- 「安心できる老後はどこに」
- 数字で見る物価高と年金のギャップ 12.9%と8.5%の意味
- 池袋で見た「食料支援の列」 年金だけでは暮らせない高齢者たち
- 卵1.5倍・米1.9倍・牛乳1.4倍 山崎美津江さんの家計簿が語る現実
- 月6万6000円の国民年金 78歳男性がカップ麺に頼る暮らし
- 板橋区・東京都健康長寿医療センター研究所が追う“低栄養”のサイン
- 高齢者のBMIが示す「低体重」増加と、その健康リスク
- 社会保障の専門家・藤森克彦が語る、公的年金の役割と限界
- 浅岡大介が解説する年金生活者支援給付金制度とは何か
- 東京・荒川区の「シニア食堂」 300円の昼食が守る栄養とつながり
- 高齢者が賃貸に入りにくい現実 立川市の居住支援法人の相談現場
- 居住支援法人という仕組み 住まいを失いかけた人をどう支えるのか
- 神奈川県三浦市社会福祉協議会の高齢者向けシェアハウスという選択肢
- 「たすけあいのいえ みうらん家(ち)」が目指す“看取りまでの安心”
- スタジオトーク:「防貧」と「救貧」 二つのキーワードが示すこれからの年金像
- 若い世代に広がる年金不安 老後の安心を社会全体でどうつくるか
- 食費を守る“栄養を落とさない買い方”を紹介します
- 気になるNHKをもっと見る
「安心できる老後はどこに」
「首都圏情報 ネタドリ!『安心できる老後はどこに 〜超高齢社会・物価高の中で〜』(2026年2月27日放送)」は、ふだん何気なく過ぎていく日常の裏で、静かに追い詰められている高齢者の暮らしを正面から映しました。
テーマはシンプルです。
物価高と、伸びきらない年金。
そのはざまで、食べることと住むことすら不安定になりつつある高齢者たちの「いま」を、カメラは都内と神奈川県で追いかけました。
番組の軸は、食の危機・住まいの危機・そして年金制度のこれからという三つです。
それぞれの場面で登場する人たちの表情が、「数字だけでは見えない現実」を伝えていました。
数字で見る物価高と年金のギャップ 12.9%と8.5%の意味
番組が最初に示したのは、冷たい数字でした。
この5年間で、消費者物価指数は12.9%上がっています。
一方で、公的年金(ここでは主に国民年金・厚生年金全体)の支給額の引き上げは8.5%にとどまっています。
一見すると、どちらもプラスです。
でも、家賃・光熱費・食料品の値上がりが重なっている中で、「年金だけでは足りない」という感覚が、現役世代よりもむしろ高齢者の暮らしに強くのしかかっています。
日本は世界でもトップクラスの超高齢社会です。
高齢化率(総人口に占める65歳以上の割合)はおよそ3割近くに達し、年金だけに頼る人も少なくありません。
そこに物価の上昇が重なると、「ほんの数%の差」が、日々の食事を一品減らすかどうかというレベルの切実な問題になります。
池袋で見た「食料支援の列」 年金だけでは暮らせない高齢者たち
番組が向かったのは、東京・池袋。
ここでは、無料や低価格で食材を配る「食料支援」の場に、たくさんの高齢者が列をつくっていました。
取材した現場では、食料を受け取りに来る人のおよそ7割が高齢者。
もともと仕事をリタイアし、収入の柱が年金だけという人が多い中で、物価高が一気に追い打ちをかけています。
「もらえなかったら、今月はどうしていたか分からない」
そんな声が、列のあちこちから漏れていました。
支援の現場は、単なる「お得なサービス」ではなく、「最低限の食事を確保する最後の砦」になりつつあります。
卵1.5倍・米1.9倍・牛乳1.4倍 山崎美津江さんの家計簿が語る現実
夫と2人暮らしの山崎美津江さん。
番組は、山崎さんの家計簿を見せてもらいながら、どれだけ食料品の値上がりが家計を圧迫しているのかを丁寧に追いました。
数年前と比べて、卵は1.5倍、米は1.9倍、牛乳は1.4倍。
どれも、毎日のように買う「基本の食材」です。
「おかずを減らして、量も少しずつ減らして。
