温泉の新しい健康効果とは?腸内環境との意外な関係
近年の研究によって、温泉に入ることが体を温めるだけでなく、腸内環境にも影響を与える可能性があることが分かってきました。とくに注目されているのが、入浴による腸内細菌の変化です。人の腸内には約100兆個もの細菌が存在し、体調や免疫、代謝などに深く関わっています。腸内細菌のバランスが整うことは、健康維持にとても重要とされています。
大分県の別府温泉を中心に行われた研究では、健康な成人を対象に温泉入浴の前後で腸内細菌の変化を調べたところ、泉質によって腸内の細菌バランスが変化することが確認されました。特に炭酸水素塩泉(炭酸泉)に入浴すると、善玉菌として知られるビフィズス菌の一種が増える傾向が見られたと報告されています。これは温泉の成分が体の代謝や腸内環境に影響を与える可能性を示す結果として注目されています。
また、泉質ごとに増える菌の種類が異なることも分かってきました。例えば単純温泉では健康に関わる菌が増える傾向があり、硫黄泉などでも別の菌の変化が確認されています。こうした結果から、温泉の成分が体内の微生物環境に働きかけ、健康状態の改善につながる可能性が研究されています。
これまで温泉は「体が温まる」「疲れが取れる」といった感覚的な効果が語られることが多くありました。しかし現在では、温泉入浴が腸内環境を整える可能性という新しい健康効果が科学的に研究され始めています。こうした研究は、温泉を活用した新しい健康づくりや、現代版の湯治文化の発展にもつながると期待されています。
別府温泉の研究で見えてきた炭酸泉の可能性
大分県の別府温泉では、温泉の健康効果を科学的に調べる研究が進められています。九州大学の研究グループは、健康な成人136人を対象に、温泉入浴の前後で体の変化を分析しました。調査では、別府のさまざまな泉質に入浴した後、腸内の細菌バランスがどのように変化するのかを詳しく調べています。
その結果、特に注目されたのが炭酸泉(炭酸水素塩泉)です。一定期間入浴した人の腸内では、善玉菌として知られるビフィズス菌の一種が増える傾向が確認されました。これは温泉入浴が腸内環境に影響を与える可能性を示す結果で、温泉の新しい健康効果として研究者の注目を集めています。
また研究では、泉質によって増える腸内細菌の種類が異なることも分かりました。単純温泉や硫黄泉などでも腸内細菌に変化が見られ、温泉の成分が体の微生物環境に影響を与える可能性が示されています。こうした研究は、昔から語られてきた温泉の効能を科学的に説明する手がかりとして期待されています。
働き盛り世代に人気!現代版「湯治」という癒やし方
昔から日本には、温泉地に長期間滞在して体調を整える湯治という文化があります。本来は1週間から3週間ほど滞在し、温泉に繰り返し入ることで体の回復を目指す療養法として広まりました。江戸時代には農民が農閑期に温泉地へ出かけ、疲れを癒やす習慣としても広く行われていたといわれています。
しかし現代では、長期滞在が難しい人も多いため、数日間の滞在で心身を整える現代湯治や「プチ湯治」という新しいスタイルが注目されています。2泊3日や3泊4日といった短い滞在で、温泉入浴を中心にゆったりと過ごし、ストレス解消や健康づくりを目指す方法です。
特に都会で忙しく働く人たちの間では、自然の多い温泉地で静かな時間を過ごすことで、心と体をリセットできると人気が高まっています。温泉に入るだけでなく、自然の中で散歩をしたり、スマートフォンや仕事から離れて過ごす「デジタルデトックス」も大きな魅力です。こうした現代版の湯治は、観光旅行とは違い、心身のバランスを整える滞在型の癒やしとして広がっています。
新潟の老舗宿で体験する心と体を整える湯治文化
新潟県には、昔ながらの湯治文化を今も大切に守る温泉地が多く残っています。なかでも十日町市の松之山温泉は、日本三大薬湯の一つといわれる名湯で、古くから体調を整える湯治場として知られてきました。塩分を多く含む泉質は体を芯から温める特徴があり、入浴後も長くぽかぽかとした温かさが続くといわれています。
