自宅に“眠る着物”どうする?
6月19日(木)の午後5時から放送予定の『午後LIVEニュースーン』(NHK総合)では、日本の家庭でタンスに眠る「使われなくなった着物」をどうすればよいのかをテーマにした特集が組まれています。祖父母や親から受け継いだ着物をどう扱えばよいのか迷っている人は多く、全国には約3,000万点もの着物が使われないまま保管されているといわれています。番組では、そんな「眠る着物」の実態や、新たな活用法、手放し方などが、わかりやすく紹介される予定です。放送後には実例を追加する形で、より詳しい内容もご紹介します。
日本に眠る着物の実態と背景
現在、日本全国の家庭に保管されている着物の数はおよそ3,000万点と推計されています。さらに、1点あたりの平均価格を考えると、総額で約8兆円もの価値があるともいわれています。とくに1970〜1980年代に作られた絹製の着物が多く、色柄の美しさや素材の質の高さからも、大きな文化的・経済的価値を持っています。
多くの場合、所有者は65歳以上の高齢女性であり、平均して5着以上の着物と2本以上の帯を持っているとされます。その数を単純計算するだけでも、全国で6,000万枚以上の着物が保管されていることになります。中には着物に詳しくないまま相続した人も多く、どのように扱っていいか分からないという声も少なくありません。
着物は洋服と違い、一点もののデザインが多く、手描きや手染めの紋様が施されたものもあります。そのため、同じ柄に出会うことはほとんどなく、まるで絵画のような価値があります。さらに、絹はとても丈夫な素材で、40年以上前に作られたものでも、状態が良ければ今でも着用できるケースが多いです。
しかし、着る機会が減ったことや、着方・畳み方・保管方法などの専門的な知識が必要になることから、結果として使われずにタンスに眠るケースが増えています。そのまま放置されたり、継承のタイミングで廃棄されてしまう例もあり、文化の損失や環境負荷も懸念されています。
着物を活かすためのさまざまな選択肢
番組では、着物を「活かす」「譲る」「売る」「寄付する」といった、複数の方法が紹介される予定です。自宅で眠らせておくのではなく、思い出や素材を生かした新たな価値の見出し方が提案されるようです。
・リメイクして使う
着物の布をほどき、ワンピースやスカート、トートバッグ、スマホケース、巾着袋などへと仕立て直す方法です。最近ではリメイク専門店も増えており、着物の美しい柄を生かしたオリジナルアイテムが人気を集めています。家庭用ミシンで簡単に作れる型紙も販売されています。
・大切に使ってくれる人へ譲る
身近な家族や、着物を日常的に使っている知人、大学で和装文化を学んでいる学生に譲るという方法もあります。思い出を受け継ぐ行為として、世代を越えて着物を活用できるチャンスです。
・寄付して社会に役立てる
NPOや福祉団体に寄付することで、着物は福祉施設での催事衣装や、海外への支援物資として再利用されることがあります。地域によっては市民センターなどで回収拠点を設けている場合もあり、手軽に寄付できる環境も整ってきています。
・プロに査定してもらい売却する
着物の専門業者による査定を受ければ、状態によっては高額での買取が可能です。出張・宅配・持ち込みなど複数の方法があり、利用者の都合に合わせやすいのも特徴です。
・フリマアプリやリサイクルショップで販売する
自分で撮影・出品・梱包・発送までを行う方法です。手間はかかりますが、需要の高い着物であれば趣味としての楽しみや収益にもつながる可能性があります。
・着物クリニックや悉皆(しっかい)でのお手入れ
専門業者では、洗い張り・染め直し・真空パック保存などのケアサービスを行っており、状態に応じて再び着用できるよう整えることができます。見た目以上に価値ある一着を守る方法です。
着物と向き合うことが文化をつなぐ一歩に
この特集では、着物をただの「古い衣類」として扱うのではなく、日本の伝統文化や家族の思いが込められた品として向き合うことの大切さが伝えられると見られています。環境に配慮した行動としても注目されており、着物の再利用はSDGsの目標「責任ある消費と生産」にもつながっています。
たとえば、京都の伝統工芸職人によって着物をドレスや小物に再生するブランド「季縁(きえん)」のように、伝統と新しい感性を組み合わせた取り組みも進んでいます。また、地域のリサイクルイベントや、大学での着物寄付プロジェクトなど、着物をきっかけに世代や地域を超えたつながりが生まれています。
このような動きを通して、「着物=しまい込むもの」ではなく、「着物=活かして語り、つなぐもの」という新しい価値観が広がっていくことが期待されています。
番組の放送後には、実際に紹介されたリメイク例や、寄付先、査定のポイント、専門家のアドバイスなど、さらに詳しい情報を追記してご紹介します。日本の家庭にある「眠る着物」にどんな可能性があるのか、どう活かすかを知るヒントとして、ぜひご覧ください。
コメント