でも栄養のことを考えると、全部は削れないんです」
値上がりしているのは目に見えて分かっていても、完全にはやめられない。
その板挟みの中で、山崎さんはチラシを見比べ、少しでも安い日を狙って買い物をしています。
食費は、節約すればするほど「栄養バランス」との戦いになります。
番組は、山崎さんの台所から、その微妙な綱渡りを映し出していました。
月6万6000円の国民年金 78歳男性がカップ麺に頼る暮らし
もう一人、番組が密着したのが78歳の男性です。
自営業をしてきた男性は、老後の収入の柱が国民年金のみ。
その月額はおよそ6万6000円です。
家賃・光熱費・通信費を払うと、手元に残るお金はわずか。
結果として、食事は安く済ませやすいカップ麺に偏りがちになっています。
「野菜を買いたいけど、高くてね」
そうつぶやきながら、男性はお湯をそそいだカップ麺をすすります。
カップ麺は手軽で安く見えますが、塩分や脂質が多く、長期的には健康リスクも高い食品です。
「今月をどう乗り切るか」と「将来の健康」のあいだで、選びようのない選択を迫られている姿が胸に残ります。
板橋区・東京都健康長寿医療センター研究所が追う“低栄養”のサイン
番組は次に、東京・板橋区にある東京都健康長寿医療センター研究所を訪ねます。
ここは、高齢者の健康長寿をテーマに、医療と老年学の研究を続けてきた機関です。
地域の高齢者およそ400人を対象に、3年ごとに健康状態や生活状況を追跡する調査が行われています。
そのデータから見えてきたのは、「体重が落ちている人が増えている」という事実でした。
一見すると、「体重が減る=ダイエットが成功した」とも見えますが、高齢者の場合はまったく意味が違います。
筋肉や体力が落ち、転倒・骨折・寝たきりのリスクが高まる、危険なサインになることもあるのです。
高齢者のBMIが示す「低体重」増加と、その健康リスク
調査では、高齢者の体格を示す指標であるBMI(ボディマス指数)に着目しています。
一定の数値を下回る「低BMI」の人の割合が、年々増えていることが分かりました。
BMIが低いということは、単に「スリム」というだけでなく、必要なエネルギーやタンパク質が足りていない可能性があるということです。
特に高齢者では、体重が減ると筋肉量も落ちやすく、免疫力低下やフレイル(虚弱)のきっかけになりかねません。
研究所の専門家は、「物価高で食事の量や質を落とさざるを得ない状況が、低栄養を通じて健康状態に影響しているおそれがある」と指摘します。
老後の問題は、お金の話だけでなく、体の中で静かに進む変化ともつながっているのです。
社会保障の専門家・藤森克彦が語る、公的年金の役割と限界
スタジオには、社会保障の専門家である藤森克彦さんが招かれました。
藤森さんは、公的年金や貧困問題を専門とする研究者で、日本福祉大学福祉経営学部の教授も務めています。
藤森さんは、今の高齢者の厳しい実態について「特に単身世帯や、低年金の人たちには、早急な支援が必要」と語ります。
公的年金には、本来「老後の所得を保障する」という役割だけでなく、貧困に落ちる人を減らすという機能もあります。
しかし、非正規雇用の広がりや、国民年金の保険料を払えなかった時期などが重なり、十分な年金額に届いていない人が増えています。
番組では、藤森さんが「今後は、低年金の人への重点的な支援をどう設計するかが大きな課題」と話す様子が紹介されました。
年金の話は、制度の仕組みだけでなく、「どこまで社会全体で支えるか」という価値観の話でもあることが伝わってきます。
浅岡大介が解説する年金生活者支援給付金制度とは何か
スタジオでは、制度の解説役として浅岡大介さんも登場しました。
浅岡さんが取り上げたのが、年金生活者支援給付金制度です。
この制度は、公的年金などの収入やその他の所得が一定基準以下の人に対して、年金に上乗せして支給される仕組みです。
対象は、老齢基礎年金・障害基礎年金・遺族基礎年金の受給者のうち、所得が低い人たちです。
