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Eテレ【東日本大震災15年特集 ○○の扉、開けちゃいました。復興や災害研究@東北大学】東北大学 災害研究の現場とは 災害科学国際研究所と学生の好奇心が生んだ復興研究|2026年3月9日

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この番組が映したのは「震災後の研究」だけではありませんでした

2026年3月9日放送の「東日本大震災15年特集 ○○の扉、開けちゃいました。復興や災害研究@東北大学」は、復興や災害研究の最前線を追うだけの番組ではありませんでした。

画面の中心にあったのは、もっと身近で、もっと静かなものです。

それは、大学生たちが子どものころに出会った小さな不思議でした。

石がどうしてパリッとはがれるのか。
実験でどうして勢いよく噴き上がるのか。
遠い北の地で暮らす家族は、なぜその生活を受け継いでいるのか。

そんな一見ばらばらに見える興味が、やがて 東日本大震災15年 という大きな節目の中で、復興や災害研究へとつながっていく流れが、この回ではていねいに描かれていました。

番組は、これまでの「科学の扉」から「○○の扉」へと名前を広げて再出発した1回目でもあります。

その最初のテーマが東北大学だったことには、はっきりした意味があります。

東北大学は、東日本大震災を受けて復興と災害研究を学際的に進めてきた大学で、2012年4月には 災害科学国際研究所 を設立しました。ここでは、災害の前の備えから、発生、被害の広がり、緊急対応、復旧、復興、そして次への備えまでを一連の流れとして捉える研究が進められています。

この番組は、そうした大きな研究の話をしながらも、出発点を「個人の好奇心」に置いたところが印象的でした。

研究とは、遠い世界のものではなく、子どものころに感じた「なんでだろう」から始まるものなのだと、やさしく伝えてくれる回でした。

東北大学が背負ってきた「被災地の総合大学」という役割

この回を理解するうえで欠かせないのが、東北大学という場所そのものです。

宮城県仙台市にある東北大学は、震災の被害を受けた東北の中心に位置する総合大学として、震災後の社会と強く向き合ってきました。

番組内容でも紹介されたように、東北大学では被災地の復興と自然災害科学研究の推進に力を入れてきました。

その象徴が 災害科学国際研究所 です。

この研究所は、東日本大震災から1年後の2012年4月に設立され、地震や津波だけでなく、避難、医療、都市、歴史資料、防災教育、地域の再生まで、幅広い分野をつないで研究する拠点として動いてきました。研究所自身も、災害を「起きた瞬間」だけでなく、事前対応から復興、将来への備えまで続く「災害サイクル」で捉えることを大きな柱にしています。

ここで大切なのは、災害研究が理系だけの話ではないということです。

地面や津波を調べる研究もあれば、人の暮らし、地域のつながり、文化、教育を見つめる研究もあります。

番組が「復興や災害研究」とひとまとめに言いながら、その中に石、化学実験、イヌイットの家族といった異なる入り口を並べていたのは、そのためです。

災害は自然だけで起きるのではありません。
自然の変化と、人の暮らしと、社会の仕組みが重なって被害になります。

だからこそ、学問の入口が違っていても、最後に同じテーマへ交わっていくことがあるのです。

この番組は、その交差点に立つ大学生たちを追うことで、研究の広がりをとてもわかりやすく見せていました。

片岩の不思議から始まる地球へのまなざし

番組の中で強く印象に残る題材の1つが、パリッと剥がれる石、片岩 でした。

石と聞くと、ただ固いだけのものを思い浮かべる人も多いかもしれません。
けれど実際には、石にもでき方の違いがあり、割れ方や重なり方にははっきりした特徴があります。

片岩は、地下で強い圧力や熱を受けて変化した変成岩の一種で、鉱物が一定方向に並びやすいため、薄くはがれやすい性質を持つものがあります。
番組で「パリッと剥がれる」と表現された驚きは、まさにそうした地質の面白さに触れる瞬間だったのでしょう。これは、岩石の内部にどんな力が加わってきたのかを考える入り口にもなります。

