秋田の冬を支える“お米のごちそう”へようこそ
寒い季節に恋しくなるのが、ほかほか湯気の立つ秋田名物きりたんぽです。素朴なごはんが職人の手で形を変え、比内地鶏やせりと出会うことで、深い味わいの鍋料理へ生まれ変わります。
このページでは『番組名(放送日)』の内容を分かりやすくまとめています。
本場・大館市で受け継がれてきた技や、家庭で楽しめるアレンジ、さらにはフレンチと融合した進化系レシピまで、きりたんぽの魅力をたっぷりお届けします。
秋田名物・きりたんぽとは?お米が主役の鍋料理の基本
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番組では、食材ハンターの須田亜香里さんが本場の秋田で、きりたんぽの「うまい秘密」を徹底的に取材しました。訪れたのは、秋田県北部にある大館市。忠犬ハチ公のふるさととして知られ、寒さの厳しいこの土地で、温かいきりたんぽ鍋は冬のごちそうとして愛されてきました。
鍋の主役になるのは、ごはんそのもの。秋田を代表する品種「あきたこまち」で作られたきりたんぽは、比内地鶏のだしと野菜のうまみをたっぷり吸い込みます。日本三大地鶏のひとつと言われる比内地鶏は、濃い旨味とコクのある脂が特徴で、スープにすると一気に「お店級」の味になるのが魅力です。
番組では、せりの根、まいたけ、ねぎと一緒に煮込んだきりたんぽ鍋が登場しました。特にせりは根まで使うのが大館流。根のシャキッとした歯ざわりと、独特の香りが、まさに冬の秋田らしさを感じさせる一杯でした。
大館市で受け継がれる手作りきりたんぽと「陽気な母さん」たち
須田さんが訪ねたのは、大館市曲田地区にある体験交流型直売所、陽気な母さんの店。ここで中心的な役割を担ってきたのが、農家の女性石垣一子さんです。
石垣さんたちは、約20年前に仲間とともに直売所を立ち上げ、「自分たちの手で作ったものを、自分たちの顔が見える形で届けたい」という思いで、野菜や惣菜、そしてきりたんぽを販売してきました。今では年商2億円を超える店へ成長し、地域を代表する存在になっています。
番組の加工場では、すべてが手作業。使うのは特別な高級米ではなく、家庭でもおなじみの「普通の米」。炊きたてのごはんを木の箱に入れ、杵でリズムよくつぶしていきます。ここで大事なのが、伝統の技「半殺し」。ごはん粒を完全につぶさず、3割程度粒を残すことで、噛んだ時にごはんの甘みとモチモチ感が同時に感じられるようになるのです。
ほどよくつぶしたごはんは手でまとめ、串にギュッと巻きつけます。厚さはおよそ1センチ。均一に伸ばさないと、焼きムラが出てしまうので、職人さんたちは手の感覚だけで微妙な厚みを調整していました。須田さんも挑戦しましたが、まっすぐ・均一に伸ばすのはなかなか難しそうでした。
昔は囲炉裏でじっくり焼いていたきりたんぽ。今では住宅事情の変化から囲炉裏を持つ家は少なくなり、石垣さんは業者に依頼して「たんぽ専用の焼き器」を作ってもらったそうです。この焼き器で約20分、表面がこんがりきつね色になるまで焼くことで、香ばしさと中のしっとり感が両立した理想のきりたんぽが生まれます。
大館には「たんぽ焼きの手前知らず」ということわざもあると紹介されました。人の焼いたたんぽの焼き加減はよく見えるのに、自分の焼き加減は案外わからない、という意味で、「他人の欠点はよく見えるが、自分の欠点には気づきにくい」という人生訓も込められています。食べ物の世界から生まれた、ちょっと深い言葉ですね。
焼きあがったたんぽは、冷める前に一気に串から抜きます。冷めるとくっついて抜けなくなるからです。直売所に並んだきりたんぽは、その日のうちに完売してしまうほどの人気。観光客はもちろん、地元の人たちの日常のごちそうとしても愛されていることが伝わってきました。
半殺しの極意と、家で楽しむきりたんぽ鍋&みそつけたんぽ
スタジオには、石垣さんの味を再現したきりたんぽ鍋が登場しました。進行役の天野ひろゆきさんと、NHKアナウンサーの塚原愛さんが、熱々の鍋を前に思わず笑顔になります。比内地鶏のだしと、せり・まいたけ・ねぎの香りに、きりたんぽがしっかりと味を吸い込んだ一杯は、まさに「完璧な一杯」と絶賛されていました。
番組では、家でも実践できるきりたんぽ作りも紹介されました。炊きたてごはんを厚手のビニール袋に入れ、手でギュッギュッとつぶしていきます。「潰しすぎかな?」と思うくらいでちょうどいい、とアナウンサーの山中さん。ここでもやはり「半殺し」のイメージが大切です。
串の代わりには、家庭にある割りばしでOK。ごはんを割りばしに巻きつけたら、ホットプレートを最大火力にして、油をひかずに20分ほどじっくり焼きます。表面が少し焦げ目を帯びてきたら食べごろ。これを一口大に切って鍋に入れれば、家でもきりたんぽ鍋が楽しめるという、うれしいレシピでした。