消費税率引き上げに伴う「負担増」を、そのままにしないための対策として始まった制度ですが、「そもそも存在を知らない」「申請方法が分からない」という人も少なくありません。
浅岡さんは、こうした制度があること自体は評価しつつも、「届けるべき人にきちんと届いているか」が今後の課題だと説明します。
東京・荒川区の「シニア食堂」 300円の昼食が守る栄養とつながり
番組は再び現場へ。
今度は、東京・荒川区の取り組みを取材しました。
ここでは、地域の高齢者に向けて「シニア食堂」が開かれています。
週に1回、300円で温かい昼食が食べられる場です。
料理を担っているのは、地元のボランティアのみなさん。
野菜を中心にしたメニューで、栄養バランスを意識した家庭的な献立が並びます。
運営費の一部は区からの補助でまかない、食材は商店街など地域の協力によって集まっています。
単に「安く食べられる場所」というだけでなく、参加者同士が顔を合わせて話せる「居場所」としての役割も果たしていました。
一人で食事をとる「孤食」が続くと、食事量も減りがちです。
こうした食堂は、栄養だけでなく、人とのつながりを通じて心の健康も支えていると言えます。
高齢者が賃貸に入りにくい現実 立川市の居住支援法人の相談現場
住まいの問題も深刻です。
東京都立川市にある、ある居住支援法人には、この1年間で高齢者やその家族から100件以上の相談が寄せられました。
相談の内容は、「高齢の親が一人暮らしできる部屋を探している」「これまでの住まいを出なければならなくなったが、次の部屋が見つからない」といったものです。
高齢者の場合、家賃の支払い能力があっても、大家さんが「もし病気になったら」「もし一人で亡くなったら」といったリスクを恐れて、入居を断るケースがあります。
番組では、具体的な相談の場面を追いながら、「住む場所が見つからない」という不安がどれほど大きいかを映し出していました。
居住支援法人という仕組み 住まいを失いかけた人をどう支えるのか
ここで紹介されたのが、居住支援法人という仕組みです。
居住支援法人は、住宅確保要配慮者――たとえば低所得の人や被災者、高齢者、障害のある人、子どもを育てる世帯など――が、民間賃貸住宅にスムーズに入居できるよう支援するための法人です。
国の「住宅セーフティネット法」に基づき、都道府県が指定します。
主な役割は、家賃債務保証、住宅探しの相談、大家さんとの間に立つ調整、入居後の見守りなどです。
番組では、こうした法人が間に入ることで、「高齢者だから」と入居を断られていた人が、ようやく部屋を借りられたケースも紹介されました。
老後の安心は、「年金額」だけでは測れません。
「安全に住める場所があるかどうか」という、もう一つの大きな柱を支えるのが、この居住支援法人なのです。
神奈川県三浦市社会福祉協議会の高齢者向けシェアハウスという選択肢
番組後半で紹介されたのが、神奈川県三浦市です。
ここで三浦市社会福祉協議会が始めたのが、高齢者向けのシェアハウスの取り組みです。
シェアハウスの入居者は、原則として65歳以上。
身寄りがない人でも入居できるように工夫されていて、職員が定期的に様子を見に来る「見守り」も組み込まれています。
一人で暮らすには不安が大きい。
でも、老人ホームのような施設に入るほど要介護ではない。
そんな「間」にいる人たちにとって、シェアハウスは新しい選択肢になりつつあります。
「たすけあいのいえ みうらん家(ち)」が目指す“看取りまでの安心”
番組では名称まで詳しくは触れませんでしたが、三浦市社会福祉協議会が実際に開設したシェアハウスは「たすけあいのいえ みうらん家(ち)」と呼ばれています。
ここでは、身元保証人がいなくても入居できるのが大きな特長です。
入居者は、緊急連絡先や本籍地、葬儀や納骨に関する希望などを登録し、必要に応じて葬儀費用などを預ける「終活支援」の仕組みも用意されています。
月額の家賃や共益費はできるだけ抑えられていて、敷金・礼金も不要。
