おむつに頼りすぎない介護と排せつケアの工夫
介護では「失敗を防ぐためにおむつを使う」が当たり前と思われがちですが、最近はトイレに行ける力を残す支援が注目されています。
立つ、歩く、座る、ズボンを上げ下げする。こうした動作を続けることは、体の機能だけでなく、本人の尊厳や生活意欲にも深く関わっています。
『あさイチ 尿もれ対策最新情報▽排せつリハビリで生活が変わる(2026年5月20日)』でも取り上げられ注目されています 。
おむつを減らすことだけが目的ではなく、その人らしい暮らしを守るために、介護の考え方そのものが変わり始めています。
この記事でわかること
・おむつに頼りすぎない介護の考え方
・トイレに行ける力を残す工夫
・排せつ記録や声かけの大切さ
・本人の尊厳と介護負担を両立する方法
尿もれ対策最新情報▽排せつリハビリで生活が変わる【あさイチで話題】

(印刷用)
おむつに頼らない介護とはどんな支援なのか
おむつに頼らない介護とは、おむつを完全に否定する考え方ではありません。
体調が悪いとき、夜間に転倒の危険があるとき、移動がむずかしいときなど、おむつが必要な場面はあります。大切なのは、「おむつを使うか、使わないか」の二択ではなく、本人に残っている力を見ながら、できるだけトイレで排せつできる機会を残すことです。
介護の現場では、失敗を防ぐために早めにおむつを使うことがあります。これは安全や介護負担を考えると自然な判断です。ただ、長くおむつ中心の生活になると、立つ、歩く、座る、ズボンを上げ下げする、トイレまで移動するという動作が減りやすくなります。
すると、足腰の力が落ちたり、本人が「もう自分ではできない」と思い込みやすくなったりします。
おむつに頼らない介護が目指すのは、次のような支援です。
・トイレに行ける時間帯を見つける
・移動しやすい環境を整える
・声かけで尿意や便意を思い出してもらう
・できる動作は本人に任せる
・必要に応じてパッドやリハビリパンツを使う
・夜間だけおむつ、日中はトイレ誘導など使い分ける
つまり、排せつを「処理するもの」ではなく、生活を支える大切な行動として見直す考え方です。
『あさイチ 尿もれ対策最新情報▽排せつリハビリで生活が変わる(2026年5月20日)』でも注目されたように、排せつケアは介護の手間だけでなく、本人の自立や尊厳にも関わるテーマです。
トイレに行ける力を残す介護現場の工夫
トイレに行ける力を残すには、「歩けるかどうか」だけを見るのでは足りません。
実際には、トイレで排せつするまでに多くの動作があります。
ベッドから起き上がる、立つ、歩く、方向を変える、便座に座る、ズボンや下着を下ろす、排せつ後に整える、手を洗う。これらはすべて、生活の中の大切な動きです。
介護現場では、本人の状態を見ながら、次のような工夫が行われます。
・立ち上がりやすい高さにベッドや椅子を調整する
・トイレまでの通路を片づける
・手すりを使って立ち座りを助ける
・すべりにくい靴や床環境にする
・ズボンを脱ぎ着しやすいものにする
・夜間は足元灯を使う
・トイレが遠い場合はポータブルトイレを検討する
特に注目したいのは、つかまり立ちです。
短い時間でもつかまり立ちができると、介護者がズボンや下着の上げ下げを手伝いやすくなり、トイレで排せつできる可能性が広がります。トイレに行ける力は、外出や社会参加にもつながる大切な力です。
また、トイレで毎回成功しなくても意味があります。
トイレへ向かう、便座に座る、排せつのタイミングを確認する。このくり返しが、体のリズムや生活意欲を支えることがあります。
「失敗しないこと」だけを目標にすると、介護する側も本人も苦しくなります。大切なのは、できる動作を少しでも残し、日常の中で使い続けることです。
おむつ使用を減らすための排せつ記録と声かけ
おむつ使用を減らすために大切なのが、排せつ記録です。
排せつ記録とは、尿や便が出た時間、量、トイレでできたか、おむつやパッドに出ていたか、水分をとった時間などを記録するものです。
「なんとなく午前中に多い気がする」「夜によく失敗する気がする」という感覚だけでは、正しいタイミングがつかみにくいことがあります。記録をつけると、排せつのパターンが見えやすくなります。
たとえば、毎日10時ごろに尿が出やすいとわかれば、その少し前にトイレへ誘導できます。昼食後に便が出やすい人なら、その時間帯に合わせてトイレへ行く準備ができます。
排尿記録を数日つけることで、排尿パターンを把握し、トイレ誘導やおむつ交換のタイミング、おむつ選びに役立てる考え方があります。
声かけも、とても大切です。
ただ「トイレ行きますよ」と言うだけでは、本人が嫌がることもあります。特に認知症がある場合や、恥ずかしさが強い場合は、言い方ひとつで反応が変わります。
声かけの例としては、次のような言い方が考えられます。
・「そろそろお手洗いに行っておくと安心ですね」
・「お昼ごはんの前に一度行っておきましょう」
・「一緒にゆっくり行きましょう」
・「立つところだけ手伝いますね」
・「できるところはお願いしますね」
ポイントは、命令ではなく安心につながる声かけにすることです。
排せつはとても個人的なことなので、急かされたり、責められたりすると、本人の気持ちは落ち込みます。逆に、成功したときに「よかったですね」と自然に受け止めてもらえると、自信につながります。