さらに番組では、石垣さんが「家でやるならこれがおすすめ」と教えてくれた「みそつけたんぽ」も登場。焼きたてのたんぽに、味噌・砂糖・みりんを煮詰めて作った甘じょっぱいタレをたっぷり塗り、もう一度軽く焼きます。香ばしいごはんと、トロッとした味噌ダレの相性は抜群で、おやつにも、お酒のつまみにもなりそうな一品でした。
ここで少しだけ豆知識として、秋田県の郷土料理の背景にも触れられました。きりたんぽ鍋は、猟や山仕事で山奥に入る人たちが、炊いたごはんを持ち運びやすい形にしていたのが始まりとも言われます。山で採ったきのこや野菜、鶏肉と煮込めば、体の芯から温まる栄養満点の鍋。寒さの厳しい地域だからこそ、米を無駄にせず、おいしく食べ切る知恵として受け継がれてきたのです。
秋田×フランス!きりたんぽグラタンという進化系グルメ
番組後半では、伝統を大事にしながらも、現代の食卓に合わせて進化したきりたんぽ料理も紹介されました。山中アナウンサーが向かったのは、秋田市の中心部、秋田駅近くのホテルにあるレストラン。ここでは、秋田とフランス料理が出会った「きりたんぽグラタン」が提供されていました。
グラタン皿の中には、ホワイトソースとチーズ、その下にきりたんぽがゴロゴロと入っています。比内地鶏のスープをベースにしたソースを合わせることで、フレンチのコクと和のだしのうまみが重なり合い、ひと口ごとに新しいおいしさが広がるよう工夫されていました。
フランス料理は、ソースと素材の組み合わせで無限のバリエーションを生み出す料理文化です。そこに、米が主役のきりたんぽが加わることで、ラザニアやドフィノワ風のじゃがいも料理とはまた違う、「日本のお米ならではのグラタン」として再解釈されているのが印象的でした。秋田のホテルやレストランでは、こうした地元食材を生かしたフレンチが増えており、観光客が「旅先でしか味わえない一皿」として楽しめるようになっています。
カップきりたんぽと秋田おでん しょっつる仕立ての新世界
さらに番組では、もっと気軽に楽しめる「インスタント系」のきりたんぽも紹介されました。土産物コーナーに並んでいたのは、カップ麺のような見た目の「カップきりたんぽ」。お湯を注ぐだけで、ミニサイズのきりたんぽと具材が入ったスープが味わえる商品です。
フレーバーも、キムチチゲ風、ブイヤベース風、おしるこ風とバラエティ豊か。キムチチゲ風はピリ辛スープにきりたんぽが入ることで、韓国のトッポギとはまた違う、やさしいお米の甘さが楽しめます。ブイヤベース風は魚介のだしと米の相性を試す一杯。おしるこ風は、細長いきりたんぽを和スイーツとして楽しむアイデアで、「鍋の具」というイメージを超えた、新しい食べ方を提案していました。
もうひとつの進化系として紹介されたのが、秋田の魚醤「しょっつる」を使った秋田おでんです。透き通ったスープからは、魚醤ならではの深いコクと香りが立ちのぼり、その中に、こっそり入っているのが「きりたんぽ袋」。もち巾着のような形をした袋の中にきりたんぽが入っていて、噛むとスープをじゅわっと吸ったお米があふれ出ます。
おでんで温まったお客さんが、そのままきりたんぽ鍋も追加注文してしまうことも多いそうで、「名物が名物を呼ぶ」うれしい連鎖が生まれている、と番組では伝えていました。
背景として、秋田県内では「本場大館きりたんぽまつり」など、きりたんぽをテーマにしたイベントが毎年開かれており、学校の授業や体験学習でもきりたんぽ作りが取り入れられています。観光客向けだけでなく、地元の子どもたちにも、自分たちの郷土食としてちゃんと伝えていこうという動きが広がっているのです。
まとめ:きりたんぽが教えてくれる秋田の米文化とあたたかさ
今回の放送では、きりたんぽ鍋という「完成形」のおいしさだけでなく、その裏側にある人の暮らしや思いが丁寧に描かれていました。炊きたてのごはんを「半殺し」にして、一本一本ていねいに焼き上げる農家のお母さんたち。比内地鶏やせりの根、まいたけと組み合わさって、一椀の中に秋田の自然と文化がぎゅっと詰まっていること。
さらに、ホテルの「きりたんぽグラタン」や「カップきりたんぽ」、「きりたんぽ袋」の入った秋田おでんなど、次々と生まれている進化系の姿からは、伝統を守りながらも、時代に合わせて柔軟に変わっていく秋田の食文化の力強さが伝わってきました。
寒い季節に湯気の立つ鍋を囲みながら、家族や仲間と笑い合う時間。そこには、ただお腹を満たすだけではない、「人と人をつなぐ料理」としてのきりたんぽの魅力があります。番組をきっかけに、「一度本場のきりたんぽを食べてみたい」「家で作ってみたい」と感じた方も多いのではないでしょうか。
お米が主役の鍋料理、きりたんぽ。秋田の冬を支えてきたこの一皿は、これからも形を変えながら、たくさんの食卓をあたため続けていくはずです。
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