こうした温泉地には、歴史ある老舗旅館が点在しています。昭和初期の木造建築を今も残す宿では、静かな山里の環境の中でゆっくりと温泉に入り、季節の山菜や地元食材の料理を味わう滞在ができます。こうした宿は観光旅行というより、数日間滞在しながら心身を整える“滞在型の温泉体験”として人気があります。
また新潟には、ラジウム泉で知られる栃尾又温泉のように、ぬるめの湯に長時間入る独特の入浴法を受け継ぐ湯治場もあります。体温に近い温度の湯にゆっくり浸かることで、疲労やストレスをやわらげるとされ、昔から療養目的で訪れる人が多い温泉地です。
こうした新潟の温泉地では、忙しい日常を離れてゆっくり過ごす現代湯治のスタイルが広がりつつあります。自然に囲まれた静かな宿で温泉と食事、休息を楽しむ時間は、体だけでなく心まで整える癒やしの体験として注目されています。
フランスに学ぶ温泉医学療法の最前線
ヨーロッパでは、温泉は単なるリラックス施設ではなく、医療の一部として活用されています。特にフランスでは「キュール・テルマル(温泉療法)」と呼ばれる制度があり、医師の処方によって温泉治療を受けることができます。治療は通常18日から3週間ほど行われ、医療スタッフの管理のもとで入浴や水治療、マッサージなどが組み合わされます。
この温泉医学療法は、関節リウマチや呼吸器疾患、皮膚病などさまざまな症状の改善を目的に行われています。ミネラルを豊富に含んだ温泉水を使った入浴やジェット水流、ミスト吸入などの治療法があり、症状に応じて専門プログラムが組まれるのが特徴です。フランスではこうした療法の有効性が認められ、医療保険の対象となる場合もあります。
また温泉地には、医師や看護師、理学療法士などが常駐し、健康管理とリハビリを組み合わせた滞在型の治療が行われています。例えばアルプスの温泉施設では、皮膚疾患や呼吸器の回復を目的とした専門プログラムが用意され、温泉水の成分と水治療を組み合わせた医療的ケアが提供されています。
このようにフランスでは、温泉を健康づくりや治療に活用する医学的な温泉文化が発展しています。温泉の効果を科学的に活用する取り組みは、日本の温泉研究や現代湯治の発展にも大きなヒントを与える存在として注目されています。
寒い季節こそ体験したい温泉の“ホットな価値”
寒い季節になると、体の冷えや疲れを感じる人が増えます。そんな時に注目されるのが温泉です。温かい湯に浸かると体温が上がり、血管が広がることで血流が良くなり、全身に酸素や栄養が行き渡りやすくなります。これにより、疲労回復や肩こりの緩和、体の代謝を高める効果が期待されています。
また入浴によって血行が改善すると、体内の免疫細胞の働きが活発になり、風邪などの感染症に対する抵抗力が高まる可能性もあるとされています。さらに体温の上昇は、細胞の修復を助けるタンパク質の働きを促すともいわれています。
温泉には泉質による特徴もあります。たとえば塩分を多く含む塩化物泉は「温まりの湯」と呼ばれ、体の表面に塩分の膜ができることで熱が逃げにくく、湯冷めしにくいのが特徴です。寒い季節でも体を芯から温めてくれるため、冬に人気の高い泉質として知られています。
このように温泉は、体を温めるだけでなく、血行改善や免疫の働き、疲労回復などさまざまな面で健康を支える力を持っています。寒さが続く時期だからこそ、温泉の持つ本来の価値がより実感できるといえるでしょう。
温泉の新しい健康価値に注目
今回の番組では、健康や癒やしの面から注目されている温泉の新しい可能性が紹介される予定です。別府温泉で進む炭酸泉の研究や、働き盛りの世代に人気が広がっている湯治の魅力、新潟の老舗宿での心身を整える滞在、さらに海外の温泉医学療法など、温泉が持つ多様な価値が取り上げられます。寒い季節に体を温めるだけでなく、体と心を整える方法としての温泉文化の広がりにも注目です。なお、放送内容と実際の番組構成が異なる場合があります。放送後、必要に応じて内容を追記・更新します。
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