おむつ使用を減らすには、記録と声かけをセットで考えることが大切です。
記録でタイミングを知り、声かけで行動につなげる。その積み重ねが、トイレでできる回数を増やすきっかけになります。
ポータブルトイレや手すりを活用する環境づくり
おむつに頼らない介護では、本人の努力だけに任せないことが大切です。
「トイレまで遠い」「夜は暗くて危ない」「立ち上がりが不安」「便座に座るのがこわい」といった環境の問題があると、本人に意欲があってもトイレに行きにくくなります。
そこで役立つのが、ポータブルトイレや手すりです。
ポータブルトイレは、ベッドの近くに置けるため、夜間や歩行が不安定な人にとって大きな助けになります。トイレまでの距離が短くなることで、間に合わない不安や転倒リスクを減らしやすくなります。
ただし、ポータブルトイレは置けばよいというものではありません。本人の体格や動く力に合っているか、座りやすい高さか、立ち上がりやすい位置か、後片づけの負担はどうかを考える必要があります。設置には体格や身体機能に合わせた調整が必要で、専門家に相談することもすすめられています。
手すりも重要です。
トイレ内の手すり、ベッド横の手すり、ポータブルトイレ周辺の手すりがあると、立ち上がりや方向転換がしやすくなります。
環境づくりで見直したいポイントは、次の通りです。
・ベッドからトイレまでの距離
・夜間の明るさ
・床の段差やすべりやすさ
・便座の高さ
・手すりの位置
・服の脱ぎ着のしやすさ
・介助者が動けるスペース
・においや後片づけのしやすさ
環境が整うと、本人も介護者も安心しやすくなります。
特に在宅介護では、家の作りによってトイレに行きにくい場合があります。そんなときは、福祉用具や住宅改修を組み合わせることで、できることが増える可能性があります。
本人の自立と介護負担を両立する排せつケア
排せつケアで難しいのは、本人の自立を大切にしながら、介護する側の負担も減らすことです。
「本人のためにトイレへ連れて行きたい」と思っても、夜中に何度も起きる、服や寝具を洗う、においや肌荒れに対応するとなると、家族や介護職の負担は大きくなります。
だからこそ、おむつに頼らない介護は「根性で頑張る介護」ではなく、仕組みで支える介護にする必要があります。
そのためには、本人の状態に合わせて、トイレ誘導、パッド、リハビリパンツ、ポータブルトイレ、おむつを上手に組み合わせることが大切です。
たとえば、次のような使い分けが考えられます。
・日中はトイレ誘導、夜間はおむつ
・外出時は吸水パッドで安心を確保
・ベッド近くにポータブルトイレを置く
・失敗が多い時間帯だけ吸水量を上げる
・便意が出やすい時間に合わせて誘導する
・排せつ記録をもとに声かけ時間を決める
おむつやパッドの使用枚数、布パンツの使用率、トイレ誘導の回数などを可視化し、ケアの改善につなげる取り組みもあります。数字で見えるようにすることで、職員間で情報共有しやすくなり、根拠ある排せつケアに近づきます。
介護する側の負担を減らすには、「全部自分で抱えない」ことも大切です。
訪問介護、デイサービス、訪問看護、福祉用具の専門相談員、ケアマネジャーなどに相談すると、家の状況や本人の体の状態に合った方法を考えやすくなります。
本人の自立を支えることと、介護者が楽になることは、反対ではありません。
本人がトイレでできる回数が増えれば、交換や洗濯の負担が減ることもあります。介護者の負担が軽くなれば、本人に向き合う気持ちにも余裕が生まれます。
おむつに頼りすぎない介護が尊厳を守る理由
排せつは、人に見られたくない、とても個人的な行為です。
だからこそ、介護が必要になったとき、排せつの失敗は本人にとって大きなショックになることがあります。
おむつを使うこと自体が尊厳を傷つけるわけではありません。必要なときに適切に使うことは、清潔や安全を守るために大切です。
ただ、「本人はトイレに行きたいのに、最初からおむつだけにされる」「できる動作まで介助者が全部やってしまう」「失敗を責められる」といった状態が続くと、本人の気持ちは傷つきやすくなります。
おむつに頼りすぎない介護が大切なのは、本人に「まだ自分でできることがある」と感じてもらうためです。
たとえば、完全に一人でトイレに行けなくても、次のようなことは尊厳につながります。
・トイレに行く意思を伝えられる
・手すりを持って立てる
・ズボンの一部を自分で上げ下げできる
・便座に座って排せつできる
・パッド交換の希望を言える
・失敗しても責められない
排せつの自立は、外出や社会参加にも関係します。つかまり立ちができればトイレでの介助がしやすくなり、多目的トイレなどを利用して外出の可能性も広がります。
排せつケアの本当の目的は、ただ失禁を減らすことではありません。
本人が安心して暮らせること。家族や介護者が無理なく支えられること。そして、その人らしい毎日を少しでも守ることです。
おむつに頼らない介護は、特別な理想論ではありません。
排せつの時間を知る、声をかける、環境を整える、できる動作を残す。こうした小さな工夫の積み重ねが、本人の尊厳と介護する側の安心を支える大切な一歩になります。
気になる生活ナビをもっと見る
購読すると最新の投稿がメールで送信されます。


コメント