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NHK【世界の祭り】イギリス・シェトランド バイキングの火祭りアップ・ヘリ・アー|たいまつ行進と船の焼却の全記録(2025年8月10日放送)

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イギリス・シェトランド島のバイキング火祭り「アップ・ヘリ・アー」とは

冬のシェトランド島で一夜限り行われるバイキングの火祭り「アップ・ヘリ・アー(Up Helly Aa)」は、世界中の祭り好きが一度は見たいと言われる壮大なイベントです。真冬の闇を1000本を超えるたいまつが照らし、レプリカのバイキング船を燃やすクライマックスは圧巻。この祭りは単なる観光イベントではなく、地域の歴史・文化・共同体の絆が詰まった特別な一日です。ここでは祭りの基本情報から見どころ、準備の裏側、現地での体験ポイントまで詳しく紹介します。

祭りの歴史と起源

「アップ・ヘリ・アー」はスコットランド最北のシェトランド諸島で、1月から3月にかけて各地で開かれる火祭りです。最大規模なのは首都レリック(Lerwick)で、毎年1月最終火曜日に行われます。起源は19世紀前半、クリスマス時期に若者たちが燃えるタールの樽を引き回す遊びから始まりました。危険だったため1870年代に禁止され、たいまつ行進へと形を変え、1881年に公式行事となり、1889年からはバイキング船(ガレー)の焼却が加わりました。こうしてバイキングの伝承とヴィクトリア朝文化が融合した現在の形が生まれたのです。

島民総出で進める準備

この祭りは1日だけですが、準備は364日間続きます。特に「グイザー・ジャール(Guizer Jarl)」と呼ばれる隊長とスクワッド(仲間たち)は1年以上前から衣装、たいまつ、船を手作りします。船は木材や金属で細部まで再現され、燃やすために作られているとは思えない美しさです。島内の学校や施設も装飾やパーティ準備に参加し、まさに島民総出の共同作業となります。子どものころから参加して大人になっても関わり続ける人も多く、世代を超えて伝統が受け継がれています。

たいまつ行進の迫力

夜になると街の灯りが消え、闇の中からたいまつの列が現れます。約1000人のグイザー(仮装参加者)がバイキング衣装で整列し、ジャール・スクワッドを先頭に進みます。松明の炎が風で揺れ、金属の鎧や兜が反射して輝く光景は息をのむ美しさです。沿道の観客は熱気と炎の音に包まれ、まるで中世にタイムスリップしたような感覚を味わえます。

船の焼却というクライマックス

行進の終着点には、巨大なバイキング船レプリカが待ち構えます。グイザーたちは船を囲み、「The Norseman’s Home」などの伝統歌を合唱しながら、たいまつを一斉に投げ入れます。瞬く間に船体は炎に包まれ、夜空を赤く染め上げます。この儀式はバイキングの葬送や冬を照らす火を象徴するとされ、祭りの象徴的な瞬間です。炎が鎮まった後は、地元ホールで夜通しのダンスやスケッチ(寸劇)、音楽が続きます。

地域ごとの広がりと多様化

レリック以外にも、スカローウェイやブレッセイなど各地で独自のアップ・ヘリ・アーが行われます。かつては男性のみが参加できましたが、2024年には初めて女性や少女がジャール・スクワッドに加わる歴史的変化がありました。一方で、一部には依然として閉鎖的だとの批判もあり、祭りの在り方を巡る議論は続いています。こうした変化は伝統を守りつつ現代社会に合わせる試みとも言えます。

現地体験の注意点

観覧を計画するなら、宿泊予約は数か月前から必須です。特にレリックの祭りは世界中から観光客が訪れるため、ホテルはすぐに満室になります。防寒対策も重要で、氷点下の夜に長時間屋外で立つため多層の防寒着が必要です。たいまつの煙や炎の匂いが衣服に付くため、着替えや洗いやすい服装が便利です。一般観客は行進を見ることはできますが、たいまつを持って歩くことはできません。夜のパーティは基本的に招待制で、一般向けのチケットは極めて少ないため、観光案内所や地元紙での事前確認が必要です。

祭りをさらに楽しむ方法

本番前後には、地元博物館でのバイキング展示や、ウール製品のクラフト市、地元食材のマーケット、音楽イベント「Fiery Sessions」など関連行事が充実しています。祭りの歴史や文化を深く知ることで、当日の感動が何倍にも膨らみます。船の細部を間近で見られる展示や、衣装制作の様子を見学できるツアーもおすすめです。

まとめ

アップ・ヘリ・アーは、火と音と人の熱気が融合するシェトランドの冬のハイライトです。バイキング伝承と地域の絆を象徴するたいまつ行進と船の焼却は、写真や映像では伝えきれない迫力があります。伝統を守りつつ変化を受け入れる姿勢も、この祭りの魅力の一つです。もし訪れる機会があれば、事前の準備と計画を万全にして、世界でも稀有なこの夜を体感してみてください。

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