鳥取・境港の宝「弓浜絣」250年続く伝統と暮らしの知恵|2025年4月3日(木)放送まとめ
2025年4月3日放送のNHK「あさイチ」では、鳥取県境港市を中心に伝わる伝統的な織物「弓浜絣(ゆみはまがすり)」が特集されました。番組では250年以上の歴史を持つこの工芸品の魅力、暮らしに根づいた背景、現在の職人たちの取り組み、そして未来へつなげる活動まで幅広く紹介されていました。
弓浜絣とは?身近な暮らしから生まれた織物
弓浜絣は、鳥取県西部の弓ヶ浜地域、特に境港市や米子市周辺で生まれました。江戸時代中期にはすでに織られていたとされていて、なんと250年以上の歴史があります。この織物は藍染めの木綿織物で、深い藍色と白色の組み合わせが特徴です。昔の農家では、女性たちが家族のために布団や着物、作業着などを手織りで作っていました。つまり、弓浜絣は「生活の中で必要だから生まれた布」であり、実用品でありながら美しさも兼ね備えた織物なのです。
番組では、実際に昔使われていた弓浜絣の布団が紹介されており、その風合いの良さと素朴な温かさが画面越しにも伝わってきました。
弓浜絣の特徴と魅力
弓浜絣の魅力は、見た目の美しさだけではありません。以下のような特徴があります。
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藍色と白の美しい模様:鶴、亀、松竹梅など、縁起の良い柄が多く使われており、家族の幸せや健康を願う気持ちが込められている
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吸湿性・保温性に優れた木綿素材:気候の変化が大きい山陰地方での暮らしにぴったり
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素朴でざっくりとした風合い:手織りならではの味わいがあり、使えば使うほど手になじむ
番組では、長年弓浜絣を愛用してきた地元の方の話も紹介され、「手触りがやさしい」「夏は涼しく、冬はあたたかい」といった声がありました。まさに生活に寄り添ってきた織物です。
弓浜絣の歴史と歩み
弓浜絣は、江戸時代中期から弓ヶ浜地方で始まりました。もともとは農家の女性たちが家庭内で綿を育て、糸を紡ぎ、染めて織るという完全な自家生産によって作られていました。明治時代には、機織り技術の進化とともに生産が盛んになり、弓浜絣は全国にも知られるようになります。
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江戸中期:自家用としての生産が始まる
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明治~大正時代:地場産業として発展
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昭和以降:化学繊維の台頭により生産量が激減
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現在:伝統を守りつつ、新たな製品としての展開が進む
一度は途絶えかけた伝統ですが、近年は再びその価値が見直され、地域を挙げて保存や普及に力を入れていることも番組内で伝えられました。
丁寧な手作業から生まれる模様と風合い
弓浜絣の制作には約30もの工程があります。放送ではその一部が紹介されており、次のような手順があると説明されていました。
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綿の栽培:かつては家庭で育てていた
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糸紡ぎ:繊維をより合わせて糸にする
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括り(くくり):糸を部分的に縛って染まらないようにし、模様を作る
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藍染め:数回染めては乾かす工程を繰り返す
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織り:機織り機を使って一枚の布に仕上げる
中でも「括り」は模様の出来栄えを左右する大切な工程で、細かい模様ほど職人の経験と集中力が必要だと解説されていました。全体を通して時間と手間を惜しまない丁寧な仕事が、この美しい織物を支えていることがよくわかります。
現在の取り組みと工房の工夫
現在でも境港市や米子市周辺には弓浜絣を織る工房がいくつかあり、番組では「弓浜絣工房B」の活動が取り上げられていました。こちらの工房では、伝統的な技法を守りながら、現代のニーズに合わせて次のような新しい商品も作っています。
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バッグやポーチなどの小物
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テーブルセンターやランチョンマット
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モダンなデザインの洋服地
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スマホケースやアクセサリーなどの雑貨
また、機織り体験や糸紡ぎ体験のワークショップも行われていて、観光客や小学生の社会見学などでも人気を集めています。こうした体験を通じて、次の世代に織りの楽しさと技術が伝えられているのです。
暮らしとともにある伝統を未来へ
番組の最後では、長年弓浜絣を織ってきた高齢の女性職人のインタビューが紹介されました。その手はしわだらけでも力強く、糸を扱う動きにはブレがなく、見る人に深い感動を与えました。そして、その隣には若い見習いの職人がいて、真剣に学んでいる姿も印象的でした。
弓浜絣はただの伝統工芸品ではありません。暮らしの中から生まれ、暮らしを守り、そして暮らしに寄り添ってきた布です。そのぬくもりや丁寧な手仕事の魅力を、これからももっと多くの人に伝えていくことが求められています。
今後も地域の活動と職人たちの思いが重なり、新たなかたちで弓浜絣が広まっていくことを期待したいです。
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