子どものころに石を手に取って、
「どうしてこんなふうに割れるんだろう」
と思うことがあります。

その何気ない疑問は、やがて地層や地震、山の成り立ち、土地の歴史へとつながっていきます。

災害研究の中でも、地形や地盤を知ることはとても重要です。

地震の揺れ方、崖崩れの起きやすさ、津波の広がり方は、土地の条件によって大きく変わります。

つまり、1つの石に目を向けることは、足元の大地を知ることでもあります。

この回がよかったのは、「石が好き」という気持ちを、単なる趣味のままで終わらせず、地域を理解し、災害と向き合う学びへとつなげて見せたところです。

大きな研究は、最初から社会課題を背負って始まるとは限りません。

目の前の石の手ざわりに心が動く。
その小さな感覚が、未来の研究の入り口になるのです。

アンモニア噴水の実験が教える「見えないもの」を考える力

もう1つ、番組の中で象徴的だったのが アンモニア噴水 の実験です。

理科の実験の中でも、見た目の変化が大きく、子どもでも強く印象に残りやすい題材です。

フラスコの中に入ったアンモニアが水に非常によく溶ける性質を利用すると、内部の圧力が変わり、水が勢いよく入り込んで噴水のように見える現象が起こります。

「どうして急にこうなるのか」
という驚きが、気体、圧力、溶解といった化学の考え方へつながっていきます。

災害研究と化学実験は、一見すると遠いように見えます。

けれど実際には、目に見えない変化を考える力は、災害を理解するうえでもとても大切です。

空気、ガス、水、温度、圧力、流れ。
こうした見えないものの振る舞いを読み解く力は、自然現象や事故の理解にもつながります。

東北大学の 災害科学国際研究所 でも、自然現象を1つの分野だけでなく、さまざまな視点から捉える学際的な研究が重視されています。

番組がこの実験を取り上げた意味は、たぶんそこにあります。

子どものころ、目の前で起きた派手な変化にわくわくした記憶。
その「わかった気がする」「もっと知りたい」が、のちに社会の安全を考える研究の土台になるのです。

復興や防災という言葉は、どうしても重く聞こえます。

でも、その根っこには、理科室で感じた驚きのような、明るい知的好奇心がある。

この回は、そのことをとても自然に伝えていました。

イヌイットの家族というテーマが復興研究につながる理由

番組内容の中で、とくに意外性があったのが イヌイットの家族 という題材です。

遠い北極圏の暮らしと、東北の復興や災害研究がどう結びつくのか。
最初は不思議に感じた人もいたかもしれません。

けれど、人が自然の厳しい環境の中でどう暮らしてきたのかを知ることは、災害や復興を考えるうえでとても大切です。

イヌイットは、カナダやグリーンランドなどの北極圏に暮らす先住民で、寒冷な環境の中で、家族や地域の知恵を受け継ぎながら生活してきました。
食べ物の確保、移動、住まい、季節への対応など、自然条件に合わせた暮らしには、長い時間をかけて磨かれた知識が詰まっています。

災害研究は、災害そのものだけを見る学問ではありません。

人がどんな環境でどう生き延び、どう支え合い、どう地域をつくってきたのかを見る学問でもあります。

たとえば、避難の行動1つを考えるにしても、
家族がどう動くのか、
地域にどんな助け合いがあるのか、
文化や生活習慣がどう影響するのか、
そうした人文社会系の視点が欠かせません。

