモチーフを通じて、商店街の日常と物語が重なり、観光と生活の境界が曖昧になっていく様子が印象的でした。
街角で見かけるいけず石も、京都らしいB面として語られました。
細い路地の入り口などに置かれた石は、狭い道に車が入り込まないようにするための工夫です。注意書きを立てるのではなく、物の配置で意思を伝えるやり方には、長く培われてきた町の感覚が表れています。
こうした声から浮かび上がったのは、有名スポットではなく、暮らしの中に残る行事・習慣・工夫こそが、京都のB面を形づくっているということでした。観光の裏側にある日常の積み重ねが、人を引きつける静かな魅力になっている様子が伝えられていました。
京北と西京に見える郊外の可能性
郊外で特に日本人観光客の増加率が高い場所として紹介されたのが、京北(京都)エリアです。
番組では、中心部の混雑から距離を取りたい人たちの動きが、静かに郊外へ向かっている様子が示されました。京北は市街地から離れており、山歩きや自然散策を楽しめる環境が整っています。観光地を巡るというより、自然の中で過ごす時間そのものを目的に訪れる人が増えており、「人が少ないこと」自体が価値になっているB面として描かれていました。季節ごとの風景の変化や、空気の違いを感じられる点が、リピーターを生んでいる理由として伝えられていました。
一方、西京区(京都)で注目されたのが善峯寺です。
広大な境内を持つこの寺は、春夏秋冬それぞれに異なる表情を見せ、境内の最上部からは京都市を一望できます。にもかかわらず、観光客で混雑しにくい理由として挙げられたのが、唯一の公共交通手段だった路線バスの廃止です。アクセスの不便さが結果的に人の集中を避け、静かな環境を保つ要因になっていました。
番組で印象的だったのは、ここから生まれた新しい工夫です。
従業員の久故さんは、脚を悪くして寺の山道を登れなくなったことをきっかけに、ドローンの操縦資格を取得しました。自分の足で登れなくても、空から景色を楽しむという発想に切り替えたことで、善峯寺の新しい魅力が見えてきます。空撮によって捉えられる伽藍や山の起伏は、地上とは異なる視点をもたらし、「第二の目」として寺の風景を支えています。
さらに、夜の時間帯には、地元NPOがボランティアで制作した竹明かりのライトアップが行われています。境内に並ぶ柔らかな光は、派手な演出ではなく、自然や寺の雰囲気に寄り添うものです。訪れた人は足を止め、静かな時間の流れを感じながら景色を味わいます。
京北と善峯寺に共通していたのは、便利さや派手さとは別の価値です。アクセスの良さではなく、静けさや工夫によって選ばれる場所として、郊外のB面が確かに存在していることが、番組を通して伝えられていました。
京都はまだまだ奥が深い
エンディングで高橋ひかるさんは、知らないだけで京都にはまだ多くの魅力があると語りました。定番を外すことは、京都を否定することではありません。人の流れを知り、時間と場所を選ぶことで、京都府の新しい表情に出会える。
『うなぎのぼりLAB』が描いた京都のB面は、これからの旅のヒントそのものでした。
NHK【うなぎのぼりLAB】金運アップ神社とトランプ像!?人が殺到する“うなぎのぼりスポット”|2024年6月7日
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