共有スペースでは入居者同士が交流できるほか、職員による健康相談や、畑での野菜づくりなども行われています。
「住まい」と「看取り」までを一体で支える――。
こうした取り組みが広がれば、老後に一人で不安を抱え込む人を減らすことにつながります。
スタジオトーク:「防貧」と「救貧」 二つのキーワードが示すこれからの年金像
最後に、スタジオでは「今後の年金制度をどうしていくのか」が議論されました。
藤森さんは、二つのキーワードを挙げます。
一つは「防貧(ぼうひん)」、もう一つは「救貧(きゅうひん)」です。
「防貧」は、人が貧困に落ちる前に、防ぐための仕組み。
安定した雇用や、十分な年金額、住宅政策などがこれにあたります。
「救貧」は、すでに困窮状態にある人を救うための支援。
生活保護、緊急の食料支援、シニア食堂、居住支援法人などが含まれます。
今の日本では、どちらかというと「救貧」の現場ばかりが目立ってしまっています。
藤森さんは、「本来は、防貧と救貧の両方をバランスよく整えることが大切だ」と指摘しました。
若い世代に広がる年金不安 老後の安心を社会全体でどうつくるか
番組の締めくくりでは、若い世代の年金不安にも触れられました。
「自分たちが老後を迎えるころには、年金は本当にあるのか」
そんな声は、もはや珍しくありません。
しかし、年金制度は「世代間で支え合う」仕組みでできていて、今の高齢者を支えるのは現役世代、これからの若者を支えるのは次の世代です。
番組が描いたのは、「かわいそうな高齢者の物語」だけではありませんでした。
・物価が上がり続ける社会で、どうやって老後の基盤を守るのか
・食と住まいを、地域と制度でどう支えていくのか
・防貧と救貧をどう組み合わせていくのか
こうした問いは、いま20代・30代の人たちにも、確実に跳ね返ってきます。
「首都圏情報 ネタドリ!」は、身近な池袋や板橋、荒川、立川、三浦という具体的な土地を通して、「老後の安心はどこから生まれるのか」という大きなテーマを投げかけていました。
読み終えたあと、「自分の町にはどんな支援があるのか」「自分の親世代の暮らしは大丈夫か」と、少し身近なところから考えてみたくなる回だったと思います。
Eテレ【ねほりんぱほりん】高級老人ホームで働く人|富裕層の老後トラブルと裏側を口コミから深掘りして見えた現実|2026年1月30日
食費を守る“栄養を落とさない買い方”を紹介します

食費を少しでもおさえながら、毎日の体を守るために大切なのが栄養を落とさない買い方です。ここでは、身近な食材を使って無理なく続けられる方法を紹介します。
安くて栄養がある定番食材を選ぶ
納豆や卵、牛乳は手頃な価格で買えるうえ、体に必要なたんぱく質やビタミンがしっかり入っています。とくに納豆は保存がきき、卵は料理に使いやすく、牛乳は飲むだけで栄養を補えるため、どれも毎日の味方になります。豆腐やツナ缶も安定した価格で買えることが多く、家計と栄養の両方を助けてくれます。
旬や冷凍の野菜で無駄なく取り入れる
野菜は旬になると値段が下がり、同時に栄養も高くなる性質があります。季節ごとに並ぶ野菜を選ぶことで、自然と栄養をとりやすくなります。さらに冷凍野菜は収穫後すぐに加工されるため、栄養がしっかり残ったまま保存できます。価格が安定しているので、毎日の料理に安心して使えます。
買い物の工夫で食費を守る
買うものをあらかじめ決めておくと、不要な食品に手を伸ばさずにすみます。まとめ買いをするときも、日持ちする食材を中心に選ぶことで無駄を減らせます。家に帰ってから使い切れずに捨ててしまうことがなくなるため、結果として食費を守ることにつながります。
これらはどれも難しい方法ではなく、毎日の買い物に少し意識を向けるだけで始められます。体に必要な栄養をしっかり取りながら、限られた食費を上手に使う工夫として紹介します。
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