塩の世界に隠されたヒミツとは?
料理をおいしくするだけでなく、人の命を支える“白い宝石”――それが塩です。
今回の「有吉のお金発見 突撃!カネオくん」では、そんな塩の知られざるお金の事情と文化的背景を、司会の有吉弘行と田牧そらが軽妙なトークで解き明かします。ゲストの伊藤俊介、香音、坂下千里子も加わり、身近な塩がどれほど手間と知恵の結晶なのかを実感する40分です。
塩パンや塩レモン、塩キャラメルなど、近年は“塩スイーツ”や“塩ブーム”も話題。スーパーの棚に並ぶさまざまな塩がどのように生まれているのか、番組ではその舞台裏に迫ります。
瀬戸内海に広がる“塩の島” 巨大工場の秘密
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番組の冒頭、有吉さんたちが訪れたのは、瀬戸内海沿岸の塩づくりの大地。
この地域では、江戸時代から「十州塩田(じゅっしゅうえんでん)」と呼ばれる巨大な塩のネットワークが栄え、今もその伝統が形を変えて続いています。空から見ると、海沿いに白く光る“塩の山”がまるで氷山のように並び、そのスケールにゲスト陣も驚きの声を上げました。
ここで行われているのは、現代式の製塩法。
瀬戸内海の海水をくみ上げ、イオン交換膜や電気分解の技術を使って水分を分離し、純度の高い塩を作ります。この方法では、温度や濃縮速度を細かく制御できるため、味や粒の仕上がりを思い通りに調整可能です。
同時に、伝統的な平釜炊きも活用されています。大きな鉄釜に海水を入れ、時間をかけてゆっくりと水分を蒸発させる。火加減ひとつで塩の粒が変わるため、ベテラン職人の経験と勘が欠かせません。
塩の味を決める要素は「原料」と「ミネラルバランス」。
海水にはナトリウムだけでなく、マグネシウム・カルシウム・カリウムなどが含まれており、それらが残ると“塩の角がとれた”まろやかな風味に。たとえば、瀬戸内の有名ブランド「伯方の塩」は、にがり成分を適度に残すことで柔らかい塩味を実現しています。
また、粒の大きさも重要で、粗塩は口の中でゆっくり溶けて甘みを感じ、小粒の塩は瞬時に味が広がるシャープな印象に。調味料ひとつでも、工程や設計によって全く別の個性を生むことがわかります。
1300年の伝統を守る能登の「揚浜式塩づくり」
次に番組が向かったのは、石川県能登半島の外浦エリア。ここに今も残るのが、揚浜式(あげはましき)製塩法です。
この方法は奈良時代から続く日本最古の塩づくりのひとつで、約1300年もの歴史を持つといわれています。現代では効率的な工場製塩が主流となるなか、自然と人の力だけで作るこの製法は奇跡的な存在。
作業は早朝から始まります。まず、職人たちが木桶で海水を汲み上げ、それを砂浜の塩田にまいていきます。これを「潮まき」と呼び、海風と太陽の力で水分を蒸発させ、砂粒に塩を付着させます。
一度乾いた砂を集め、再び海水を通して濃い“かん水”を取り出し、それを大きな釜で煮詰めて結晶化させる――実に根気のいる工程です。
この仕事を担うのは、浜士(はまじ)と呼ばれる熟練の塩職人たち。潮のまき方、天気の読み方、焚き火の温度管理など、すべてが勘と経験に支えられています。潮のまきを美しく均等に広げる技は、一人前になるまで十年以上かかるとも言われます。
一度の作業で得られる塩はわずか数十キロ。非効率ながらも「自然と共に生きる」姿勢が地元に根づいており、国の重要無形民俗文化財にも登録されています。揚浜式で作られた塩は粒が大きく、ほのかな甘みと深いコクが特徴で、高級料亭や和菓子店でも愛用されています。
フラミンゴがピンクなのは塩のせい?
番組の中盤では、塩と動物との不思議な関係が紹介されました。
世界中の塩湖に住むフラミンゴがなぜピンク色なのか――実はその答えは「塩環境に育つ餌」にありました。
フラミンゴが暮らす塩湖には、強い日光と塩分濃度に耐える微生物や藻が生息しています。特に「ドゥナリエラ・サリナ」という紅色の藻は、紫外線や塩のストレスから身を守るためにカロテノイドという赤い色素を作り出します。
その藻を食べた小エビやプランクトンが体内に色素をため込み、さらにそれをフラミンゴが食べることで羽が少しずつピンクに染まっていく――自然が織りなす見事な連鎖です。
フラミンゴは塩分を含む水を飲みながら生活しており、鼻の近くにある「上眼窩腺」という器官で余分な塩を体外に排出します。つまり、塩分の多い環境で暮らすための“生きる知恵”を備えているのです。
また、草食動物が岩塩をなめに山へ向かうように、動物の体には塩分を欲する本能が存在します。ナトリウムは体液のバランスを整え、筋肉や神経を動かす重要なミネラル。塩は、人だけでなくすべての生命にとって欠かせない存在なのです。
“消える芸術”――塩で描くアートの世界
番組の終盤では、塩の「保存」ではなく「消える力」に焦点を当てた塩アートが紹介されました。
代表的なのが、世界的に注目されるアーティスト山本基(やまもと もとい)。彼は白い塩の粉を床一面に撒き、細やかな模様や迷路を描きます。風や湿気で少しずつ崩れていくその様子こそが作品の一部であり、「人の記憶」「時間の流れ」「命の儚さ」を象徴しているのです。
また、海外では塩に着色して描く『塩絵(ソルトペインティング)』も人気で、ニューヨークを拠点に活動するベッティーナ・ヴェルナーは、色付き塩の結晶をキャンバスに散りばめ、光と結晶のきらめきで幻想的な世界を表現しています。
番組では、塩が古来より「清め」や「祈り」に使われてきたことにも触れました。神社の盛り塩や、葬儀の清め塩など、塩は文化や信仰の中でも重要な役割を果たしています。アートとして再解釈することで、人と自然、命と時間のつながりを改めて感じさせる深いテーマとなっていました。
まとめ:塩は“生きている”
瀬戸内の巨大工場で作られる効率的な塩、能登で受け継がれる伝統の手作り塩、そして動物の生態やアートにまで影響を与える塩――そのすべてに共通するのは「人と自然の関係性」でした。
私たちが毎日口にする塩は、海と風、太陽、そして人の手が生み出す奇跡の産物です。
この放送をきっかけに、食卓の塩をひとつまみ味わうたびに、少しだけ自然と人の歴史を感じられるようになるかもしれません。
出典・参考リンク:
有吉のお金発見 突撃!カネオくん|NHK公式サイト
塩百科|健康と料理を豊かにする塩の情報サイト
コロカル 能登の揚浜式塩づくり
日本海水株式会社|瀬戸内の塩工場紹介
thetv.jp 番組情報ページ
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