東北大学の災害研究が文系と理系をまたぐ形で進められているのは、まさにそのためです。

この番組は、イヌイットの家族というテーマを通して、復興とは建物を直すことだけではないと伝えていました。

暮らしを知ること。
人のつながりを知ること。
文化を知ること。

そうした理解の積み重ねが、被災地の未来を考える力になっていくのです。

小さな好奇心が復興研究へ交差していくまで

この回で最も心に残るのは、大学生たちの研究テーマそのものよりも、そこへ至る流れです。

子どものころの興味は、たいてい役に立つかどうかでは始まりません。

なんとなく石が好きだった。
実験が楽しかった。
遠い地域の暮らしにひかれた。

その気持ちは、すぐに「復興のため」「社会のため」という大きな言葉にはなりません。

でも、学びを続けていくうちに、興味の先に社会との接点が見えてきます。

地球を知ることが、土地を知ることにつながる。
化学を知ることが、目に見えない変化を考える力になる。
人の暮らしを知ることが、地域の再生を考えるヒントになる。

番組は、その交差の瞬間を「学問の扉」と表現していました。

とてもよい言葉だと思います。

扉の向こうに何があるかは、最初から全部は見えません。

けれど、開けてみることで景色が変わる。
その先で、自分の興味が社会とつながることがある。

東日本大震災から15年という時間は、被災地にとって長く、同時にまだ途中でもあります。

復興は終わったかどうかで区切れるものではなく、学びながら、受け継ぎながら、少しずつ形を変えて続いていくものです。

だからこそ、この番組が大学生たちの「今」に焦点を当てたことには意味があります。

震災を直接経験した世代。
幼いころに被災地の空気を感じた世代。
その世代が、自分の好奇心を入り口に研究へ進み、地域や社会に返していこうとしている。

その姿は、15年という節目を語るうえで、とても静かで、でも確かな希望でした。

伊沢拓司が案内役だからこそ伝わった学びの面白さ

この回のMCは 伊沢拓司 さんでした。

伊沢さんは、QuizKnockの発起人として知られ、東京大学卒業後も「楽しいから始まる学び」を広く発信してきた人物です。クイズや知識の世界で親しまれてきた人だからこそ、この番組の空気にとても合っていました。

復興や災害研究というテーマは、重くなろうと思えばいくらでも重くなります。

けれど、この回は学びの入口の面白さを失っていませんでした。

それは、案内役が「知ることの楽しさ」をよく知っている人だったからでもあるはずです。

番組のトーンは、大学生たちの努力をただ立派なものとして並べるのではなく、
「この人はなぜここにひかれたのか」
「どんなきっかけで研究へ進んだのか」
という、人間の動きに寄り添っていました。

その視線があったから、見ている側も研究者を遠い存在だと感じにくかったのだと思います。

研究者になる人は、最初から特別だったわけではない。

子どものころの「好き」や「不思議」が続いてきた人なのだ。

そう感じさせてくれる進行でした。

東日本大震災15年の今、この番組が届けた希望

この番組を見終わったあとに残るのは、派手な感動よりも、静かな納得です。

復興とは、壊れたものを元に戻すことだけではありません。

災害の記憶を学びに変え、
学びを次の備えに変え、
その備えを社会へ返していくことです。

東北大学の 災害科学国際研究所 は、まさにその流れを形にしてきた拠点です。東日本大震災の経験から得た知見を、復旧や復興だけでなく、将来の災害への備えへつなげることを使命に掲げています。

そして今回の「○○の扉、開けちゃいました。」は、その大きな研究を、大学生たちの個人的な出発点から描きました。

石。
実験。
家族。
文化。

そんな身近な入口から始まった学びが、やがて被災地の未来と重なっていく。

そこに、この番組らしいやわらかさと強さがありました。

東日本大震災15年 という言葉は重いです。

でも、この回はその重さを、ただ背負うだけでは終わらせませんでした。

小さな好奇心が、社会を支える研究になる。
学ぶことが、誰かの明日につながる。
そのことを、東北の大学生たちの姿でまっすぐに見せてくれたのです。

見終えたあと、「学問の扉」という言葉が少し身近になります。

そして、自分の中にある小さな「なんでだろう」にも、前より少し大事な意味があるように思えてきます。

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