第2回 手をのばしたくなるリンゴ〜立体感の秘密〜
2025年4月27日(日)深夜に放送されたNHK総合「3か月でマスターする絵を描く」第2回は、「手をのばしたくなるリンゴ〜立体感の秘密〜」と題し、絵の中に立体感を表現するための基本的な考え方と実践方法が紹介されました。講師は前回に引き続き、絵画指導歴50年以上のベテラン画家・柴崎春通さん。今回も、タレントの山之内すずさんが一緒に制作に取り組みながら、絵を描く楽しさとコツを学んでいきます。題材は「リンゴ」。一見シンプルなモチーフですが、実は立体を描く上で大切なすべての要素が詰まった題材です。
立体的に描くには?〜光と陰の仕組みを理解する〜
番組冒頭では、前回の放送で学んだ「筆づかい」や「塗り方の基本」を軽く振り返りつつ、今回は「立体感」をテーマに学んでいくことが説明されました。
柴崎さんによれば、「立体感を学ぶのに最適な題材がリンゴ」。その理由は、リンゴの形には曲線や丸みがあり、表面にはツヤがあって光がよく反射するため、光と陰の観察にぴったりだからです。さらに、表面の模様やヘタのくぼみなど、描く要素が多いため練習に最適とのこと。
まずは、山之内さんが自分の現在の力でリンゴを描いてみることに。形としてはそれらしく見えても、柴崎さんは「これは立体になっていない」と解説。見た目が“ぺたんこ”で、光と陰の違いが描けていないことが原因でした。ここから、「立体的に見せるための具体的なコツ」について柴崎さんの解説が始まります。
ポイントとなるのは以下の考え方です。
-
明るい部分(日向)と暗い部分(日陰)の違いをしっかり描き分ける
-
リンゴが落とす影(影=キャストシャドウ)も形に合わせて変化をつける
-
最も強い光が当たる部分(ハイライト)は塗り残す
-
影の中にも、光が反射した部分(反射光)が存在する
このように、「光と陰の違い」だけでなく、「その中間にある微妙なグラデーション」をどれだけ丁寧に表現できるかが、立体感を作るための鍵になると教えてくれました。
実践スタート!リンゴを立体的に仕上げる工程
理論を理解したところで、いよいよ制作に取りかかります。まずは鉛筆で下絵を描きます。リンゴの丸さを意識しながら、全体のバランスが左右対称になりすぎないようにすることもポイント。自然に見えるように、ほんの少し形を崩すくらいがちょうど良いとのことです。
続いて着彩へ。ここからは「立体感を作る手順」に沿って、段階的に描いていきます。
-
リンゴの最も暗い部分(影)から塗ることで、色の幅をつかみやすくなる
-
ハイライトになる部分は塗らずに白く残しておく(光を最も反射する部分)
-
全体に赤を塗った後、青や茶色を加えて色に深みを出す
-
ヘタのくぼみ部分は、影を濃く塗ることで凹みを表現
-
表面の色ムラは、単一色ではなく複数色を重ねて仕上げる
柴崎さんは、赤いリンゴであっても赤だけを使わないことが大切だと説明していました。たとえば、光の反射部分にほんのり黄色を入れたり、影の部分に青や紫を加えると、色の奥行きが生まれ、よりリアルに近づくというわけです。
さらに、リンゴが置かれているテーブルにも工夫を加えます。影の部分に青や白をうっすら混ぜて塗ると、空気感が出て、リンゴがより自然に見えるようになります。
最後の仕上げに入ると、以下のような作業が加わりました。
-
ヘタの輪郭を明暗で描き分けて立体的に見せる
-
ハイライトをぼかさずにくっきり残して強調
-
表面の斑点(そばかす)を点描で加え、その斑点にも明暗をつけることで球体としての形を強調
こうした細かい工夫の積み重ねが、手を伸ばしたくなるようなリアルなリンゴにつながるのだと改めて実感できる工程でした。
2人の作品を比較して見る成長
すべての工程を終え、山之内さんと柴崎さんそれぞれのリンゴが完成。最初に描いた平面的なリンゴと、今回描いた立体的なリンゴを並べて比べると、違いは一目瞭然でした。最初の絵は“記号のようなリンゴ”で、完成作品は“リアルで存在感のあるリンゴ”に変わっていました。
柴崎さんは、「最初からうまく描けなくても、正しい順序で観察しながら描けば、必ず上達する」と語っており、絵を描く上で何より大切なのは、「形を写すこと」ではなく「見え方の仕組みを理解すること」だと強調していました。
この比較を通して、視聴者にも「少しずつ描いていけば誰でも描ける」という勇気を届ける構成になっており、入門者には非常にありがたい内容となっていました。
今日のまとめと次回への期待
番組の最後には、今回の学びの振り返りがありました。山之内すずさんは、「山之内でも描けたから、皆さんも絶対に描ける。一緒に楽しみましょう」と、前向きなメッセージを伝え、視聴者に寄り添う優しい締めくくりとなっていました。
今回の放送では、立体感を描くには何が必要か、そして具体的にどのように描いていけばリアルに見えるのかという手順がしっかりと紹介されていました。
リンゴという一見シンプルなモチーフを通じて、影の濃さ、反射光、斑点、質感、色の奥行きなど、絵に命を吹き込むテクニックが詰まっていました。
今後の放送では、さらに複雑な構図や自然物にチャレンジしていくことが予告されており、基礎をしっかり固めたい人にとっては繰り返し観る価値のある回となっています。立体感のある絵を描く最初の一歩として、ぜひリンゴからはじめてみてはいかがでしょうか。
コメント