プロフェッショナル「家族のために、母のように 家政婦・タサン志麻」
日々の食卓に並ぶ料理が「もっとおいしく、もっと心地よくなればいいのに」と思ったことはありませんか?忙しい日常の中で、家族の健康や笑顔のために食事を整えるのは簡単なことではありません。そんな悩みに寄り添い、家庭に温かい料理を届けるのが伝説の家政婦・タサン志麻です。今回の「プロフェッショナル仕事の流儀」では、彼女の仕事ぶりと人生の歩み、そして心を込めた料理の数々が紹介されました。この記事では番組内容をわかりやすく整理し、志麻さんの魅力をお伝えします。
家族を支える「伝説の家政婦」
東京・葛飾に暮らすタサン志麻は、飲食店に勤める夫と、生後7か月の長男、そしてかわいい2匹のネコと共に温かい家庭を築いています。普段の朝食ももちろん志麻の手作りで、栄養バランスや家族の体調を考えながら丁寧に準備しています。出勤時には必ず長男を連れて一緒に出かけ、母としての顔と伝説の家政婦としての顔を両立させています。
彼女が向かうのは都内の一般家庭。そこで限られた時間の中、わずか3時間ほどで1週間分の料理を次々と作りあげていきます。驚くべきことに、彼女の頭の中には600種類以上のレシピがインプットされており、冷蔵庫を開けて目にした食材だけで即座に献立を組み立てられるのが大きな強みです。家庭ごとの好みや食材の状態を考慮しながら、その場で最適な料理を仕上げていく姿はまさにプロフェッショナルです。
料金は約7800円ですが、完成する料理の内容はその金額以上の価値があります。例えば、じっくり煮込んだ牛肉の赤ワイン煮や、家庭的でほっとする鶏肉とレンコンの煮物など、本格的な洋食から和食まで幅広く並びます。さらに、その場の状況に合わせた即興料理も次々に誕生するのが志麻ならではの魅力です。
この日も、調理中に用意されていた食材の一つを蜂蜜と勘違いしたところ、実際にはコニャックだったというハプニングがありました。しかし、そこで慌てることなく、代わりに夏みかんジャムを使って風味を整え、むしろ新しい味わいを生み出しました。臨機応変な発想と豊富な経験から生まれる工夫こそが、彼女の料理を唯一無二のものにしているのです。
依頼が殺到する理由
志麻の予約は年間でおよそ500件にものぼり、募集をかければわずか数分で埋まってしまうほどの圧倒的な人気を誇っています。その依頼の大半を占めるのは、日々仕事と育児の両立に奮闘している母親たちです。料理をゆっくり作る時間が取れない家庭にとって、志麻の存在は大きな支えになっています。特に子どもの誕生日会や家族の特別な日には、彼女の手による料理が食卓を華やかに彩り、家族みんなの思い出を深める役割を果たしています。
依頼者の一人は、「志麻さんの料理があると、けんかもなくなり、自然と笑顔で食卓を囲めるんです」と語っていました。家族が一緒に同じ料理を食べる時間が、ただの食事ではなく、心をつなぐ大切な時間に変わるのです。
志麻自身も「家族でゆっくり会話しながら食べる時間こそが本当の幸せ」と語っています。その言葉通り、彼女は料理を通して家族の時間を作り出し、人々の心に温かさを届けています。料理の腕前だけでなく、食卓を通じて生まれる笑顔や絆を大切にする姿勢こそが、多くの家庭に支持される理由だといえるでしょう。
簡単につくれる鶏ハムレシピ
番組では、志麻が家庭でも簡単に実践できる人気レシピとして「鶏ハム」の作り方を紹介しました。手順はとてもシンプルで、忙しい家庭でも取り入れやすいのが魅力です。
まず、用意するのは鶏むね肉。このお肉にフォークで細かく穴をあけ、味が染み込みやすく火も通りやすい状態にします。次に、全体に片栗粉をまぶすことで、表面がコーティングされてパサつきにくく、しっとり仕上がる工夫がされています。
準備ができたら、鍋で出汁を沸騰させ、その中に鶏むね肉を入れます。ここで火を止め、鍋のまま冷めるまで置いておくのが最大のポイントです。余熱でじんわり火が通ることで、肉が硬くならずに驚くほど柔らかくジューシーな鶏ハムが完成します。
この方法なら調味料を工夫することで和風にも洋風にもアレンジでき、サラダやサンドイッチ、お弁当のおかずなど幅広く活用できます。まさに家庭の強い味方となるレシピです。なお、その他のレシピやバリエーションは番組ホームページで公開されているとのことで、料理好きにとっては見逃せない情報となっています。
料理だけでなく心まで寄り添う
志麻は一日の仕事を終えて帰宅すると、なんと自宅でその日に提供した料理をもう一度作り直すことがあります。その理由は、依頼先の家庭で子どもが料理を口から出してしまったと後から知り、大きな悔しさを感じたからです。彼女にとって料理はただ「おいしい」と言ってもらうだけではなく、食べる人の気持ちに寄り添うことが何より大切。そのため「自然に気づけるようにならなきゃいけない」と自分を省みて、改良点を探そうと努力を惜しみません。
志麻は、ただプロの料理人として腕を振るうのではなく、あくまで家庭の延長に立つ「母親のような存在」を意識しています。相手が子どもであっても大人であっても、それぞれの好みや体調、生活リズムに合わせて味を変えたり工夫を加えたりする。その姿勢は、依頼者にとって安心感につながり、家族の食卓をより温かい時間へと導いています。
まさに「相手の立場に立つこと」こそが志麻の流儀であり、彼女が多くの家庭から支持される最大の理由だといえるでしょう。
家政婦の仕事にたどりつくまでの道
かつてフランスの三ツ星レストランや都内の名店で修行を積んだ志麻は、その才能を早くから認められ、わずか1年で副料理長に抜擢されるほどの実力を持っていました。しかし華やかな舞台に立ちながらも、料理に打ち込めば打ち込むほど「本当に自分がやりたいことは何なのか」という思いが膨らみ、心は満たされていきませんでした。そしてある日突然、職場を辞めるという大胆な決断を下します。
その後も複数の店を転々としながら働き続けましたが、気持ちの迷いは消えず、志麻は長く自分の居場所を見つけられないでいました。そんな彼女の人生に大きな転機が訪れたのは、結婚と出産、そして流産という辛い経験を経てからのことです。母としての役割を意識しながら、新しい道を模索していた志麻が出会ったのは、育児と仕事の両立に疲れ果てた母親たちでした。
彼女はその家庭で料理を作り、テーブルに並べました。すると依頼者たちから「食卓が明るくなった」「料理のおかげで家族の会話が増えた」と感謝の声が届きます。その言葉は、これまで迷い続けていた志麻の心を解きほぐし、自分の料理が誰かの力になることを改めて実感させてくれました。結果として、この経験が志麻に大きな自信を与え、家政婦という仕事に誇りを持つきっかけとなったのです。
忘れられない依頼者とのつながり
番組では、志麻が現在の仕事に強い誇りを持つきっかけとなった依頼者のひとり、押切さんのエピソードも取り上げられました。押切さんは学童保育の園長として多忙な日々を送り、夜遅くまで仕事に追われる生活をしています。さらに、自身の娘を通わせる保育園は自宅から遠く、送り迎えだけでも大きな負担となっていました。家事や育児に手が回らず、「家政婦がいなければ生活が成り立たなかった」と振り返るほど、志麻の存在は家庭に欠かせない支えとなっていたのです。
志麻は、依頼前日にこれまでのやりとりを丁寧に振り返り、娘の食の好みを一つひとつ確認していました。そして、あえて娘が苦手とするほうれん草を使うことを決意。そのままでは嫌がる食材でも、大好きなハンバーグに混ぜ込むことで自然に受け入れられるよう工夫しました。結果として、娘は「おいしいよ」と笑顔を見せ、苦手意識を忘れて食べることができたのです。
押切さん夫婦は「志麻さんは家族の一員のような存在」と語り、単に料理を作る人ではなく、家族の時間や心を支える存在であることを強調しました。このエピソードは、志麻が「家政婦」という仕事に誇りを持ち、人々の暮らしを支えることに価値を見出す大きなきっかけとなったのです。
プロフェッショナルとは
最後に志麻が語った「プロフェッショナル」の定義はとてもシンプルです。「相手を思うこと。相手が喜んだり元気になったりする食事を作ること」。料理を通じて家族を支える姿勢は、まさに彼女の信念そのものです。
まとめ
今回の放送では、伝説の家政婦・タサン志麻の仕事と人生の軌跡が明らかになりました。彼女はただ料理を作るだけでなく、家族の時間や笑顔を生み出す存在です。フランスでの修行や迷いの時期を経てたどり着いた答えは「家族を思う料理」。読者のみなさんも、今日の食卓に少しでも心を込めることで、家族の笑顔が広がるのではないでしょうか。
――この記事を通じて、志麻さんの料理と生き方から日々のヒントを感じてもらえたら嬉しいです。
気になるNHKをもっと見る
購読すると最新の投稿がメールで送信されます。
コメント